表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
隣の席のホムラさん  作者: えのしぃ
4/5

響け!ソプラノボイス 夜の学校探検で一番怖かった事

お久しぶりです!執筆再開します!

ブックマークしてくれた方が4人も!

ありがとうございます!

「あれ?鍵開いてるよ。」

「これはラッキーだね。」

 先生方も夜遅くまで仕事をしていて、注意力が無くなってしまっているのか、職員室の鍵を開けたまま帰ってしまったようだ。

「ねえホムラさん、もし普通に鍵が開いてなかったらどうするつもりだったの?」

「え?ピッキングしようとしてた。」

 ホムラがポケットから針金の様な物を取り出して、笑顔でマリコに見せる。

「スパイか!」


 扉を開けて、職員室に侵入する二人。

「ホムラさん、それでさ、職員室で何するのー?」

 マリコはもう完全にノリノリである。

 ホムラが答える。

「来週の学力テストの答えとか、見たくない?」

「見たい見たい!」

 何時間か前のマリコなら「それは流石にダメだよー。」などと答えていたかも知れないが、今は違う。彼女はホムラと『ちょっと悪い事をしちゃう』事が、楽しくて仕方がなくなってしまっているのだ。

 学力テストの答えを見たいと答えたのは勿論、良い点を取りたいからでは無い。ただホムラと二人で『ちょっと悪い事をする』時間を、ただただ楽しみたいだけなのであった。


 『来週の配布物』と書いてある引き出しの中に、学力テストの答えが入っていた。マリコがそれを取り出し、眺める。

「へぇー国語からは芥川龍之介の『トロッコ』が出るんだってー!昔一回だけ読んだ事ある気がする!ってアレ?ホムラさん?」

 マリコが解答を見て楽しんでいる中、ホムラは既に他の棚や机を漁っていた。

「ホムラさん、他にも何かあるの?」

「いや、特に何かを探してるってわけじゃないんだけど、面白いもの無いかなーって。」

「そういう事ね!私も一緒にやる!」

 マリコはそう言うと、今ホムラが漁っている女性教師の机の隣の、滅茶苦茶散らかっている机を漁り始める。


「わあああああああ!!」

 ホムラが突然大声を出す。

「ひょえええええ!?なに!?」

 その声に驚き、ぴょんと跳ねてしまうマリコ。

 それを見て、微笑むホムラ。

「いや、何でもないよー。マリコちゃんがビックリする顔、見たかっただけ。」

「もうーホムラさんったらー!」


 机漁りを再開する二人。

「ええええええええい!!」

 今度はマリコが叫ぶ。

「ひえん!どうしたのマリコちゃん!?」

 驚くホムラを見て、マリコはガッツポーズを取る。

「えへへーさっきのお返しだよーん。」

 それを聞いたホムラは、ムっとして答える。

「ウチにそんな事して良いと思ってるの?」

 何が嫌だったのか、ホムラは不機嫌そうな表情でマリコに向かって普段より低いトーンで話す。

 それを見たマリコの表情が固まる。

「いやーだってね......驚かされたからさ......逆にさ......」

 言葉が出なくなるマリコ。

 それを見て、再び笑顔になるホムラ。

「うふふ!やっぱりマリコちゃん可愛い!」

「へ?」

 不機嫌になったと思ったら、突然笑顔になって可愛いだなんて......マリコは困惑している。

 困惑する姿を見て、ホムラが話す。

「お返しのお返し、だよーん。」

「なーんだ、ビックリしたー。」

 二人向き合って微笑み合う。


「キイイイイイイイイイイ!」

 またまた、大声が職員室に響く。

「もう引っかからないよ!ホムラさん!」

 流石に二回も驚かされたら耐性が付くぞ!と言うような表情でホムラに話すマリコ。

「え、待って、今のウチじゃないよ。」

 青ざめた表情、少し怯えた声でホムラが答える。彼女の身体は少し震えていた。

 その姿を見て、ニコニコするマリコ。

「いくら引っ掛からなかったからってそんなショッキングな表情しなくてもいいんだよー?」

 ドッキリ回避大成功!とテロップが下に出てきても違和感がない程にドヤ顔で腰に手を当てる。

 それでもホムラの表情は変わらなかった。

「いや......本当に違うって......怖くなって来た......マリコちゃん、もう帰ろう?」

 かなり真剣な表情で訴えかけるホムラ。

「もう良いってばぁー!認めちゃいなよー!って......もしかして本当に本当?」

 彼女の真剣な顔を見て、マリコが問いかける。

「うん、本当にウチじゃないんだってば。」

 二人は向き合う。その時、再び声が聞こえてくる。

「キイイイイイイイイイイ!」

 向き合っていたので、お互いがお互い、変な声を出したり音を鳴らしたりしていないと言う事を確信した。

「マリコちゃん、逃げよう?」

「う、うん。」

 職員室から抜け出す。

「なになになになに!?怖いんだけど!」

 ホムラは謎の声に混乱している。

「私も分かんないよ!走って逃げよ!」

 昇降口で靴を履き替え、学校の外へと飛び出す二人。


 全力で走って逃げ、学校から何百メートルか離れた所にある駅前のコンビニの近くまでやって来た二人。ここは夜でも割と人が多く、安心できる。

「ハァハァ......ここまで来れば大丈夫かな?」

 マリコが呼吸を整えながら話す。

「多分、大丈夫......だと思うよ」

 ホムラが答える。

「走ったら喉乾いちゃったね。ここで飲み物とか買おっか!そうだ、ホムラさんさっき甘い物食べたいって言ってたよね!一緒にシュークリーム買おー!」

 謎の声の事は忘れようと、明るく振る舞うマリコ。

 二人はコンビニの中へと入って行く。

 

 この後二人が、あの声の正体は職員室端の古びた窓が風で軋む音だったと言う事に、気づく事は無かった。

夜の学校探検 おしまい!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ