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俺を継ぐもの

急激な痛みが首元を襲う。

息が苦しく、今にも引きちぎられそうだ。




俺は現状を理解した。

こ、これは・・・首吊りだ!



どういうことだ!? 爆弾はどこに?



目の前には『俺の部屋(見慣れた景色)』が広がっている。

それが意味するのは・・・





帰ってこれたということだ!









息が一層苦しくなる。


喜びもつかの間。重力という名の死神は俺から全てを奪ってゆく手を休めることはない。

グダグダしてる暇などなさそうだ。




俺は両手を後頭部に伸ばし、やはりそこにあったロープを掴んだ。


「こういう時の為に!毎日ボルダリングしてたんじゃないのか!?」

人生史上一番『生』に執着した鼓舞をするも、首元の締め付けが緩むことはなかった。


行き場を持たぬ足は暴れ舞い、正真正銘「最期の抵抗」を見せ体を揺らす。


そうだ!壁を蹴れれば何とかなるかもしれない!

俺は張ってあるポスターの隙間へと足を突き出した。















彼の脳にはここまでしか届かなかった。


残された彼の体は脱力し切っており、何といってもその顔のすさまじさたるや。

爆笑間違いなしのマンモス変顔であり、不謹'心'が勝ってなきゃネットミームになる程である。




机の上には遺書が残されていた。

彼・・・本人ではないが、似たような人物によるものであり、つまり本人の意思とそう離れたものではない。




「    遺書     」


そこには、かしこまった書体でただ一言、こう綴られていた。


「ごめんなさい。許してください。」




・・・なんとも短いものである。

彼の人生はそんなもんだったのか?

きっとそうではないはずだが、まあそれはともかくとして、彼の人生・・・走馬灯の過半数が二次元の人生は終わった。



社会不適合者としては上等な人生だっただろう。

その証拠に、遺書の裏を見ると、ビッシリと残された者への指令が残されていた。


「趣味の私物の処分方法について・・・しかるべき店に売るか、譲渡。または、現状を維持。」

「棺桶に入れる場合、クリアファイルのみにしてください。」

後は、ひたすら物品別に細かく「適切な処理方法の具体例」が書かれていた。


・・・おめでたいものである。

本人も他人への恨みつらみを遺したくなかったのだろうが、そりゃないだろう。




しかし、彼はある意味幸せな最期だった。

死に方も死に場所もを自分で決めれたうえ、最後は彼の言い方で言うと『俺』として死ねたのだ。




世論は冷たいものだろう。

「変人が勝手に、人に迷惑をかける方法で死んだ」。

それ以上でもそれ以下でもないだろうし、「最期まで迷惑な奴だった。知らんけど。」あたりが適切な表現かもしれない。


火葬場から出てきた彼の残骸は、その人生を象徴するかのようにぐちゃぐちゃであった。

頭部は本来あるべき場所に留まってなかったうえ、そもそもまあまあボロボロだ。



死人に口なしと言うが、全否定ではアレなんで、一応彼の名誉のためにも肯定意見も残しておこう。


彼は立派に生きた。他人から見ればクソな人生をだが、彼は彼として生きたのだ。

それは誇れるようなものではないが、誇ってもいいものである。




こうして、彼の人生は終わった。

後は、人々の記憶から忘れられていくだけである。何かを残したわけでもないし。



しかしだ。

彼にはチャンスがあった。


元の世界に戻った時、まだ「生きていた」のだ。

確かに、死ぬ直前ではあるが、なんとかしようはあった。



まあ、彼はもうどうしようもないが、別次元の「彼」なら何とかしてくれるかもしれない。


同じような人生を送り、悩み、苦しみ、そして楽しみ。

そして、ここ一番で生き残ってくれる『俺』が・・・



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