ご注文はいかがなされますか?
牢屋の鉄格子が、冷たい光を反射する薄暗い部屋。女剣士のエレナは、壁に寄りかかり、睨みつけていた。彼女は銀色の長髪を後ろで束ね、傷だらけの革鎧が騎士の誇りを物語る。敵軍の捕虜として、数週間前にここに放り込まれた。尋問官の男――瘦せた中年男が、いつものように部屋に入ってきた。エレナは背筋を伸ばし、冷徹な視線を投げかける。騎士の誇りが、彼女の声を鋼のようにする。
「何も話すことは無い!」
尋問官はニヤリと笑い、メモ帳を広げた。エレナの冷ややかな目が、彼を睨みつける。
「今日の晩御飯のリクエストは何かありますか!?」
エレナは顔を背け、声を低く抑えた。鉄格子の向こうの闇が、彼女の影を長く伸ばす。
「食事の話など無駄だ。私から何も聞き出せはしない。」
「カレーでいいですか!?」
エレナの目が、一瞬だけ揺らぐ。心の奥で、懐かしいスパイスの香りがよぎるが、すぐに騎士の仮面を被る。
「...食事の話で私が情報を漏らすと思っているのか?甘いぞ。」
「答えないならカレーにしますね!」
エレナは顔を背け、小声で呟いた。
「好きにすれば...。私は決して口を割らないがな。」
「甘口と、中辛と、辛口のどれがいいですか!?」
エレナは目を逸らしたまま、声がわずかに震えた。牢屋の湿った空気が、喉を乾かす。
「中辛で...。だが、そんなことで私が...」
「やーい、答えた、バーカバーカ。口を割った〜」
エレナの顔が、真っ赤に染まった。
「く...口を割ったわけではない!ただの...食事の好みを言っただけだ!」
「屁理屈女騎士〜。屁理屈を言うのが騎士の誇りなんですかねぇ〜?」
エレナは拳を握りしめ、声を震わせた。鉄格子に、額を押しつける。
「黙れ!私は...私は決して情報を漏らすような真似は...!」
「何も口を割らないんだな!?」
エレナは歯を食いしばり、目を閉じた。牢屋の壁が、冷たく頰に触れる。
「ふん、言葉巧みに誘導しようとしても無駄だ。私は教育されている。」
「では、食事の話を続けます!!今日の晩御飯は中辛のカレーです。トッピングはどうしますか?トッピングなしと、カツカレーと、ハンバーグの3種類があります!!」
エレナは困惑した表情を浮かべ、言葉を探した。小声で、つぶやく。
「カツ...カレーで。いや、トッピングは...不要だ...」
「どっちなんですか!?カツカレーか、トッピングなしかわかりません!!」
エレナは怒りと恥ずかしさで顔を真っ赤にし、声を荒げた。
「カ...カツカレーだ!これで満足か!?」
「やーい、バーカバーカ。何が教育だ〜」
エレナは拳を机に叩きつけ、震える声で叫んだ。部屋の空気が、振動する。




