2.
1.を分割しました。
「やぁ、終わったのかい?二人とも」
「あ、ロイ。うん、終わったよ。なにか面白いものは見つかった?」
さくさくと枯れ草を分けて進んでいると、リゼラたちに気がついたロイが手を振りながら迎える。
彼は何か探したいものがあるとかで、荒んでしまった大地の入り口を調べていた。
「うーん、残念ながらあまり面白いものはなかったよ。ただ蛇はいたけど。ホラ」
そういって見せてきた赤い斑点のある蛇を思わず切り捨てそうになるが、ロイの腕に巻き付いている様子から『や、待て、落ち着け。今切ったらロイに液体が飛び散るぅぅ!?』と、リゼラは石像のように停止した。
「ちょ、ホラじゃないから!!それ毒蛇だから!危ないからああぁっ!!」
「.....ロイ様」
「あれ、なんかウィル君がものすごく物言いたげにこちらを見てる.....」
「見てるどころか引いてるよ!はやくその子を自然界にお返しして差し上げてよ!!」
リゼラはゼーハーと肩で息をしている。どっと疲れた。おかしい、なんでこんなに疲労感があるんだ。さっきの浄化で力を使ったせいだきっとそうだ。
一方、ロイは。
「ええ?残念だ.....ジョセフィーヌ、君とはお別れみたいだ.....元気でね」
謎のお別れを告げていた。
「本当に何をするか分からない人だな.....」
「すまないこれが主だ」
「お疲れさまです」
「お前こそ」
「ねえ、なんでキミ達は労い合ってるの?」
失礼な、と口を尖らせてそっぽを向いている。
自分のことを言われているのは分かっているらしい。
.....拗ねている。
「ロイ様.....御身になにかあったら.....」
「だって探し物は見つからないし、君達を待っていたら向こうから寄ってきたんだもの。しょーがなくない?」
「やっぱりウィルはロイのそばにいたほうがいいんじゃ.....」
色んな意味で。
「いやー!!ま、僕的にはウィル君がリゼラ嬢の後ろ姿を心配そうに見ていたから?気を遣ったつもりだったんだけど、ね?」
「なっ.....」
にこりと放たれた言葉は、どうやら図星だったようだ。
ウィルは分かりやすく狼狽した。
リゼラの方といえば、分かってるような分かっていないような様子である。
「ああ、やっぱり心配してくれたんだ」
「~~~~ロイ様!」
「若いっていいよね、よっ!青春!」
「俺はもう90です!」
「ちなみに私はまだ17歳くらいかな、正確な歳は分からないけど」
「お前に聞いていない!ややこしいから少し黙っていてくれ!」
ぜぇぜぇと肩で息をするウィルに、ロイは「余裕がないねぇ」と、ケラケラ笑っている。
リゼラに至っては、(いつも楽しそうだな.....)といった具合にしか感じていなかった。
といっても一方的にロイがウィルを転がして遊んでるだけだが。
だが、ロイは気さくを通り越してえらく友好的で、いつもウィルをからかっているが本当はウィルを大切に思っているようだし、ウィルの方は、主に対して物怖じすることなく接しているが、敬う姿勢はめったに崩さない。
そんな関係が羨ましい.....とまではいかないが、見ていて微笑ましい気分になるリゼラであった。
「そうかぁ、リゼラ嬢は17歳なのかぁ。可愛いお年頃だねぇ、僕といちゃラブしよー?」
「犯罪ですよ、ロイ様」
「君でも犯罪になるけどね」
「残念ながら小娘に用はありません」
「.....ウィル、いちおう私は成人なんだけど」
「じゃあやっぱり僕といちゃラブしよー!」
「ロイ様!!もう嫌だ、俺はなぜこの二人と一緒にいるのだろう.....」
「それはこっちも同じよ、ウィル」
一体なぜこんな面子で行動を共にしているのかというと、ことは1年前に遡る。
リゼラは、師と仰ぐ人物のもと、魔物退治や街の雑用など、様々な仕事をしていた。
大きな任務を任され、旅をしていたある日。
とある事件が起こり、リゼラは己の最も大切な者を目の前で失った。
リゼラは首謀者に復讐を誓ったが、その事件には厄介な国の大物が関わっていた。
あわや罪を捏造され捕らえられそうになったが、既に面識のあったこの二人と、知り合いの騎士によって逃がされたのである。
そこから、三人で追っ手から逃げる生活を送っているのだ。
だが、かつての仲間たちの安否と行方は未だ不明のまま。
なんせ国中を逃げ回っているのだから情報が耳に入らないのは当然である。
ちなみに、ロイとウィルも手配書が回されており、賞金額は.....。
「ねえ、そういえば二人の首っていくらだったっけ?」
「なぜ唐突にそんなことを聞く?狩る気か!?」
「えっとねぇ.....ああ、9999万fizだよ」
「ロイ様もポロっと教えないでください!なぜ手配書なぞもっているのですか!」
つまりだいたい屋敷が5、6軒くらい建つ値段である。
節約すればかなりの間働かずとも食べていける額、というわけだ。
なので、きちんと変装しないと街にも入れず通報されるし、
「オイ、コイツらじゃねぇか?」
「本当だ、男二人に女が一人.....人相書そっくりだな」
「マジか!早く殺っちまおうぜ!」
.....このように賞金稼ぎからも狙われる。
数は5、6人いるが、どれもごろつきのような格好をしており、それぞれ武器を手にしている。
斧に、錆び付いた剣、弓を持っているものもいる。リゼラはいつの間にかこんな近くに敵がいたことに驚いていた。
もっとも、狙われ追われる生活には一年たって慣れてしまったが。
「あちゃー、僕らも有名になったねぇ。一部に、だけど」
「ロイ、言ってる場合じゃないよ?」
「もうこの国を出た方がいいかもねぇ」
本来ならば既に他国へ亡命でもするべきだったのだろうが、未だに国を出なかったのには理由があった。
それは、リゼラのいう“自分のやるべきこと”に関係したものだった。
「.....お前が気付かないとは珍しいな、リゼラ」
「うん、ごめん。さっき力を使ったから感覚鈍ったのかも」
「そうか.....。お前は下がっていろ。ロイ様も、お下がりください」
ウィルは二人を下がらせると、なにもない空間から黒檀の剣を召喚した。
ごろつきは面白くなさそうな声を出した。
「は?お前一人かよ」
「ああ!?なんなら三人一緒でもオレたちゃかまわねんだぜ!?」
あからさまな挑発にウィルは顔色一つ変えることなく極めて冷静に言い放った。
「弱い犬ほどよく吠える」
言われた男たちは一瞬沈黙した。
すると、顔を怒りで赤らめながら全員で襲い掛かってきた。
それを難なく対応し、一人ずつ沈めていくウィルに、ギャラリーから一言。
「あれって火に油だよね」
「あれで負けず嫌いだから、彼」
そういう問題なのか。
思ったことがつい顔に出ていたのか、ロイが苦笑した。
「まぁ、逆にわざと挑発してるんだろうけど」
「そ、そうだよね」
リゼラがウィルに目をやると、やはりウィルの表情はあまり変わらない。
冷静に挑発するというのもなかなかに恐ろしくはある。
数分後、彼のまわりにごろつきどもが転がっていた。
結構な眺めだ。
「終わりました」
「今回も早かったね。いっそ記録更新でもめざそうか」
「ええ、少々面倒ではありますが、ロイ様の道を遮ろうとする阿呆どもは瞬殺してまいります」
「いや二人とも何も言わないけど、彼らの右腕が明後日の方向を向いているのはどうしてなの?」
「やられたらやりかえす。報復だ」
「言いきったよ!?」
正確にはやられたというよりもやられる前にやれ、といった具合である。
しかし、仕掛ける方が悪いのだと涼しい顔の二人に、リゼラは少し呆れた様子でいた。
「もう、それで余計しつこく追われたらどうするの?」
「お前だって襲ってきた連中の腹を隙あらば腹を降させてるだろう。変なツボを狙って」
「ああ、戦闘中に腹痛って地味にえげつないよね。それも女の子にそうされるっていう.....」
.....。
束の間の沈黙。
全員の脳裏には、腹を降して悶絶するごろつきや騎士の図。
これまたおかしな特技を持っていたリゼラだけでなく、ウィルもロイも微妙な顔をしていた。
「.....コホン、この話はもうやめようね」
「.....そうですね」
「.....うん」
結果どちらもえげつないという結論に至った三人は、話題を変えることにした。




