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第51話  修める技


 私は今ブレドリパさんに見守られながら魔物を倒している最中だ。数は多いけど強くない魔物なので私でも苦戦する事なく倒していける。


 あらかた倒し終えた後、無言で見つめていたブレドリパさんに駆け寄った。


「ど、どうでしょうか?」

「……こんな事してなんの意味があるんじゃ?」


「ブレドリパさんが外で魔物狩りをしようと言ったんじゃないですか!?」

「ワシはミズーリちゃんの実力を見極めて遥かに格下を選んだつもりじゃったぞ?それなのになんの工夫もなく倒すだけ——お前さんはなにがしたいんじゃ?」


 息の根を止めた魔物を見渡す。

 まだ息をしている魔物もいる。

 私はなにも考えていなかった。余裕がなかった訳ではない。でも数をこなすにつれて雑になっていったのは事実だ。



「すいませんでした……もう一度お願いします」

「今日は数をこなすのはもう終わりじゃ。あとでワシが一手稽古付けてやるから英気を養っておれ」



 ブレドリパさんが立ち上がり扇子を地面に突き刺した。しばらく待っていると十、二十と魔物が集まってくる。


「ええか?魔物だって生きとる。それを踏まえて殺すんじゃから糧としてやらんとコイツ等も報われん」

「……はい」


 魔物を十分に引き寄せたところで


「そんな訳で逃げるぞ」

「えぇ!!?」

「一人でやれるなら挑んでええぞ?しかし擦りでもしたらワシは金輪際ミズーリちゃんに稽古は付けんからの」



「あ……どどうしよう……どうしよう」

「判断が遅い!」「逃げます!」



……


「カッカッカッ!魔物連中も逃げ足が速いと諦めるんじゃのう!」

「はぁ……はぁ……はぁ……。」

「ここでいいかのう。何処からでも来てみなさい」


 私が息を整えているとブレドリパさんが小枝を握っていた。昨日と同じで一手指導してくれるのだろう。


 まだ息が上がっている。

 ブレドリパさんは全力疾走の私と違って片足で跳躍しながら逃げていたのに全然疲れてなさそうだった。


 せめて息だけでも整えないと失礼になってしまう。



「はぁ……フゥゥゥ——。やぁッ!!」

「ふぅむ、なんか雑な息吹じゃのう……ほい」


 順突きを難なく捌かれる。

 まだ懐には入られていない。


「まだです!」

「一手と言ったじゃろう?」


 返す一撃を顔面に叩き込もうとしたけど、

 ブレドリパさんの姿はなく


「前から思ったったがミズーリちゃんは安産型じゃの」

「〜〜ヒィ!?こんっっのお!!」


 やっぱり後ろに回り込まれてお尻を触られた。

 鈍い音を立てて裏拳がまともに入ってブレドリパさんが数メートルほど吹っ飛んだ。


……


「あの……教えてもらっておいてこんな事言うのもなんですけど、お尻を触るのはやめてもらっていいですか?」

「理由を聞こうかのう」


「……嫌だからです」


 ブレドリパさんは事あるごとに私のお尻を触ってくる。普段からと言う訳ではなく稽古と称して毎回毎回……


「それはワシがミズーリちゃんを女性として扱わん……という事になる。心して答えよ。それでいいんじゃな?」

「はい」



「気乗りせんのう」


 言いながらブレドリパさんが刀身が無い……眼に見えない刀を抜いた。


「触れてみい。幻魔の刀身の尺を覚えたら始めるぞ」

「……はい……」


 目の前にいる人は誰なのだろう?

 先程までのブレドリパさんとは違う。

 心さんを襲った相手を子供扱いしていた時とも違う。


 十分な距離をとって幻魔刀を鞘に納めたブレドリパさんが腰を低くした。


「動いた場所から斬る。正味女性に女性扱いせんなど無理じゃから手加減はしてやる。殺しはせんからワシより疾く動いてみろ」



「    」



「  ここまで忠告しておいて無策とは

    この阿呆が!  」


 

 腕が消えた。


 指が宙を舞っている。


 親指以外の四本の指が宙で更に肉片へと変化していく。


 私の一分なのになのに何処か他人事のように見惚れてしまっていた。

 片腕を見つめる……当然のように失くなっている。

 次に襲いかかるのは相応の痛み—— 


「ぐ!?……あぁああ!!」

「叫んだところで事態が変わるか?身の程を知らぬ貴様は最早救いようが無い。己が生を手放す事で謝罪とせい」


 ブレドリパさんがゆっくりと歩いてくる。

 死ぬ  死ぬ  死ぬ  


 殺される  殺される  殺される……



「ヒッ ヒィ……ゆ、許して……許してください」

「……」




 美しい納刀音が響いた。

 しばらく目を瞑っていたけど……目を開けるのが怖かった。目を開けたら……私の全身は失くなっているのではないかと思ってしまっていた。



「ミズーリちゃん、眠いのならもう帰るぞ」

「……え?」



 優しい声に釣られて目を開けると


「私の腕が……ある」

「ワシが意識して女性を傷付けるなど有り得ん。ワシは女性を傷つけないを生き甲斐にしとるからのう。先程のは幻覚とでも思っとけどばよいぞ」


 幻覚?……そんな筈は無い。痛みは確かにあったし私の腕は喪失していた。あれが幻だったのなら……


 でもシグ様の爪とまで呼ばれている幻魔刀ならあり得るのだろうか?


 それとも、いや、やっぱりミリアムと言う女性を幻魔刀で斬って治した技、あれと同じ事をされたのだろうか?


「……ミリアムって人は女性ではないのですか?」

「女性じゃったかも知れんがあいつの歪な腕を見とったら殺意しか沸かんかったわい。たまにある例外じゃな……あ、因みにミズーリちゃんが助けた小便漏らしのクソガキも例外じゃ」



 ブレドリパさんが南の方角へと目を向けた。殺意とも取れない異様な空気があたりを包んでいく。



「自分が弱くなった言い訳をせんのは結構じゃ。しかし弱者は弱者らしく身の程を弁えておけ」



「あ、あの……誰に言ってるんですか?」

「独り言じゃわい。さて、戻って飯でも食うかの」











 

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