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レイジとフェルの母の日

照れくさくても、ちゃんとお礼を伝えましょう

 地球での母は……なんというか、凄まじかった。優しい母か? と聞かれれば、間違いなく違うと答えるだろう。では、厳しい母親か? と聞かれれば、それもまた違う。じゃあ、どんな母親だ? と聞かれれば、うーん…………言葉はキツく、大雑把な所もあったけど、悪い親では無かった。

 そう……今日は5月で2回目の日曜日、地球では母の日と呼ばれる日だ。どうやら、母の日はシェーンにもあるようで、レオはヴァルトの森に帰ったし、珍しくネルガも墓参りに休暇を取った。他の従者も次々に実家へと戻り……屋敷には俺とフェルくらいしか残っていない。


「1日くらいなら大丈夫かと思い、休暇を出してしまいましたが……」


「まさか、フェル以外の全員が休暇を取るなんてなぁ……」


 ピグマから奪った従者は、自分の家や親が分かっている人が多いんだな。身元がしっかり分かっていると言う事は、結構高いんじゃないか? というか……ネルガという元英雄が、何でピグマの従者なんてやってたんだ? まあ……そのうち本人に聞けば良いか。

 従者が全員休暇を取っているのに、俺だけ働くのも嫌だなぁ……うん、今日は俺も休みにしようかな。折角フェルとのんびりできそうな機会だし、日曜日は休む曜日なのはシェーンでも変わらないしね!


「今日は俺もフェルも休みにしよう」


「かしこまりました」


 休みなら何しようかな……朝ご飯食べたばっかだから、昼飯食べる気分でも無いし。フェルを連れて商店街でも散歩しようか? それとも、折角だから狩りでもやってみるか?

 こういう時に、娯楽が少ないのはハインリヒの……というか、シェーンの不便な所だよな。俺がシェーンでの娯楽を知らないだけなのかもしれないけど。カジノとかはあるらしいんだけど、レオが許してくれなかった。まあ、ギャンブルは良くないからね…………やらないようにしておこう。


「レイジ様、少々よろしいでしょうか?」


「どうかしたのか?」


「…………本日は母の日、というのですよね?」


「起源は知らないけど、5月の2回目の火曜日にはいつも母親に何かプレゼントしてたな。カーネーションっていう赤い花を渡す事が多い筈」


「いえ、どういう日か知りたいのではなく……」


「ん?」


「私はシェーン様を母親と認識して良いのでしょうか?」


 フェルにとっての母親か……一応、産みだしてくれた存在ではあるし、そういう認識でも良いのかもしれない。だけれども、そこに親と子の絆があるか? と言われれば、話は別だ。フェルはシェーンから産みだされた……いや、造り出された人間に限りなく近い存在だ。フェルは生まれた時から、大人だった……それに俺が女神に出した条件のせいで、産まれた時から護る為の存在だった。だからこそ、フェルには母親……いや、護ってくれる存在が分からないんだろう。


「うーん、それは答えるのが難しいな……フェルはどう思う?」


「概ね、レイジ様の予想通りです。護ってくれる存在というのが……イマイチ、ピンとこないんです」


 むっ……何か嫌な予感がする。日付の事で真面目に考え事をしていると、いつもとんでもない事に巻き込まれている気がする。具体的には正月とかバレンタインとか……という事はこの母の日も……?


「ですので、レイジ様……」


「…………」


「何も言わずに、この魔法を受けてください」


 フェルの人差し指から見た事の無い桃色の魔力が放たれる。動き出す間もなく俺の体を包み込み、ブルブルと体が震えだした。

 こ、これは…………一体!?



 フェルの魔法で意識を失っていたのか……? ベッドから体を起こそうとして、違和感を覚える。ベッドの感触がいつもよりも鮮明に伝わるのだ。義手だった時は柔らかいぐらいしか感じないが、布の滑らかな感触を感じる。体を起こしきり、自分の手を見て……自分の身に何が起こっているのか、何となく察した。

 俺の両手両足が生身の肉体に戻っている…………ただし、見て分かる位に体は縮んでいるが。原因はフェルのあの魔法だろう。思考は俺のまま……つまり、15歳だな。そして体の方は……うーん、自分で起き上がるし、座れるから……赤ん坊では無いだろうけど。


「お目覚めですか?」


「全く……こんな子供の姿にしてどうするつもりだ?」


「母親の気分を味わってみたくて……」


 母親に感謝するんじゃなくて、お前が母親になるのかよ……ああ、でも小さい子っておままごとでお母さん役とかやりたがるよな。やっぱり女性にとって、無意識的に母親になる事の憧れがあるのだろうか……?


「なるほど……のわっ!?」


 ベッドから降りようとすると、足が届かずに転げ落ちそうになる。床にぶつかる前にフェルが抱えてくれたから怪我をせずに済んだが……そのままフェルに抱っこされてしまう。

 普通に生きていたら、体が縮むなんて事は無いからな……15歳の体に慣れてる意識の俺じゃ、今の体で動くのは怪我するかもしれない。


「4歳の姿では動き辛そうですね。計算通りです」


「あの……主人に攻撃じゃないといえ、いきなり魔法をぶつけてきた事を反省してくれるかな?」


「申し訳ございません……」


 久しぶりに生身の手足なのは嬉しいけど、これじゃ1人で遊びに行けないな……今日は大人しくフェルにお世話してもらうか。まあ、つまり……普段と変わらないって事だよな。

 普段、車椅子なのがフェルの抱っこに変わったくらい……滅茶苦茶恥ずかしいけどね!?


「恥ずかしがらずに、甘えてください。何となく、母親の気分というものが分かってきました」


 フェルは俺の顔を覗き込みながら、優しい表情で鼻歌を歌っている。まあ……本来とは違う意味合いだけど、こういう母の日というのもありなのかもしれない。それに……


「フェルには……いつも感謝してるしな」


 俺もシェーンには母親と呼べる存在が居ないからな……今日1日母親の代わりになってくれるんだったら、改めて感謝を伝える機会になる。それが子供の姿で甘えると言う事なら、それに付き合おう……とても恥ずかしいけど。

 どうせいつも顔を埋めている胸なんだ。遠慮せず、頭をフェルの胸に擦りつける。


「フェル……母さん…………とかな?」


「レイジ様ッ!」


「ちょっ!? フェル、子供の姿あああああああああっ!?」

当初はフェルが幼児化、レイジが女体化の予定でした。

今年は踏みとどまれました()


次回は6月に更新します

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