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妄想が世界最強の第一歩?  作者: 上和 逢
第一章 神竜の婚約者
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神竜の婚約者と森を超えて

「あ、あの!」

「いや、別に大地の神とかそういうのじゃないから」

「そ、そうですか……」

「なんでそこで残念そうにするのかな……」

「残念なものは残念なのですよカズト殿。で、実際のところ──」

「だから違うと言ってるじゃないですか!メアさん、あんたも性格が変わりすぎだよ!」


 俺たちは今約束通りエルフの国、エルフィーノ森皇国に行くために森の中を歩いている。


蒼園降誕(あおそのこうたん)》を発動してからのソフィアとメアの食いつき具合が半端じゃないのだ。

 やれ大地の精霊だ、やら大地の神だとうるさいったらありゃしない。


 俺の能力の欠点である相手を傷つけたりするような行為は出来ないっていう説明を受けても、「おお、神はなんと慈悲深いのか」とか言い始める始末で、正直俺どうすればいいのかわからない。


 ……さて、ここは気を取り直して現状について確認しよう。


 俺たちは今、神竜の婚約者に与えられる試練を突破した森の奥深くまで歩いている。


 しかし、実はそんな場所に国なんてあるわけもない。

 では何故そんな場所にいるのかと言う話だが、これはエルフィーノ森皇国の特徴が関係していたりするのだ。


 というわけで、ここでエルフィーノ森皇国についてちょっとした知識を説明しておくとしよう。


 エルフィーノ森皇国はかつての勇者たちに協力したエルフたちで作られた国で、サクラ王国とは友好関係にある。


 で、その時の勇者は協力してくれたエルフな友人さんたちのために、絶対安全な森というものを作ったのだ。


 うーん、例えるなら樹海の中に国を作っているんだけど、その樹海のすべての地面が地雷で埋め尽くされていて、空にいてもミサイルで全て撃ち落とされてしまう。みたいな感じかな?


 で、まあ、そんなことすれば普通は国には入れないし、外に出ることも出来ないわけなんだけど、そこファンタジー世界、万能な魔法様の存在がそれを解決してくれる。


 勇者様は、エルフの人間だけにエルフィーノ森皇国を行き来する転移魔法の扉を開く鍵を与えたのだ。


 これによってエルフィーノ森皇国は普通に外交を行うことを可能としており、実はこの世界において影の最強はエルフィーノ森皇国が最強ではないかと言われているくらいだ。


 だって、彼らはその扉の鍵さえあれば、森の深いところならばどこにでも転移することができ、国自体はどこにあるのかもわからないというのだ。


 しかもエルフは精霊と契約により強力な魔法を扱えたりするから、こんな国に喧嘩を売るのはバカのやることだ。


 サクラ王国も、エルフィーノ森皇国との交流があるからこそ、他国から恐れられているという所はあったりすると今は亡きオーランドさん(自分ですけど)のお父様は仰っていた。


 ま、そんなわけなのだが、先ほど言った通り鍵が扉を開ける場所というのは森の奥深くだけなのだ。それはなぜかという話なのだが……


「……ここで、いいですね」


 そう言うとソフィアが鍵──宝石のエメラルドを削って出来たかのようなオカリナを取り出した。


 へえ、あれが鍵なのか。さすがに鍵がどういうものなのかというのは基本的に知っている人はいないからな、その辺りについては初めて見る。


「行きます」


 そうしてソフィアはオカリナを吹く。


 その音は、どこか落ち着く響きをしていていつまでも聞いていたくなるような心地よいものだった。心なしか森も喜んでいるような……いや、これ本当に喜んでいるかもしれない。


 なぜなら、オカリナを吹くソフィアの周りにだんだんと木の葉と……魔力の塊みたいなのが楽しそうに集まり始めたのだ。神竜の婚約者になった影響か、俺の明るい青緑色瞳にはそういった魔力の流れが見えるようになっている。

 今行われているのは、おそらくこの森の精霊たちの力を借りる段階なのだろう。


 なぜ森の深いところに行かなければならないかといえば、あの鍵に森に住まう精霊たちの力をたっぷりと溜め込まなければならないからだそうだ。


 音楽を鳴らしていることからいわゆるチップとして精霊から力を少しずつ貰い、それによって転移魔法を起動するタイプなようで、森の深いところくらいでないとあの鍵を起動できるだけの数の精霊が存在しないのだろう。


 某オークな息子さんの元お父様は「たくさんの森の精霊の力を借りる必要があるからだろうな」と言っていたからその受け売りだけど、事実その通りであると感じる。これはすごい。


 俺もいつか精霊と仲良くなって見たいものだ。


 などと考えているうちに、目の前に緑色の光で出来た扉が現れた。


「ではカズトさんとハクさんをエルフの国へご案内いたします」

「ああ、よろしく頼む」


 さーて、あちらの光景はどうなっていることやら、楽しみだ。

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