表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
11/11

第11話「信者からの手紙」

フォロワーが20万を超えてから、DM欄の数がえらいことになっていた。


「入会できますか?」「研究員になりたいです!」「マダニの論文を読んで人生変わりました」——毎日こういうのが来る。コメント欄がバズるたびに10件単位で増える。浅井は最初は全部読んでいたが、今は流し読みするようになっていた。


ある夜の23時頃、ひとつのDMで止まった。


@asahi_a03。アイコンは空の写真だった。明け方みたいな、薄い青だった。


「突然すみません。WBRCのアカウントをずっと見ています。マダニの話を読んで、なんか救われた気がしました。感知するものを減らせばいいんだなって、初めて思えました。


ヴィラ・ナチュラーレって今も入れますか。そこに行けたら、少し楽になれる気がしています」


浅井は読んで、もう一度読んだ。


「入会できますか?」「研究員になりたい!」とは、何かが違った。あっちは、WBRCに近づきたいという話だった。こっちは、「楽になりたい」という話だった。


うーん、と思った。なんか違う。うまく言えなかったけど。


「藤代」とLINEした。「DM見て!ちょっと違うやつ来た」


しばらくして「見た」と返ってきた。


「なんか違くない?」と浅井は打った。


少し間があった。いつもより長かった。


「大丈夫かな」と藤代が返した。


浅井は「え」と思った。「大丈夫?」って、藤代が言うの珍しかった。「バズった」とか「面白い」とか「次どうする?」とか、そういうことしか言わないやつなのに。


「何が」と打った。


「なんか、ちょっといつもと違う感じがして」と来た。


「俺も思った」と浅井は返した。「「楽になれる気がしてる」ってところが、なんか」


「うん」


「大丈夫じゃないのかな、この人」


「……わかんない」と藤代が返した。


しばらく、二人とも黙っていた。浅井は画面を見たまま何も打たなかった。


「なんかさ、俺たちが何かしたわけじゃないんだけどな」と浅井は打った。


「そうだね」と来た。「でも来てる」


「続けていいのかな、これ。ちょっと不安になってきた笑」


「浅井がやめたいならやめていいよ」と藤代が言った。「俺は別にどっちでも」


浅井は少し考えた。部屋の電気を消したまま、スマホの光だけだった。やめてもいいと言われると、なぜかやめたくなかった。


「いや、続けたい」と打った。「なんでかわかんないけど笑」


「そっか!」と返ってきた。「じゃあ続けよう」


「これ、どう返す?」


「WBRCのスタイルで返した方が良くない?」と藤代が言った。「あのアカウントに来たDMだから、あのアカウントとして返す方が自然だと思う」


「直接返信じゃなくて?」


「そっちのほうがいいかな」と藤代が言った。「明日一緒に考えよう!」


「わかった」と浅井は返した。「明日な」


「おやすみ」


「おやすみ!」


スマホを置いた。


「そこに行けたら、少し楽になれる気がしています」という文章が頭に残っていた。


朝日、という名前だけがわかった。アイコンの薄い青が、なんとなく頭にこびりついた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ