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――ピピピピピ……
「ん…、うぅ…。」
枕に顔をぐりぐりこすりつけ、私は襲い来る眠気と必死に闘う。
重い瞼を持ち上げれば、そこは、
「………もう朝…?」
私の部屋のベッドの上。目覚まし時計がいつものように、朝の7時を告げていた。
ベッドから体を起こして、うーんとひとつ伸び。
寝癖でくしゃくしゃの髪を一緒に整える。
ふと体に目を落とすと、
「…私、いつパジャマ着たっけ…。」
昨晩アンダーサイカに行ったことは覚えてる。
私服で夜中に、廃駅の目の前に行くのはなかなか怖かった。
怖い思いをして、更には薬屋の手伝いをして、オバケに囲まれて…。あんなにいろいろなことがあったのに、なぜか私は少しも疲れてなかった。
まるで今までのすべてが夢の出来事だったみたいに、私の体はピンピンしてた。
「…………。」
疲れてないのはありがたい……けど、
―――なんだろう、この不安…。
「豊花ー、起きてるー?
潤子ちゃんから電話ー。」
「!!」
お母さんの声だ。
しかも潤ちゃんから…って。こんな朝早くに電話なんて、珍しいこともあるんだな。
いつまでも不安と睨めっこするのはごめんだから、私はピョンとベッドから飛び降りて、潤ちゃん(の電話)が待つリビングへ走る。
「もしもし、潤ちゃ………」
《豊花っ!!
今日何か用事ある!?》
「ん」まで言い終わらないうちに、潤ちゃんの物凄い大声が受話器から飛び出してきた。
耳がキーンとする。
いつもここまで怒鳴ることがないから、今日は機嫌が悪いのかと思ったけど、
「…え、何もないけど…。」
《あ、ホント?良かった!
あたし考えたんだけどね、
ほら、アンダーサイカのグループ研究、ダメになっちゃったじゃない?》
「…………。」
そっか、拓くんと潤ちゃんはアンダーサイカのこと知らないんだ。
正しくは記憶が書き換えられてる。
私たちの間では、アンダーサイカの都市伝説は嘘八百として決定されたんだよね。
「うん、そうだね。それが?」
《だから早く次の研究テーマ決めようと思ってさ、こんなのどう?
今までにこの町で起こった奇妙な事件を調べて、まとめるっていうのは!?》
私たち3人の中で、最初の提案をしてくれるのは拓くん。
そしてその尻拭い的な役目を負ってくれるのが潤ちゃんだった。
私はテーマ決めたりするのは苦手だから、正直ありがたい。
でも、
「…事件って…、都市伝説よりえぐそうじゃない?
もっと明るい話題にしようよぉ…。」
こちとら2日連続でオバケの巣窟に入ってきたんだ。
刺激はもうたくさんだよ。
すると案の定、受話器の向こうから潤ちゃんのブーイングが聞こえた。
《都市伝説はたかが噂だけど、事件っていうのは本当に起こったから事件なのよ!?
とにかくあたしは、他のグループみたいに良い子良い子した研究は絶対イヤ!》
「めんどくさいなぁ…。」
拓くんも潤ちゃんも「自分は子供じゃない」と主張するくせに、変なとこで子供みたいな意地張るんだから。
…あ、私もか。
こうまで言われちゃ、同意しないのは意地悪だよね。
「分かった。それでいいよ。
どこで集まるの?」
《きゃ!ありがとう豊花!!
とりあえず9時に中央図書館の前で待ち合わせしましょ。
拓哉にも伝えておくから!》
「9時ね。りょうかーい。」
持ち物とかその他もろもろの話を軽くしてから、私は通話を切った。
「…事件かぁ…。」
そういえば、駅前のお巡りさんもそんな話してたな。
『飛び込み自殺だよ。』
まだ運行していた斎珂駅で起こった事件。
自殺者がそんなにいたなんて知らなかったけど、この町の事件を特集するなら、これはきっと外せない。
それに、斎珂駅というだけで、私が関心を持つには充分な要素だった。
ずっと気になってたアンダーサイカの正体が、…ヨシヤの正体が、少しでも分かるかも。




