神竜の婚約者と商売特化の国
「お待たせしました」
「あ、うん……」
それよりもなぜ十二単を着ているんだ!? むしろそっちの方が気になって仕方がないのだが?
俺が混乱していると、十二単を着たソフィアが静々と対面に座って三つ指揃えてお辞儀した。
「まずはカズト様、私の願いを聞き届けてこの場に来ていただきありがとうございました」
「え、あ、うん」
よく考えたら契約しただけなので願いを聞き届けた訳では無いのだが、目の前の状況を見てそれでも普通に対応できるならここにきてやってみろと言ってやりたい。
どうすればいいんだこれは!
俺が慌てているのが分かったのだろう。
ソフィアがクスクスと笑うと言ってきた。
「どうですか? この部屋や服装は? 見たことないでしょう?」
「え? あ、まあ、それはまあ、うん、見たことないね」
「……なんでそんなに微妙な反応をしているのですか?」
いやだって、ここは旅館みたいな部屋だし、それ十二単でしょ? なら見たことはないけど知ってはいるから反応としては微妙になってしまうよ。
うーんめっちゃ気になるからそのあたり質問しよう。
「それで、その服装はいったい何なの? この国の正装と言った感じ?」
「いえ違います」
「違うのかい!」
思わずつっこんでしまった。
「はい、この服装はどちらかと言えば狐人族の方々の方が先に来ていたものを私たちが取り入れさせてもらっただけですから」
「──っ!」
今後ろにいるハクが緊張したような気がする。どうかしたのだろうか?
「ふーん。それなりに外交を行っているんだな」
教えられてた知識からだとどう考えても鎖国みたいな感じだと思ってたんだけど、そんなこともないらしい。
「ええ、私たちの国は他種族を招き入れること自体は稀ですが。特殊な商品などを外で販売したり、逆に購入したりと、商売に力を入れている部分はあるのです」
「へえ、そうなんだ」
それは危なくないのだろうか? そもそもエルフ自体がよく狙われるから森の奥にいるみたいな感じだったはずなのに。
「『風の運び屋』という商会はご存知ですか?」
「へ? あの輸送に特化した形で一躍世界を席巻している商会がどうかしたの?」
今やこの商会なしには商売ができないとまで言われている商会がどうかしたのだろうか?
「それが私たちエルフの作っている商会です」
「──!?」
こ、これは驚きだ。全然知らなかったぞ? ……そういえばこの商会結構ミステリアスな部分もあったよな? それと何か関係が?
「私たちは精霊様の力によって深い森の中、どこへでも移動できる力を持っています。
ですから、それを利用して今の商会を立ち上げました。
そして商会が運送業で世界的に活躍するようになってきたときに国に言ったのです。
私たちに危害を加えるならばこれまでやってきた運送を取りやめる、と。
そしてそれが嫌なら各国が全面的にバックアップをしてください、とも言いました」
これは、ちょっとすごいな。
『風の運び屋』は今やどこへ行っても聞くような商会の名前だ。
それも、この商会がなくなったら今の経済が回らないだろうくらいのレベルでの影響力がある。
つまりは甘い蜜を最初に与えて、それから逃げられなくしたということだ。
この世界のエルフは恐るべき商人だった。
そういえば、
「なあ、さっき言ってた特殊な商品って何なんだ?」
エルフの国の特殊な商品なんてメチャクチャ気になる。
そう思って質問したら、なぜかソフィアが意気消沈し始めた。
「実はそれが、今回カズト様に来ていただいた理由になるのです……」
なるほど、ここからが本題か。
さて、何が出てくるのやら……




