第52話 恩返し
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「ハハハ!! 俺たちを地獄に落とすだと!?」
「笑わせるぜ!!」
「あんた俺たち知らないのか…?」
「ザンとゲキってちっとは名の知れた剣客なんだけどな…」
「……」
「知らんな… 見たところ…」
「薄汚い子悪党かと思ったぞ…」
イラッ…
「おい!! ザン!!」
「お前はそのまま、女を人質に取ってろ!!」
「俺は、こいつを…」
ゲキという男は、老人に刀を向けた。
「殺す!!!!」
「おい!! じいさん!!」
「俺たちも一緒に闘うぜ!!」
「……」
ニッ……
老人はシン達を向いて、微笑んだ…
「手出しは無用じゃよ…」
「それよりも、店主さんの手当てをしてやってくれ…」
「……」
「わっ… わかった…」
シンとマックスは、店主を座敷に寝かせ、店の中で応急手当を始めた。
「おいおい!! じいさんいいのかよ!!」
「言っとくが、この刀すごく切れるんだぜ…」
シュッ……
ゲキは刀を振り、店の机を切った。
「つっ… 机が真っ二つに…」
「こんなので切られたらひとたまりも…」
「ハハハ!! どうだすごいだろ!!」
「何せ、あの有名な剣豪“鬼道一閃”が愛した名刀“紅一文字”だって言うもんだからな!!」
「ほほう… “紅一文字”ね…」
「そんなもの…」
老人は机に置いてあった、団子の串を手に取った。
「これで十分じゃな…」
「ったく…」
「何度、俺をイラつかせたら気が済むんだ!!」
「やっ… やめて!!!!」
ゲキは大きく振りかぶり、老人に刀を振った。
シュッ……
「……」
「うっ… 嘘…」
「団子の串で刀を止めてる……」
「何だと!? ビクともしないぞ!!」
「フフフ… どうした… 紅一文字が泣いておるぞ…」
「くっ… くそっ!!」
「これでどうだ!!!!」
ゲキは一歩後ろに下がり、今度は飛び掛かって刀を振った。
キン!!!!
ゲキの一振りは、またも老人によって簡単に止められた。
「すっ… すごい…」
「ギギギ……」
「ふん!!!!」
ぐあっ…
ゲキは、老人とのつばぜり合いに負け、飛ばされ、地面に頭をぶつけた。
「おい!! ゲキ!!」
「何してんだ!!」
「いってて…」
「なんだこのじじい!?」
「半端じゃなく強い!!」
「フフフ… わしが強いんじゃなくて…」
「おぬしらが弱すぎるんじゃ…」
「何っ!?」
「こっちには、人質がいるんだぞ!!」
「それ以上俺たちをイラつかせてみろ!!」
「この女がどうなるかわかってんのか!!」
「……」
「はぁ…」
「情けない…」
「人質を取らないと、勝てないなんて…」
「そんな、絵にかいたような悪党、中々おらんぞ…」
「何だと!!」
「もういい!! ザン!!」
「女を殺せ!!」
「うぉぉぉぉ!!!!」
ザンは刀の刃先を女性の首に近づけ、切りつけようとした。
ガッ……
老人は、ザンの刀を持っている右手首を抑えた。
「何っ!?」
「一瞬でここまで来たのか!?」
「うん!? どうした!?」
「さっきからピクリとも、腕が動いていないが…?」
キン……
ザンは刀を落とした。
「くそっ!!」
「ゲキ!!!!」
「こいつを切れ!!」
ザンは両腕で女性の首を固定した。
「動くなよじじい!! 動けばこの女の首をへし折るぞ!!!!」
「……」
「まだこりんか…」
「しゃらくせぇ!!!!」
ゲキは刀を振りかぶり老人に切りかかった。
「ふぅ……」
キン……
ポロッ……
「えっ… 嘘だろ…」
「紅一文字が折られた…」
「……」
「お主…」
「刀をいつ手入れした…?」
「えっ…」
「手に入れてから、一度も行っていないが…」
「そうか…」
「それじゃ、わしは斬れん…」
「出直してこい…」
「何だと…」
「減らず口を!!」
ゲキはザンが落とした刀を拾い、老人に刃を向けた。
「ハァ… ハァ…」
「……」
「いいか、ザン!!」
「俺は、もう一度このじじいに斬りかかる!!」
「それでも、こいつが生きていたら…」
「女の首をへし折れ!!!!」
「わかった…」
「いくぞじじい!!」
ゲキは、刀を持ち老人に斬りかかった。
「はぁ…」
老人はゲキの方にゆっくり歩き出した。
シュッ……
バタン……
老人が通り過ぎたとき、ゲキは倒れ気絶した。
「ゲキ!!!!」
「仕方ないこの女を殺…」
「!?」
老人は一瞬でザンの前に立ち、睨み付けた。
「おい… 童…」
「5秒やる…」
「5秒経つ前に… その手を離して、お友達と一緒にここから消えろ…」
「5…」
なっ… 何なんだ!! この威圧感は!?
「4…」
ダメだ… 腕が震えてきた…
「3…」
ちっ… 力が入らない…
「2…」
俺はゲキ様だぞ…
「1…」
「すっ… すみませんでした!!!!」
ゲキは女性を解放し、ザンを担ぎ上げ、ポケットをあさりだした。
「こっ… これ…」
「お食事代です!!」
「ハハハ!!」
「わかればいいんじゃよ!!」
「それと、最後に一つ…」
「紅一文字じゃなくて、紅一文字じゃ…」
「一閃殿が愛した紅殿から名をとった刀であって…」
「多分偽物を掴まされたんじゃろ…」
「お友達にはもっと刀について勉強するように言っておいてくれ!!」
「あと…」
「ついでに、わしの分も払っといてくれ!!」
「はっ… はい!!」
「それじゃあ、失礼します!!」
ザンを担いだゲキはそそくさとその場を去った。
「ハハハ!! 若さとゆえの過ちというものかの…」
「……」
「あっ… ありがとうございます…」
「いやいや!! とんでもない!!」
「わしはただ…」
「恩を返した恩を返しただけじゃよ…」
「さて…」
「わしはこれで…」
老人は支度をして、店の外に出た。 その後を追い、女性も老人を追った。
「おっ… お名前を教えていただけませんか!?」
「……」
「なぁに… 名乗るほどの者でもございません…」
老人は女性に背を向けた。
「団子おいしかったです… 親父さんにもよろしく伝えてくだせぇ…」
老人は、そのまま歩き出し店を後にした。
「いっ… 一体何だったんだあのじいさん!?」
「多分、ただ者じゃないことは確かだね…」
後々、シン達はあの老人と再会することになり、その正体を知ることとなる。
第52話 FIN
登場人物紹介
謎の老人 能力名:???
ザン 能力名:???
ゲキ 能力名:???




