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森の賢者の優しい恋のお話  作者: テディ
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第33話 ためらい

 第33話  ためらい


 アリシアが無事に1人での買い物を達成した夜、

シャアルはレモンドとコナーと、個室のあるバーにいた。

コナーのお勧めの場所で、シャアルとレモンドが良ければと

教えたのだ。


おのおの時間には集まってきた。

誰からともなく席に着き、好みの酒とつまみを注文する。

そして、酒席の完成だった。


3人は盃を合わせた。レモンドが祝いの言葉を口にする。

「新しい出会いを祝って」

そして、一口、口をつけた。

「コナー、店を教えてくれてありがとう。

僕たちは屋敷で飲むことが多いから、新鮮だよ」

「いいや、レモンド。何だか君と普通に話すのは

まだ慣れないよ」

コナーは笑った。

「個室があるバーなんて、初めて知ったよ」

「あまり目立たないほうが良いんだろう?

個室だったら結界を張ってしまえば音は漏れないし」

そう言ったコナーにシャアルが笑った。

「コナー、本気で隠密部隊に移る気はないか?」

「辺境伯自らのお誘いは光栄だけど、

僕は古文書が好きなんだ。謹んで辞退するよ」


お互いに興味のあることを聞いたり、家族の話をしたり

こんなに早く打ち解けられるようになるなんて、

3人とも思ってもいなかった。

立場上、交友関係は気をつけなければならないし、

政治的な思惑に利用されないようにもしなければならない。

知り合い以上になるのは、思っているよりも難しいものだったのだ。


コナーが、柔らかく微笑んでシャアルに聞いた。

「シャアル、アリシアとはどう?」

「どう……?そうだな……、まだ2人では一回しか出かけたことがない。

もちろん、毎日一緒にいるからお互いに話はできている」

レモンドが笑って言った。

「さすがのシャアルも、もう少し関係を深めたいといった所か」

「本音をいえばそうだな。ただ……アリーが真剣に考えてくれているから

急かすようで、迷いどころだ」

コナーは、酒をゆっくり口にしながら

「それだけアリシアを思って行動してるんだから、

もっと自信を持ったら?そうだな、次は2人で出かける機会を増やすとか」

レモンドもうなずく。

「僕も、その意見には賛成だな。(つがい)を見つけた者にしては

会う回数が少なすぎる」

「そろそろ遠慮せずに動いても良いんじゃないかなぁ?」

そう言うコナーに、シャアルはしばらくジッと考えた後、問いかけた。

「コナー、少し立ち入ったことを聞いても?」

「もちろん、大丈夫だよ」

「君は獣族に、(つがい)だと言われたことはあるのか?」

コナーはアリシアと同じ質問に、なぜか嬉しくなった。

お互いに、恋についてこんなに真剣に考えることができるんだ。

それはコナー自身にとっても、心温まる経験になる。

「もちろんあるよ。この歳だしね。でもね、僕の場合は

彼女が僕の気持ちを待てなかった。待つことが辛くて

去って行ってしまったんだ。申し訳なく思ったものだよ」

「それはどの位の期間の話?」

レモンドも問いかける。

「半年だったよ。今になって思うんだけど、

僕たちは一目惚れでない限り、半年で結婚相手を決めるのは

難しい。デートはできるよ。会話を交わし、付き合うかどうか

決めることはできる。色々な価値観の違いを乗り越えて

この人と一緒に居たいか決めるんだ」

「一目惚れ?」

「獣族が、(つがい)を見つける瞬間と同じようなものだよ。

相手を見た瞬間に恋に落ちるんだ」

レモンドもシャアルも驚いていた。コナーは優しく続けた。

「シャアル、君はアリシアが本当に大切なんだねぇ。

そのアリシアのために、自分を抑えることができる。

本物の愛情だと思うよ。だから、アリシアとのデートを

楽しんでほしい。アリシアは充分に君の気持ちを分かっているよ」

シャアルは素直に礼を言った。

「ありがとう、コナー。そうだな、やはり長期戦だな。

一回、待つと言ったんだ。それを貫いてみせよう」

苦笑いしながら、シャアルは言った。

コナーが、励ますように話す。

「シャアル、君はアリシアに見返りを求めることなく

返事を待っている。それは人族でも難しいし、

獣族の本能からすれば、もっと難しいんだと思うよ。

だから、僕は君を尊敬している」

レモンドも嬉しそうに言った。

「そうだな、コナーの言う通りだ。

シャアル、君は自分に誇りを持つべきだよ」


コナーが明るい空気に変えるように、シャアルに聞いた。

「そういえば、シャアル。アリシアから聞いている?

彼女、僕に自分の友達を紹介してくれるって」

レモンドが驚いた。

「そうなのか、シャアル?」

シャアルはまた苦笑いした。

「そうなんだ。本が好きな友達がいるらしく、

コナーに会わせたいと話していた。私も一緒にどうかと」

レモンドが仏頂ずらになる。

「アリシア殿は僕は誘ってくれなかった」

コナーとシャアルが思わず笑い出した。

コナーが、まあまあとなだめる。

「自分の兄の上官だろう?そりゃ、気楽に誘えないさ」

「僕は常に皆に公平だ」

「そうだ、その通り。君は私情をはさんだりしない。

それは分かっているけど、アリシアからしたら気軽にはいかないさ」


2人でレモンドをなだめながら、酒を進める。

こうして親交を深める夜はふけていった。



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