表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メカヲタ転生して守護竜になる ~兵器の性能差が勝敗を分かつ絶対条件だと教えてやる!~新装版!  作者: ななよん
幼生体編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/77

第零話 ”プロローグ”

あの女のことを、わたくしは生涯忘れないだろう。忘れられるものか。


 初めて会ったのは、よく晴れた昼だった。亡国の王女が傭兵として雇われに来た。そう聞かされて広間に入ったわたくしが見たのは、当然のように紅茶を嗜み、ヴェルディを従者のごとく従えたあの女だった。


 黒髪に一筋、白銀の流れ。棘を思わせる暗色の冠。


 あの女は、わたくしの契約者たるマキナ様に向かって、こう言い放った。


「気に入った。我の身を捧げてやる。だから我にも、鎧を作れ」


 はしたない、と思った。捧げる、などと。


 わたくしが声を上げても、あの女は一瞥をくれたきりだった。


「小娘が契約者か。今は控えておれ」


 小娘。このわたくしを。あまつさえあの女は、守護竜たるマキナ様に手合わせを挑んだのだ。さえずるな、と、わたくしを吐き捨てて。


 だというのに――マキナ様は。


「いいでしょう。お相手させて頂きましょう」


 契約者たるわたくしが小馬鹿にされたと言うのに、もの凄く楽しそう。


  ◇


 ドラグネストの試験場で、二人は向かい合った。わたくしの頭は煮えたまま、それでも見ないわけにはいかなかった。


「レディファーストです。お先にどうぞ」


 マキナ様がそう譲ると、あの女は唇の端を吊り上げた。


「いいな、貴様。私に勝てたなら――貴様の女になってやろう!」


 またしてもふしだらな事を言い放つと、同時に詠唱が奔った。


 速い。速いだけではなかった。言ノ葉の連なりに、淀みが一つもない。そして、その詠唱が二つに割れた。主旋律が奔り、わずかに遅れて、もう一つの声がそれを追う。一人でありながら、まるで二重唱。


 ――後に知ったことだが、マキナ様はあれを 遅延詠唱重奏ディレイスペルオーバー という技術だそうだ。一人の詠い手が、主となる声とそれに和する声を、同時に編む。片方を遅らせ、上へ重ねる。


 誰にでも出来る技じゃない。あの女、とんでもない高位詠唱者(スペルディーバ)――それも世界屈指の。


 美しい、と悔しいけれど思ってしまった。


 放射状に魔法陣が花開き、赤い閃光が束になってマキナ様へ伸びる。同時にあの女の身が沈んだ。遠くを塞ぐ光と、近くを断つ剣。遠近を同時に閉じる攻め。わたくしは思わず、立ち上がっていた。


 歌いながら、剣まで奏でるなんて。魔法剣士(デュアル)。あの女、そういう化け物だ。


 ――けれど。


 爆風の中心で、マキナ様は片手の杖であの女の剣を受け止めていた。空いた手で、その腰を抱き寄せて。


「これで――貴方は、私のモノですね」


 あの女の啖呵たんかが、そっくり返された。あの女の手から剣が落ち、切先きっさきが土に突き刺さる。


 その距離感は腹立たしいが、勝負はついた。ついたのだ。


 なのに――あの女、マキナ様にそっと抱き着き、よりにもよって口づけをしやがりましたわ!


  ◇


 見学席で、リーディア様が真っ赤になっていた。わたくしはといえば、別の意味で頭が沸騰していた。気づけば席を蹴って、走り出していた。


「――なにやってんだ、あの女ぁあ!」


 声が、試験場に響き渡った。レイヴンズの誰かが噴き出したのが分かった。構うものか。


  ◇


 ……ああ、思い出しただけで腹が立つ。


 あの女が「我が主」とかしずくこの(マキナ)が、ほんの数年前まで「あぎゃ」としか鳴けぬ、小さなワンコだったことなど。あの女は知りもしないのだ。寂しい修練場でたった一人、まだ頼りない前足で、途方もない重さの鉄を叩き続けていた、あの日々を。わたくしが甲斐甲斐しくお世話したのだ。


 その話をするには、少しばかり時計を戻さねばならない。


 言葉も持たなかった、あのワンコの日々へ。


(第一話へつづく)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ