3話 誰かを助けて、助かること その3
とある村で、事件に巻き込まれている山医者「ヤクスリ」。この村はやはり普通ではなかった。彼はミミから明かされるこの事件の最大の謎、リキについて知る。一通りの情報を集め終わり、いよいよ彼は村長の元へと足を運ぶ。
ー3ー
夕方になった。いよいよである。俺はミミとともに村長の元へと向かった。村長は昨日同様そこにいた。
「おやおや、旅人。なんの御用かな?」
悠長に構えた彼はそう言った。
「あんた、自分で自分の首絞めてどうすんだよ。村のやつはみんな困ってる。それに、」
ミミのあたまに手をのせる。彼はふりかえらず、しゃんとしていた。
「こいつもな」
「ヤクスリと言ったか?何が言いたい?」
この老いぼれはまだ白を切るつもりか。全てわかったんだよ。
「事は全て彼から聞きました。この村の今について。まあ別に彼が悪いわけじゃない。どちらかといえば聞き出したのは俺の方さ。気に障ると言うなら出て行く次第さ。でもな、俺はこの村で、あんたに許された。悪いところを治療するのが医者だ。人だろうと、村だろうと、俺は仕事はさせてもらうぜ」
俺はそう言うと、肩にのっているヘビをミミの身体に投げた。ヘビは冬の寒さの残る風にのって蛇行し、ミミの身体にまとわりついた。ミミの眼には次第に俺を映さなくなっていった。先程まで立っていたヤクスリは、強靭な肉体を持った謎のバケモノに変わっていった。そしてその目に、村長の後ろの刀から怪しげな気が立ち昇っていた。後ろを振り返ると、怪しげな生物たちがたくさんウヨウヨうごめいて、村全体が嫌な雰囲気だった。
そして、ミミの中でこの男とあった一連の出来事が全てわかった。この男は村に入ってからずっと苦しそうな顔をしていた。まるで汚いものの中にいるかのように。そして村長と初めて会った時も妙な感じを出す人だと思った。この人の目にはこんなに恐ろしい世界が広がっているのかと、勝手に理解した。するとヤクスリが言った。
「どうだい?リキ君はどこにいると思う?」
村長は少し動揺しながらも、答える。村長はミミを見る。彼の目は、濁ってはいなく、真実を捉えいていた。
「リキならとうの昔にわしが殺した!」
「さあ、村長さん失礼するぜ」
俺はずかずかと彼の後ろにある刀に向かう。村長はポカンとしている。刀を手に取った。
行くぜ。
ヤクスリはゆっくりと刀を鞘から引き抜いた。とともに真っ黒なウヨウヨしたものが不気味な笑い声とともにみるみる広がっていく。
アハハハハ、アハハハハ、アハハハハ…
真っ暗な中にいる。風も寒さもない。見るとミミの身体の周りにはヘビが、びっしり縛っていた。悲鳴をあげそうになると前の方に一体のバケモノが立っていた。
「おい、大丈夫か」
信じられないが、ミミはなんとなくこの者をヤクスリだとわかった。彼がその後「ああ、俺はヤクスリだ。変な風に見えてるよな」と言ってくれたが。
「見えるか?」
えっと言いいながら指差す方向を見てみると、遠いところで一人の少年が立っていた。顔を見て、すぐにわかった。
「…リキ…」
「そうだ。しかし彼はもうすでにこの世に原型をとどめていなかった。完全なレイだ。人間に戻る能力はない。お前は完全な人間。俺は曖昧なもの。そして遠くにいる彼はもう完全なレイ。バケモノだ。こうなるともう生かしているだけで人々に迷惑をかけてる。極端なことを言えば人々を殺す。俺は力を与えて彼を完全に成仏させる。なにか、言い残すことはないか?………なあ、ミミの『お嬢ちゃん』」
彼女は何も言わずうつむいている。おいおい、時間はないんだぜ。ここに居続ければお前もおかしくなるぞ。ヘビも人には優しくないからな。彼女はヘビを見た。彼女は口を開いた。俺は力を奮った。
気がつくと空があった。真っ赤な空。息をすると土の匂いがした。ミミは起き上がると隣には、ヤクスリがいた手には赤く綺麗な水がある。聞けばリキの一部だった水らしい。お代はこれでいいと言った。図々しい奴だ。気がつくと、ミミの母が村を取り仕切っている。これがレイのなす記憶操作…。てくてくとミミは母の元へ歩いて行った。ヤクスリも一安心して少し笑っていた。ミミは母の元に行く。
「母さん。何やってるんだよ。村長は母さんがやることないだろう」
「あら。どこの子かしら?私はもともと村長よ。子供は一人だけで、あの子はもうこの村にはいないはずだけど…」
ヤクスリは目を見張った。
すすり泣く声がまた夜を覆った。ヤクスリ自身もこれは想定外だった。よく考えればわかることだった。村長自身呪われていた。だから村長自体がなかったことになったことで、あの制度が消えた。ミミは隠し子だった。だから、女でも使える名前にしたのだろう。彼が女性なのはすぐにわかった。彼の体が当たったとき、か弱さが感じられた。胸にも違和感があった。もう時期ばれていただろう。しかし、ミミの存在はなかったことになった。ヤクスリは、自分の存在もそうなってしまわないか怖かった。自分もレイである。その存在を切り離した時の影響は想像以上である。ふと気がつくとミミが尋ねる。
「私は、もう私を知るものがいなくなった。私はこの村にいても、邪魔者だし、私自身が辛い。ヤクスリは旅人だと聞く。どうか俺を…私を連れて行ってはもらえないだろうか」
翌朝。この村は嘘のように活気を取り戻していた。そうか、リキ。これがお前が呪ってでも守りたかった村か、と思わせた。ヘビを見れば、尻尾が少し実体化したが、まだ尻尾は奥の方へ伸びている。まだまだ、完成はしなさそうだ。ミミの母が言う。
「本当に短い間でしたがありがとうございました。またいらしてください。」
「いえいえこちらこそ。ありがとうございました。ところで村長さん…」
また山道である。また何日かは村探しの旅である。ミミの母は彼女をもう覚えていなかった。ただ、『何処かでお会いしたような顔』だそうだ。テテ。ミミの実の姉である。彼女の元に次の手がかりがありそうだ。草を踏む。後ろから違うメロディーを流し、俺の足音と混ぜる様に、ピョコピョコミミがついてきている。しばらくは彼女と一緒だ。静かに俺たちは次の目的地、テテの元へ行かなければ。春の風を感じながら、木々を踏みながら、俺はミミのリキに対する最後の言葉を思い出す。
「私、こんな制度さえなかったら、あなたと結婚したかった。好きだよ、リキ!向こう側でまた会おうね」
彼は、人の頃の意識はないはずなのに、うっすら笑った気がした。興味深い。
はい、いかがでしょうか。花恋音です。「誰かを助けて、助かること」は、これにて終了でございます。続編は…今は考えてません。ごめんなさい。さあ、ちょうど切りよく今年の投稿は終了させていただきます。来年もこの調子で続けられたらいいな〜という希望的観測のもと、がんばっていくつもりです。ご意見、ご感想はこのページまたはTwitter(@karen_7110)までぜひ、お願いします。来年もこの調子であげられれば嬉しいですが…賞も取りたいですね〜。
みなさん、良いお年を。
12/10 そろそろべんきょうしないと。花恋音




