第70話 邪気
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シュウウウ……
シンの体から黒い煙が出始めた。
「出よったな…」
「……」
「すごい…」
「改めて… あんな邪気見たことない…」
「……」
「何だか… 底の見えない深淵のよう…」
「あの闇に飲まれたら…」
「一生こっちの世界には戻れない気がするよ…」
シュウウウ……
邪気はシンと該伯を包み込んだ。
「……」
「これはすごい…」
「こんな邪気に取りつかれて…」
「どうして、こ奴の精神は壊れてないんじゃ…?」
「……」
「該伯さん…」
「おー… シン…」
何とか話すことが出来そうじゃな…
「俺は今どうなってますか…?」
「今、わしもろとも邪気に飲まれたところじゃ…」
「全く… これは骨が折れるわい…」
「すみません… ご迷惑をおかけしまして…」
「ふっ… まぁ良いわ…」
「久しぶりに本気を出すかの…」
「該伯流… 気術…」
「吸!!!!」
該伯は思い切り息を吸い、邪気を体内に吸収し始めた。
何じゃ… この違和感は…
こんな濃い邪気なのに、わしの体の中にスルスル入ってくる…
一体どういう…
「!?」
ゲホッ… ゲホッ…
「該伯さん!! 大丈夫ですか!?」
「あー… むせただけじゃ…」
「……」
「誰だ…」
「こっ… この声は…」
「ディアボロス・ブラック!?」
「シンよ… わしにもはっきり聞こえた…」
「ん…?」
「2人いるのか…?」
「ブラックよ…」
「わしは該伯…」
「気術を扱う医者をしておる…」
「わしの弟子が、お主の気によって苦しんでおる…」
「じゃから… わしの手で祓わせてもらうぞ…」
「気術医該伯…」
「確か、名と…」
「その声はどこかで…?」
「……」
「そりゃそうじゃ…」
「わしは一度お主の邪気を払おうとしたことがある…」
「わしの妻に憑いたお主の邪気を!!」
「……」
「あー… 思い出した…」
「それで… 汝の細君はどうなった…?」
「我の邪気とやらが無くなって元気になったのか…?」
「……」
「妻は死んだ…」
「わしが非力だったからじゃ…」
「該伯さん…」
該伯は体を震わせ拳を強く握った。
「じゃが… 今は違う!!」
「今回は負けない…」
「負けるわけにはいかない!!」
「わしを舐めるなよ…」
「随分と威勢のいいことだ…」
「該伯流… 気術…」
「吸!!!!」
該伯はまた、思い切り息を吸い、邪気を体内に吸収し始めた。
「……」
「汝よ…」
「!?」
おっ… 俺に言ってるのか…?
「また… 性懲りもなく…」
「我に歯向かうとは…」
「命まで奪うとしようか…」
「この言葉の意味が理解できなかったのか…?」
ドキッ!!
「シン!! 平常心を保て!!」
「わっ… わかってます!!」
わかっているけど…
「やっぱり… この声を聞くと…」
「心と体の震えが止まらない…」
いかん… 治療以前に…
本人の精神が限界を迎え始めている…
「じゃが… ここで治療をやめるわけには…」
「シン!! 耐えるんじゃ!!」
「わしがお前を救ってやる!!」
「ハァ… ハァ…」
「わかりました… 頑張ります…」
「くっそー!! 邪気が邪魔で、中で何が起こっているのかわからないよ!!」
「マックス… ともかく私たちにできることは信じること…」
「大丈夫!! 2人を信じてここから見守ろう…」
「そうだね…(シン… 頑張って…)」
「よし… 少しずつじゃが…」
「治療は進んでいっておる…」
「後は… 本当に…」
「本人の精神次第…」
「ギリギリの状態じゃが…」
「耐えるんじゃ… シン…」
「……」
何だか… 心が少し軽くなった気がする…
きっと該伯さんが頑張ってくれてるんだ…
「……」
この邪気が無くなったら…
俺の身長は戻るんだろうか…?
俺の能力は戻るんだろうか…?
もし… 何もかも前と同じになるんだったら…
今度は自分の為じゃなくて…
誰か人の為に“ロックオン”をしていこう…
俺の力があれば…
きっと… 沢山の人の役に立つはず…
きっと… 悪い奴をいっぱい懲らしめられるはず…
そうだ… 今度は寄付団体を設立しよう…
多額の寄付をして、沢山の人を助けよう…
やってやるぞ… ジョルジュ・シンは本当のヒーローとして蘇るんだ!!
「よし…」
シン達を包み込んでいた、邪気は該伯の気術によってかなり薄くなっていった。
「かなり、邪気を吸収することが出来た…」
「シンの体調もかなりよさそうだし…」
「これはいけるぞ!!」
「凛さん!! 邪気がかなり薄くなっているよ!!」
「うん!! 治療が上手くいってるんだ!!」
「行け―!! じっちゃん!!」
その後も順調に該伯は邪気を吸い込んでいった。
「よし… もうひと頑張り…」
「幸よ…」
「あの日からずっと… わしは…」
「自分の非力さを呪っていた…」
「あの時、わしに力があれば… 「お前を救えたかもしれん」とずっと思っていた。
「じゃが… やっと…」
「これで報われるかもしれん…」
フゥーッ…
該伯は最後の一息で邪気を全て吸い込んだ。
「該伯流気術…」
「張!!!!」
「ん!!」
「……」
「よし… 結界を張れた…」
「それに… 邪気の漏れもない…」
「治療は成功じゃ…」
「シン!!」
「該伯さん… ありがとうございます…」
「やった!! じっちゃん達成功したんだ!!」
「早く!! 2人のもとへ行こう!!」
凛達は該伯達のもとへ走って駆け寄った。
「ふぅ… 一時はどうなることかと…」
「ん!?」
「凛達!! 来るな!!」
「え…?」
「シンも… もし… 体が動くなら逃げろ…」
「該伯さん!! どうしたんですか!?」
第70話 FIN




