第1話 ライブツアー
わたしと息子の颯太は東京に戻って来た。
もう少しで颯太は1歳になる。ハイハイしてあらゆる場所に行けるようになり目が離せないが可愛くて仕方ない。いつも笑ってくれる。わたしによく似ていると言われる。
のんびりやでちょっと怖がり。どんどん重くなるけど、ずっと抱っこしていても飽きない。蒼くんからはしょっちゅう心配のLINEが届く。
《疲れてない? 大丈夫?》
そして合間には電話も。類斗からもだ。休憩時間は電話を繋げっぱなしにしてくれる。
「ゆりに早く会いたい」
こんなに簡単に、蒼くんや家族を裏切ってしまうなんて。でも抑えようって気持ちも出てこないぐらいに、類斗が好きだ。
「恥ずかしい……」
子供の前やしいちいち恥ずかしくなる。颯太はつかまり立ちしてこっちを見ている。わたしは食器を流しにさげる。
「ゆり?」
「あ、ごめん。食器下げてた」
「可愛い声聞けるだけで幸せやわ、はは」
「そんなことよく言えるなあ!」
「だってずーっと思ってたのに言えへんかってんから、もう我慢せえへんって俺決めてんねん」
「はは、すごい決意」
「こっちいつ戻って来んの?」
「蒼くんがツアー出るタイミングかな」
来月からまた蒼くんはライブハウスツアーに出る。練習が忙しいはずなのに、合間には遊びに連れて行ってくれるし、家事も育児も協力してくれる。
それなのにわたしは、ただ家にいるだけ。蒼くんと結婚するまではモデルのバイトもしていたけれど、蒼くんの会社からとめられてしまった。ブログもやめて、とにかく家にいる。お金には全く困っていないのに、自由じゃない日々に疲れてしまう日もある。
って本当にわたしは贅沢すぎる。絵に描いたような幸せなのに、文句なんて言ったらバチが当たる。
「またわかったら教えて。やば、もう1時間経ってるし……」
「お仕事頑張って」
「うおーゆりに言われたらがんばれる」
電話を切って画面を見ると蒼くんからのたくさんのラインが届いている。わたしは颯太の画像と一緒に返信する。
《ゆりーお昼食べた?》
《打ち合わせ終わったー》
《スタジオ移動してくるー》
《お疲れさま。お昼簡単に食べたよ。颯くんが可愛いすぎる》
つかまり立ちをして振り返っている写真を添付する。なんにも疑わない真っ直ぐな蒼くん。多忙にも関わらず、最近セックスを求められることが多くなってきている。妊娠中はもちろんわたしの体ファーストだったし、産後も体を気遣ってくれた。少し落ち着いてきたタイミングで「まだまだゆりとの子供が欲しいから……」って甘えてくるようになった。
夕食をラップで包む。颯太はついさっき寝てくれた。最近は寝たらなかなか起きず朝まで寝てくれるのですごく助かっている。
「ゆりー」
玄関が開く音がする。わたしは玄関に向かう。
「ただいまー」
と言って抱きしめられる。ふー、でも安心する。
「ありがとう、今日も颯太守っててくれて」
「お疲れさま。お仕事どうやった?」
「ゆりのおかげでいいライブなりそうやわ」
「ライブツアー中にO県戻りたいんやけど、いいかな?」
「もちろん。実家帰ってゆっくりして、って颯くんの世話もあるし大変よな。いっつもごめんな」
んー……立ったままキスされる。わたしのお腹辺りにもう、大きく硬くなった蒼くんのモノが当たってる。
「ごめん、静かにするからさ……我慢できひん……」
リビングのソファにわたしは押し倒される。キスの嵐を受けながら、見つめ合う。
「可愛い、ゆりはずっと可愛い……幸せや……」




