借金取立人と魔女
「それで、あなたたちは取り立て人に?」
ミセスマーダは目を見開いて聞いた。
「ええ。連絡して、訪ねて、採用です」
「まあ」
マーダはクスクスとおかしそうに笑った。
「さすがにちゃんと働き始めたのは大学を卒業してからですけどね」
「……」
バッソもコクリと頷く。
「そう……」
マーダはすっと目を細めた。
「それで、今更のようだけれど、この仕事はどう?」
その問いに、グランデとバッソは顔を見合わせた。
「重労働ですが、やりがいのある仕事ですよ」
「ふふ。そう」
マーダはゆっくりとソファに座り直した。
「聞かせてくれてありがとう。あなたたちの話を聞く度に若返るわ」
「お役に立てて光栄です。ミセスマーダ」
ブラウンの巻き髪と皺一つ無い肌を持ち、真っ赤なドレスを着て微笑む女性に、二人は揃って小さく頭を下げた。
「さて、僕らはそろそろお暇します」
「……」
紅茶を飲み干し、ケーキを平らげた二人が席を立とうとする。
グランデがローテーブルの上に置きっぱなしだった封筒に手を伸ばそうとした、その時。
「ああ、待ってちょうだい」
マーダがその手を遮った。
「また一ヶ月間、貸して欲しいのよ。100万ノーツ」
グランデは、封筒にかざしていた手をのけた。
書類の束を取り出す。
「かしこまりました。では、こちらの書類に記入をお願いします」
マーダは頷いて、再び羽ペンを握る。爪は、ドレスと同じように真っ赤だった。




