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第ろく話  虚栄に満ちる


 王都のギルドはいくつもある。

 場所なんて全然知らないけれど道行く人に聞けばわりと親切に教えてくれる。


 恥ずかしいなんて言ってられない。何故ならわたくしはもうすぐお姉さんになるのだから。産まれてくる弟か妹に自慢出来る姉にならないといけませんもの。


 ギルドの扉をそーっと開ける。


 中には何人かの輩っぽい人達がいたけど広さの割にはガラんとしている印象を受けた。


「お仕事お仕事〜。なんでもいいですわよ〜」


 適当に数枚の依頼書を引きちぎって受付へ持っていく。

 あとは受付の人が適当に見繕ってくれるって八重が言ってたから大丈夫ですわよね?


 依頼書を受け取った人が少し固まった。

 わたくしの年で働くなんて珍しいとは思えない。

 バルザックだって心ちゃんだって自分で稼いでいる。


 そしてお姉さんになるわたくしも自分で稼げるようになりたい。


「お嬢さん?こんなに沢山……冷やかしはダメよ」


 なんだか怒ってる気がしますわね。


「冷やかしじゃありませんわよ!」


「そうですか。でしたら冒険者証を確認しますので提示をお願いします」

「待ってませんわよ」

「…………」


「でも大丈夫ですわ!わたくしお姉さんですもの!」


「ああ、例の——。ではこちらの書類に記入して東門へ行ってください」


 受付の人に言われるままいくつかの書類にサインをして代わりにお金と割符を受け取った。

 書類なんて目を通す必要なんてない。

 タウロスお兄様なんてすっごい速さでハンコを押し続けているのだから目なんて通してないのだろう。


 そしてサインはなんて書いてあるかわからないように。

 そうする事によってなんか達筆っぽい雰囲気が醸し出されるらしい。



……



 東門前に行くと四頭引きの馬車に何人もの人が群がっていた。

 そして高い場所から指示を出してる女の人がいる。


「はぁい、時間厳守時間厳守だよぉ! ちゃんと給料払ってるんだから真面目にやってねぇ」


 あれは……何処かの店主のリドヴィアでしたわね。

 彼女の指示に従って人達が列をなしていく。


「ここに並べばいいのかしら?」


 わたくしもそっと列に加わる。


 リドヴィアは御者の男と何か話しているけど小声なのもあって上手く聞き取れない。


「そんじゃあ後はよろしくぅー」


「はい。……あの……オルセン様」

「わかってるよぉ〜。君の妹の病気はちゃぁあんと治す。良かったねぇ。君の命の価値は金貨10枚だ。破格破格だよぅ〜!」


「ありがとうございます」

「うんうん! 妹にはしっかり説明しとくからさぁ。勇敢な最後だったってね。ハイハイ!時間だからさっさとお馬さんを歩かせる」


 リドヴィアは御者の男の背中をバンバン叩いてヘタクソな口笛を吹きながら馬の前進に合わせて歩き始めた人たちを流し見ていた。


「ひゅー、ぴゅひゅー」


 当然わたくしとも目が合うわけで、


「ごきげんようですわリドヴィア」


「ひゅー、ひゅひゅい!?あれ、レイラちゃんぢゃないのぉ、誰かのお見送りかなぁ?」


「今わたくしはここに並ぶお仕事をしてますのよ」


 わたくしが軽くお辞儀をすませるとリドヴィアは明らかに挙動不審になっていた。


「えぇー嘘ぉ。レイラちゃんお金あるのになんでこんな怪しい仕事、えぇ、ちょっと、もう、ちょっとだけ。本当にちょっと」


 リドヴィアは慌てながらも前方へダッシュして御者の手綱を奪い取った。


「ストーップ!お馬さん達もイージーイージー! ふぅ。ちょっと休憩をとりまぁあす!」


 今度は大声だったのでちゃんと聞こえた。

 そして駆け足で近づいてきた。



「レイラちゃん、本当にこの仕事やるの?冒険者証がいらないだけあって何が起きても責任なんて取れないぐらい危険だよぉ?お金ちゃんを返してくれたら帰っていいから今回は破棄しない?」


「そもそもわたくし何をすればいいのか知りませんもの。お仕事したかっただけですわ。だから返金しませんわ」


「うわぁ、大物だなぁ……大物ならぁ……おぉもう」


 リドヴィアがわたくしの手を引いて馬車の前で止まった。


「姐さぁん、強い人欲しかったんでしょう?お試し期間でこの子使って見てよぉ」


『いやよ。横着するならリドヴィアが乗りなさい。もしくは切り札を貸しなさい。貴方が奪ってるのは知ってるのよん』


「うへぇ、暇つぶしに着いて来たくせに。それに顔も見ずに拒否する駄々っ子無用っ子。ってか、あいつまだ調整中だしぃ、そもそも時間だしぃ。レイラちゃん」




 リドヴィアはアゴで『馬車に乗れと』促した。

 それに従って乗り込むと



 時間が止まった気がした。

 髪型、服装、佇まい、お化粧。豪華な物は何も使ってないのに、

 そんな事は全然気にしないわたくしでも完璧と思えた。


「こんな女の子が私の何を護衛をしてくれるのかしらぁん?」


「ひょっとして、女神インユリア様ですの?」


「今は女神じゃないわよん。ちゃぁんと肉体で降りてきてるからねん。痛ければ泣くし殺されたら死ぬのよん


   貴方と違ってね」



 


 


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