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アンダーサイカ -旧南岸線斎珂駅地下街-  作者: 唄うたい
第4章 囈【たわごと】
11/39

4-1

――ピピピピピ……


「ん…、うぅ…。」


枕に顔をぐりぐりこすりつけ、私は襲い来る眠気と必死に闘う。

重い瞼を持ち上げれば、そこは、


「………もう朝…?」


私の部屋のベッドの上。目覚まし時計がいつものように、朝の7時を告げていた。


ベッドから体を起こして、うーんとひとつ伸び。

寝癖でくしゃくしゃの髪を一緒に整える。

ふと体に目を落とすと、


「…私、いつパジャマ着たっけ…。」


昨晩アンダーサイカに行ったことは覚えてる。

私服で夜中に、廃駅の目の前に行くのはなかなか怖かった。


怖い思いをして、更には薬屋の手伝いをして、オバケに囲まれて…。あんなにいろいろなことがあったのに、なぜか私は少しも疲れてなかった。


まるで今までのすべてが夢の出来事だったみたいに、私の体はピンピンしてた。


「…………。」


疲れてないのはありがたい……けど、


―――なんだろう、この不安…。



「豊花ー、起きてるー?

潤子ちゃんから電話ー。」


「!!」


お母さんの声だ。

しかも潤ちゃんから…って。こんな朝早くに電話なんて、珍しいこともあるんだな。


いつまでも不安と睨めっこするのはごめんだから、私はピョンとベッドから飛び降りて、潤ちゃん(の電話)が待つリビングへ走る。


「もしもし、潤ちゃ………」


《豊花っ!!

今日何か用事ある!?》


「ん」まで言い終わらないうちに、潤ちゃんの物凄い大声が受話器から飛び出してきた。

耳がキーンとする。

いつもここまで怒鳴ることがないから、今日は機嫌が悪いのかと思ったけど、


「…え、何もないけど…。」


《あ、ホント?良かった!

あたし考えたんだけどね、

ほら、アンダーサイカのグループ研究、ダメになっちゃったじゃない?》


「…………。」


そっか、拓くんと潤ちゃんはアンダーサイカのこと知らないんだ。

正しくは記憶が書き換えられてる。

私たちの間では、アンダーサイカの都市伝説は嘘八百として決定されたんだよね。


「うん、そうだね。それが?」


《だから早く次の研究テーマ決めようと思ってさ、こんなのどう?

今までにこの町で起こった奇妙な事件を調べて、まとめるっていうのは!?》


私たち3人の中で、最初の提案をしてくれるのは拓くん。

そしてその尻拭い的な役目を負ってくれるのが潤ちゃんだった。

私はテーマ決めたりするのは苦手だから、正直ありがたい。

でも、


「…事件って…、都市伝説よりえぐそうじゃない?

もっと明るい話題にしようよぉ…。」


こちとら2日連続でオバケの巣窟に入ってきたんだ。

刺激はもうたくさんだよ。


すると案の定、受話器の向こうから潤ちゃんのブーイングが聞こえた。


《都市伝説はたかが噂だけど、事件っていうのは本当に起こったから事件なのよ!?

とにかくあたしは、他のグループみたいに良い子良い子した研究は絶対イヤ!》


「めんどくさいなぁ…。」


拓くんも潤ちゃんも「自分は子供じゃない」と主張するくせに、変なとこで子供みたいな意地張るんだから。

…あ、私もか。


こうまで言われちゃ、同意しないのは意地悪だよね。


「分かった。それでいいよ。

どこで集まるの?」


《きゃ!ありがとう豊花!!

とりあえず9時に中央図書館の前で待ち合わせしましょ。

拓哉にも伝えておくから!》


「9時ね。りょうかーい。」


持ち物とかその他もろもろの話を軽くしてから、私は通話を切った。


「…事件かぁ…。」


そういえば、駅前のお巡りさんもそんな話してたな。


『飛び込み自殺だよ。』


まだ運行していた斎珂駅で起こった事件。

自殺者がそんなにいたなんて知らなかったけど、この町の事件を特集するなら、これはきっと外せない。


それに、斎珂駅というだけで、私が関心を持つには充分な要素だった。

ずっと気になってたアンダーサイカの正体が、…ヨシヤの正体が、少しでも分かるかも。

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