第33話 形・態・変・化
アル視点です。
ウィルさんは再度スピーノの元に駆け出し接近戦を仕掛ける。
「しぶといンだよォ!」
スピーノは拳を突き出して迎撃するが、ウィルさんはそれを避けて僕が視界の外に出るように動きながら戦っている。
よし、今なら!
「ファイアボール。ファイアボール。ファイアボール。ファイアボール。ファイアボール」
奴の土塊は変哲も無い土を握りしめて一つに纏めた物に魔力を込めた物だ。
「ファイアボール。ファイアボール。ファイアボール。ファイアボール。ファイアボール」
僕の周りには今10個の火球が漂っている。
イメージだ、イメージをするんだ。
一つに纏める、火球を一つに束ねるんだ。
魔力を一度に込められないなら幾つにも分ければ良い。
本来こんな面倒な方法を取る魔術師は居ないだろう。
何故なら暴発の危険性も有るだろうから。
「体が軽い……呪いがまた解けたのでしょうか?」
イメージ通り一つの火球に他の火球が集まっていく。
決意により呪いが少し解けたのだろうか?
だがまだだ、これをスピーノを貫く槍と化すんだ。
スピーノが使った土塊のように破壊力を求める。
今だ!
「束ねし槍炎!!」
「……良いぞ、アル」
「アァ?」
ウィルさんが咄嗟にスピーノから離れる。
そして僕が槍炎を放って漸く僕の存在を思い出したようだ。
確かに先程まではスピーノにとっては取るに足らない魔術師だったからだろう。
「こんな物ォ! ウグググ……何ィ!? 弾け無ェだとォ!」
スピーノは両手で魔法を受け止めるが勢いは削がれずにジリジリと後退していく。
だがこのままではいつかは僕の魔法は弱まって行くだろう。
だったら!
「爆ぜろ!」
「グワアアアァ―――!!」
僕の魔法に込った魔力を解放させ、炎の槍から巨大な火柱に変換させた。
魔法は放った後に方向や性質を変化させるのは非常に難しいが、ただ爆発や火炎に変わるだけなら火属性の魔法は非常に変化させやすい。
僕はそれを狙って火属性の魔法を選択したのだ。
「上手くいったな、アル」
「えぇ、でも魔力がほとんど空っぽですよ」
ウィルさんが隣に立って僕を労う。
今日一日修行をしていた分の魔力を含め大分使用したので本当にもうクタクタだ。
「ウグワァアアァ―――ハッ! クハハハハ!! ダラァ!」
スピーノが火柱を掻き消して姿を表す。
先程までの人間の姿では無く、まるで人の形をした化け物の様な姿で。
「嘘……でしょう……?」
「……あれが奴の本当の姿か」
「まさか復活してすぐこの姿になるなんてよォ……変身と防御のお陰で魔力も大方使っちまったじゃねェか……オメェ達だけは簡単には死なさねェぞォ? 手足をもいで他の人間どもが死んでいく様を見せてやるよォ!」
昔、僕は生物図鑑で見たことがある。
ヤマアラシ――――背中に白黒の縞模様で針状の体毛がびっしりと生えており、草食だが獰猛で、自分より大型の生き物さえ積極的に狙う生き物だと。
スピーノは目が血走り骨格は二足歩行の獣寄りに、そして背中にヤマアラシと同じ様な体毛を生やしている。
「刺弾ォ!」
「ぐっ!」
スピーノは腕から針を生やして放ってくる。
ウィルさんは辛うじて壊れかけのハルバードで弾き落とした。
「そいつは囮だァ。刺剣」
「ぬぐぅっ!」
スピーノはあの巨体に見会わない速度で針を射出した後に僕らの目の前に立っていた。
そのままウィルさんに腕から生やした針の剣で攻撃を仕掛けるもウィルさんは何とか体をひねり、脇腹を僅かに切られる程度に切られる程度に済ましたようだ。
「じゃあぶっ飛ばしてやるよォ!」
「うわぁっ!!」
「ぐおっ!」
そのまま返す腕で足を踏み込みながら腕を振るう事で僕とウィルさんは薙ぎ払われる。
だが僕はウィルさんに服の襟を掴まれて先に投げられた為、僕はウィルさん程のダメージは受けなかった。
僕は村の方に飛ばされて転がる。
しかしウィルさんは近くの樹に思い切り叩きつけられたようで、あれでは暫くは行動出来なさそうだ。
「小僧ォ……オメェはもうちょい痛めつけてやるよォ……最後は針山みてェにしてやるがなァ……クク!」
万事休すか? 僕がそう考えていると近くの民家のの物陰から人の、子供の声がした。
「うわぁーん、お母さーん!」
なっ、物陰に子供が一人!? まだ避難出来ていない人が居たのか!
「あぁ溜まんねェなァ! 俺は人間の弱ェガキを殺すのが好きなんだよォ! 絶望する表情がそそるからなァ」
「ストーンバレット!」
「まだ魔力が残っていたのかァ……こんな威力じゃァ今の俺様にとっては砂埃みたいなもんだぜェ?」
僕は魔法を使い、這うように子供の元へ向かう。
この子供だけでも逃がさねば!
「君、早く逃げるんだ!」
「わ、私、怖くて、あ、足が動かないよぉ……」
子供、小さな女の子は泣いており、完全に腰を抜かして立てないようだ。
それもそうだろう。
こんな化け物に対して普通にいようとするのは大人でも難しい。
なら今僕が出来るのはこの子を安心させて守る事だ。
「大丈夫……僕が君を守るから」
僕は極力笑顔で言うと女の子は涙を止めてコクリと頷いてくれた。
「クハハッ、守るゥ? 良いセリフだなァ? 感動的だぜェ……だが無意味だがなァ! 良いぜェ……ガキ事貫いてやるよォ! ガキだけは先に死ぬだろォがなァ! 刺砲!」
僕は女の子を抱き締めてスピーノに背中を向ける。
限界まで身体能力を強化するんだ! 無い魔力を絞り出せ!
僕は次に来るだろう衝撃に備えて目を瞑るがいつまで立ってもスピーノの攻撃は来ない。
「悪い。待たせたな、アル」
僕は目を開き背後を見る。
この声は……!
「本当に……遅すぎですよ……イズナさん」
僕らの前にはスピーノ相手に立ち塞がる様にイズナさんが立っていた。




