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第八話〜〜双剣使い・サトりんのワクワク冒険記〜〜

 



 師匠に課せられた試練。ランペッジさんと勝負はわたしが見事に一本取ることで終わりを告げた。



「師匠。戻りましたよ」


「お、早かったな」

 


 ロッキから戻ったわたしはさっそく師匠のお店に報告に行った。



「どうだった? ランペッジは」


「はい、強かったです。でも……」


「……」


「わたしの方が強かったです」


「ははっ! そうか!」



 師匠が嬉しそうにしている。やはり弟子の成長は嬉しいらしい。



「サトリ。ちょっと武器見せてみ?」


「え……? はい」


「ふむふむ。……うん」



 師匠はわたしのボロボロになった双剣を眺めて何やら考え込んでいる。ちなみにボロボロなのは、ランペッジさんの試練の最後。勝つために放ったお構い無しの一撃によって。



「よし、んじゃサトリ。移動するぞ」


「え、どこへ?」


「いいからいいから。付いてきな」



 そう言って師匠は奥から何かを持ち出してきて、そのまま外へ行ってしまった。わたしも師匠の後に続いて外に出る。


 しばらく歩いて辿り着いたのは、忘れもしないお馴染みの特訓場所。



 草木の匂い。


 水の音。


 そして風の心地良さ。



 師匠と特訓するようになってから今日まで、何度も足を運んだ場所だ。



「それにしても……ついにここまで来たか」


「……」



『ここまで』とはもちろん『この場所』という意味ではない。ランペッジさんと同じ領域。そして師匠が認めた力の事だ。



「まっ、私からは一本も取れてないけどな!」


「あー! そういうこと言う! いつか一本と言わず二本でも三本でも取りますからね!」


「あぁ、そうだ」


「え?」


「その時になったらまた勝負してやるさ。いつでも来な?」


「は、はい……」



 そんな言葉を交わすとしばらくの沈黙が流れる。


 すると……師匠は持ち出した荷物から『透き通った双剣』を取り出した。



「え、うそ……?」


「ほれ」



 師匠が手渡してきた物には見覚えがあった。ランペッジさんの物と同じ。色は違うがこれは間違いなく、双剣『カラット・カラット』だ。



「今日までよく頑張ったな。ほら、持っていきな」


「あ……」


「そうそう。言い忘れてたけど『カラット・カラット』はエンチャントができる特別製だ。サトリも一流の魔女。エンチャントくらいお手の物だろ?」



 言われてみればそうだ。ランペッジさんの『カラット・カラット』も色は透き通った黄色で、雷まで出ていた。



「ふふん! 任せてください。歴代最高のカラット・カラットを作り上げてみせますからね!」


「ははっ、楽しみにしてるぞ!」



 この時、わたしはかつてないほどの達成感に満たされていた。『よく頑張ったな』その言葉が現実味を帯びてくるような感覚。



「ありがとうございます。師匠」










 こうして……


 わたしは風の双剣使いとなった。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 それから数日後。



「師匠! 見てください!」



 今日は特訓……という訳でもないが久しぶりに師匠と『あの場所』へ来ていた。



「なんだこれ。本?」


「わたしが書きました」


「ぶっ!」


「なんで笑うんですか!?」


「くくっ……! だってお前……作家にでもなるのか? しかもこのタイトル……ぷっ!」


「違いますよ!これはわたしの数々の冒険を記した『冒険記』です!」


「冒険って……お前そんなことほとんどしてないだろ?」


「師匠はデリカシーがないなぁ。今日まで過ごしてきた特訓の日々はわたしにとって冒険と同じなんですよ」


「ふーん……で、なに? これはくれるのか?」


「いえ。本屋に置いてもらうのでぜひ買ってください」


「お前……勇者だな」


「???」



 とりあえず様子見だから一冊しか作ってないけど、きっと誰かが読んでくれるはずだ。なんたって自信作だからね。



「んじゃ、その『冒険記』に恥じないように今日こそは私から一本取らないとな?」


「ふっふっふっ……もちろんですよ。風のエンチャントもだいぶ使いこなせるようになりましたからね」


「ははっ。期待してるぞー?」



 そして、わたしは今日も師匠と武器を打ち合う。未だに一本も取れていないが……正直、どうでもよかった。もちろん取るつもりでやっているが、それよりもこうして師匠との時間を楽しむようになっていた。



「行きますよー!」


「ははっ! 来い!」



 わたしと師匠は不老不死。この先もこのやり取りはずっと続くだろう。だけど全然苦じゃない。むしろ生き甲斐だ。





 わたしはこの師匠が大好きだから。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 こうしてわたしの人生に一つの区切りがついた。


 そして『あの日』からどのくらい経っただろうか。不老不死ともなると、ある時から時間の事なんて気にしなくなるものだ。



「んじゃま、今日も頑張りますか」



 本日はカフェの仕事。というか最近はこれがメインになっているような気もする。だけどこっちでも別の楽しみがある。



 カランカランー


『あの子』が来た。



「いらっしゃい、ルノちゃん」


「おはようございます、サトリさん」



 わたしと同じ、魔女のルノちゃん。わたしはこの子のちょっとした師匠でもあり、そしてこの子のおかげで今のわたしがあるとも言える。



「んじゃいつもの席かな?」


「はい」



 ルノちゃんの注文は昔から変わらずコーヒーとチーズケーキ。


 注文の品を持っていくとルノちゃんは大きなあくびをしていた。暇そうだ。






 それにしても……


「ルノちゃん、キミ最近よくここに来るね。いや、嬉しいんだけどね? だけど師匠である身としては、弟子がニートになっちゃうってのは……」


「そんな風にはなりませんよ。まだ、一歩手前です」


「それ、もう明日にはニートだね」



 そんな気の抜けた会話。それが今のわたしにとっては生き甲斐の一つでもある。きっとこれからもピクニックに行ったり、温泉に行ったり、色々するのだろう。





 わたしの……いや、双剣使い・サトりんの『冒険記』はこれからも続くんだ。





『双剣使い・サトりんのワクワク冒険記』はこれにて完結となります。

もし楽しんで頂けたなら幸いです。


本編の『☆氷の魔女のスローライフ☆』の方でもみんな登場するのでよろしければ読んでみてくださいね。



             にゃんたこ\(*ΦωΦ*)

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