告白
「まだ付き合わないの?」
休日の午後。ランチ後の紅茶をすすりながら、カミラがあきれたように言う。
「だよね…」
その言葉にため息をつく。
さすがに私もアランとこの曖昧な関係を続けていていいのか、悩みだした。
ルイスとも話をして、前に進むと決めたのに。
「アランはなんで付き合おうって言ってこないんだろうね」
カミラが不思議そうに首をかしげる。
「そうなんだよね。何か意図があるのかな」
私も首をかしげる。
こないだはキス以上にまで発展しかけたし、もう前みたいにアランが私をからかおうとしているとは思っていない。
だとすれば本気で私のことを好いてくれているように思うのだが、変わらず好きや付き合おうという核心を突いたことは言われていない。
「アランのことだから振られるのが怖いとか意気地がないってわけじゃなさそうだもんね」
「うん。アランはそういう人じゃないと思う。でもだから余計に何かあるのかなって考えちゃうんだよね」
私が深く考えすぎなのだろうか。ルイスと別れて3カ月くらいなので、気をつかわれているのだろうか。
カミラがじっと私を見つめる。
「確認だけど、フローラはアランのことちゃんと好き?」
カミラの目を見つめ返す。
「ほら、私2年生の時はフローラたちと同じクラスじゃなかったからさ。前にルイスの話聞いて、びっくりと納得というか。なんでルイスと付き合ったのか不思議だったから」
カミラが息を吐く。
「今回はフローラがちゃんと流されたとかそういうんじゃなくて、本当に好きなのか心配なの」
もう一度目をしっかりと見つめられる。
「わたしは…」
答えようと口を開きかけたその時、通信機の音が鳴り響いた。通信機は魔法によって離れていても話ができるのだ。
「いいよ、出て」
カミラに促され、通信機を確認すると、キャリー先輩からの連絡だ。休みの日に連絡とは珍しい。なにか緊急だろうか。
「もしもし。どうかしましたか?」
「フローラちゃん?たいへん、アランくん他国の学校から引き抜きの話がきているんだって。急だけど、異動になるかもって。さっき会った別の先生が。フローラちゃん、アランくんから何か聞いている?」
キャリー先輩の声が遠くに聞こえる。
「アランが」
声が震えた。他の国に行ってしまうかもしれないの?
突然のことにぼーっとしてしまう。
「もしもし?フローラちゃん?」
先輩の呼びかけに、思わず椅子を蹴って立ち上がる。
「私、アランに確認してきます」
キャリー先輩に挨拶をし、電話を切る。
「いっておいで。フローラの気持ちはよく分かったから」
カミラが優しく微笑む。
「ありがとう。ごめんね。また連絡する」
お金を机に置き、店を飛び出す。
アラン、アラン!
箒を取りだし、大急ぎでアランの家に向かおうとする。
「って私、アランの家ちゃんと知らないじゃん!」
ばかばか、焦りすぎだ。通信機でアランに連絡する。
何度かコールし
「もしもし?フローラ?」
アランの直接聞くより、低めの声が通信機越しに聞こえる。
「アラン今どこ?会いたいんだけど!」
「え?家だけど、フローラはどこ?」
アランが驚いたように言う。
「学校の近く」
「なら学校行く。すぐだし、待ってて」
「わかった。ありがとう」
通信機を切り、箒を学校に向けて走らせる。
寒さか不安か、箒を握る手がかすかに震える。
「遠くに行っちゃやだよ、アラン」
私の泣きそうなつぶやきが風に消えた。
学校に到着し、アランを待っていると、すぐに彼は現れた。
「フローラどうした?何かあったのか?」
箒をおり、足早に私に駆け寄ってくる。
目の前にアランが立ち、私の顔を心配そうにのぞき込んでくる。
「…アランが好き!」
聞きたいこと、言いたいことは他にもあったはずなのに、アランの顔を見たら、その言葉が口から零れ落ちた。
「ははっ」
顔を見たらあふれるぐらい、私の中はとっくにこの気持ちでいっぱいだったんだ。
そう思うと笑い声が漏れた。
「なに笑ってんだよ」
アランが泣きそうな顔で眉を下げている。
「ああー、やっとか」
空を見上げて、アランが言う。
すると次の瞬間、私の体はアランに包み込まれた。
「俺もフローラが好き。ずっとずっと好きだった」
アランは私の頬を手のひらで包むと、しっかりと目を合わせる。
「フローラ。俺と付き合ってください」
「はい!」
めいいっぱい腕をのばし、アランに抱き付く。
「ああ。しあわせ」
アランのつぶやきが耳元で聞こえ、てれくささと嬉しさで、アランの胸に頭をすり寄せる。
両想いって最高だ、ずっとこうしていたい。
寒さも忘れ、アランのぬくもりを感じる。
「あ」
しかし大事なことを思い出して、ばりっとアランからはがれる。
「なんだよ」
余韻に浸っていたのか、アランが少し不満そうに私を見る。
だがそれどころではない。
「アラン、他国の学校に転勤って!」
「ああ」
アランがうなずく。
「そんな…」
せっかく両想いになれたのに、離れ離れなんて。へなへなと力が抜ける。
「ばーか。俺がフローラと離れるかよ」
「えっ?」
パッと顔を上げ、アランの顔を見ると、意地悪そうな顔で微笑んでいた。
「断った。これからもフローラと一緒にいたいから」
「アラン!」
うれしくて、アランに飛びつきキスをする。
「なっ!」
すると今まで見たことがないくらいアランが顔を真っ赤にさせていた。
「あーくそ。フローラって押しに弱そうだから、自分から俺のこと好きって言ってくれるまで、告白も我慢して余裕かましてたのに」
アランが恥ずかしそうに顔を手で覆う。
「かわいい」
思わずつぶやいた。
やっぱり男の子の普段とのギャップにかわいいと感じたら、沼みたい。
幸せをかみしめ、そっとアランと抱き合った。
次はアラン目線です。それで一応完結予定です!ここまで読んでくださった方ありがとうございます。ぜひ最後までお付き合いください!




