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新大東亜戦争  作者: 零戦
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第五十五話 ハワイ諸島ヲ攻略セヨ後編



「久しぶりだな」


村田が真珠湾に佇む戦艦を見て呟く。


その戦艦はウエストバージニアである。


あの十二月八日の攻撃の時に一番始めに雷撃を命中させたのだ。(間違ってたら言って下さい)


ウエストバージニアはあの時と同じように村田に狙われた。


「投下用意ッ!!」


「投下用意ヨーソローッ!!」


村田が叫び、偵察席にいる星野が復唱する。


この時、村田配下の雷撃隊十八機は二機編隊に分かれ、各自の目標に向かっていた。


ウエストバージニアから僅かだが、対空機銃が放たれていた。


ドドドドドドドッ!!


二十ミリ機銃弾が村田機を掠めるが、当たらない。


村田は威嚇のために機首に装備されてる七.七ミリ機銃を放った。


タタタタタタタッ!!


艦体には支障はないが、対空機銃を動かしている生身の人間にはきつい。


頭に命中したら一発で吹っ飛ぶ。


対空火器員は転げ落ちるかのように逃げる。


その僅かの隙を村田がついた。


「距離七百ッ!!」


「撃ぇぇぇーーーッ!!」


「投下ーーーッ!!」


村田が再び叫び、星野が投下索を引いた。


ヒュウゥゥッ。


ザバァァンッ!!


重い浅沈用の八百キロ航空魚雷が沈む。


だが、すぐに浮き上がり疾走し始める。


「魚雷疾走中ッ!!」


平山が村田に伝える。


村田は魚雷を投下した反動を付けて、ゆっくりと上昇している。


その時、別の艦から放たれた機銃弾に襲われた。


ガンガンガンガンッ!!


機銃弾に命中に機体が震える。


「左主翼被弾ッ!!」


星野の報告に村田が左主翼を見ると、左主翼の三分の一程が吹き飛ばされていた。


が、機体が墜ちる気配はない。試しに左右に振るが異常はなかった。


ホッと息をつく暇も無く、星野が新たな報告をする。


「二番伊藤中尉機炎上中ッ!!」


「何ィッ!!」


村田が右を見ると先程までいた伊藤機は無く、ゆっくりと火を噴きながら降下している。


「脱出しろッ!!」


村田が無線に向かって怒鳴ると偵察座席と後部座席から二人の搭乗員が飛び出して落下傘を開く。


だが、操縦席の伊藤中尉は脱出しなかった。


「伊藤ッ!!早く脱出しろッ!!」


『た…隊長…無理…です…弾が胸に当たり…目も…霞んで…います…』


「伊藤ッ!!」


『隊長…桜…吹く…靖国の…庭で…会いましょう…』


伊藤少尉は最後の力を振り絞ってフォード島に降下していく。その先には高角砲陣地が多数存在している。


「伊藤ォォーーーッ!!」


ズガアァァァーーーンッ!!


村田の絶叫と共に伊藤機が高角砲陣地に体当たり自爆をした。高角砲弾が多数あるために砲弾が次々と誘爆している。


「伊藤……すまん…」


村田は誘爆して炎上しているフォード島に無言で敬礼する。


「雷撃隊は全機集合せよ」


いつまでも悲しんではいられない。村田は雷撃隊を集合させるが、伊藤中尉機を含む三機が撃墜されていた。


幸いにも、何人かは脱出しているとのことだ。


「全機高度を五千に上げて戦況を艦隊に報告しろ」


雷撃隊は役目を終えたら偵察隊として真珠湾の戦況を第二機動艦隊に報告した。




―――江草隆繁少佐機―――


「全機につぐ。燃料施設は攻撃するなッ!!繰り返す、燃料施設は攻撃するなッ!!」


江草一個中隊はヒッカム飛行場に狙いを定めた。


『行くぞクゥッ!!』


『うん……』


江草機は滑走路にいたB―17の編隊に狙いを定める。


B―17の編隊は動かない。いや、発進しようとしていたが、江草機の急降下を見て搭乗員達が慌てて機体から飛び出し、逃げて行く。


僅か三十秒程度の急降下なので果たしてどれだけ逃げられるものか。


百メートルも走れれば上出来で、大多数はそこまでも逃げられない。


となれば爆風で薙ぎ倒されるから地面に急いで伏せたほうがよっぽどマシである。


「間抜けな連中だ。二十五番の威力をまるで知らんな」


『馬鹿……』


江草とクゥは半ば呆れ、同情しつつ、爆弾を投下した。


ヒュウゥゥーーーンッ!!


爆弾投下と同時にGに逆らい、思い切り操縦桿を引き起こす。



ドガアァァァーーーンッ!!


爆発音が聞こえ、なおも下降は続き、Gで首がネジ切られそうになるが、江草はそれを堪えて首を回す。


それまで存在したB―17が影も形も無くなっているのはむろんだが、後には巨大な直径二十メートル程の被弾孔がぽっかり穿たれている。


そればかりではない。


案の定、爆風から逃げ損じた搭乗員達が、竜巻に見舞われた後のとうもろこし畑のように、一定方向に薙ぎ倒されていた。


その中でも、伏せるのが遅れた搭乗員達は首を強烈な爆風にズボッと引き抜かれる。


一見して分かるように、人体の中でも最も頭部が弱い。


主人を失った首が飛行帽を被ったままコンクリートの地面を転がっていく光景は、敵といえ無惨を極める。


かなりの距離があっても、搭乗員の江草や飛魂のクゥは人並み外れて視力が優れているから見えてしまうのだ。


最も、将斗が見ても鼻で笑うだろう。


話しが逸れた。


江草機は上昇しつつ、戦況を見た。


真珠湾は燃えていた。


「……何てことだ…」


そう呟いたのはハワイ・オアフ島太平洋艦隊司令部にいた米太平洋艦隊司令長官のチェスター・W・ニミッツ大将である。


「長官。急いでサンディエゴまで避難を」


ニミッツ大将の具申しているのは日本通とゆわれている情報参謀のエドウィン・T・レイトン中佐だ。


「長官。ここは逃げましょうッ!!だらだらしていたらジャップの奴らが来ますッ!!」


実際、カタリナ偵察機が海上護衛隊に護衛された上陸部隊を発見している。


「……やむを得ない」


ガックリとニミッツは肩を落とす。


「脱出用としてB―17を使います。分乗して行きます」


さらに、カモフラージュとしてひそかに、民間飛行場へ退避していた航空機を山口、小沢機動艦隊へ攻撃隊として送った。


B―17三十六機、B―24三十三機、ドーントレス七十六機、アベンチャー雷撃機四十五機が山口、小沢機動艦隊へと飛び立ち、ニミッツ大将艦隊司令部とショート中将陸軍ハワイ防衛司令部が四機のB―17が相次いで飛び立って行った。


事実上ハワイ諸島は落ちたも同然だ。




村田重治を総隊長とする第一次攻撃隊は高橋赫一少佐率いる第二次攻撃隊に後の役目を渡して、編隊を組んで帰投中に機動艦隊に向かって飛行している米攻撃隊を見つけた。


「まだいたんか。全機突撃ッ!!攻撃優先は小型機やッ!!」


将斗はそう言うと速度を上げて米攻撃隊に近づく。


将斗が狙ったのは最後尾にいたドーントレスだ。


「くたばれやッ!!」


ダダダダダダダダッ!!


機首から放たれた十二.七ミリ機銃弾がドーントレスを襲う。


ガガガガンッ!!……ドガアァァァーーーンッ!!


機銃弾が爆弾に当たり、ドーントレスが爆発四散をした。


将斗の気付いた攻撃隊は慌てて散開するが、そこへ百二機の零戦が突っ込んで来た。


たちまち乱戦になる。


だが、乱戦は僅か十分程で終わった。零戦が弾切れを起こしたのだ。


零戦隊は仕方なく母艦へと向かう。その後ろを生き残った米攻撃隊が進撃している奇妙な光景があった。


やがて、二つの編隊が機動艦隊間近についた。


米攻撃隊がいざ攻撃しようとした時、一機のドーントレスがいきなり機銃弾を撃たれて海面へと墜ちていく。


何事だッ!!と思った時、米攻撃隊のさらに上空から機銃弾が降ってきて、さらに零戦も急降下してくる。


直掩の零戦隊である。


しかも数が百二十機でその半分の六十三機は撫子新撰組である。


彼女達は鬱憤ばらしとして次々と攻撃隊に襲い掛かる。


「落ちろネッ!!」


ドドドドドドドドッ!!


由華里機が放った二十ミリ機銃弾がB―17の操縦席に命中する。


グラリッ。


操縦士がやられたのか、機体は角度のある降下をし始め、そのまま海面に激突した。


「やったネ。流石あたしネ♪」


「由華里ちゃん油断はあかんよ〜」


翡翠が無線で由華里に話し掛ける。


「了解ネ、翡翠大尉」


そして、二機は新たな獲物を目指して速度を上げる。



結果的に米攻撃隊は艦隊を攻撃出来ず、逃げる回ることしか出来なかった。


帰ってきた機も僅か二十機程で、大部分が飛行不能で廃棄処理された。しかし、それと引き換えにミニッツ大将以下の海軍司令部とショート中将の陸軍司令部を逃がしたのだ。





―――六時間後―――


「支援砲撃開始ッ!!」


ズドオォォーーーンッ!!


ズドオォォーーーンッ!!


改装され、主砲が五基に減った戦艦扶桑型、伊勢型四隻から紅蓮の炎が噴き出す。


それに続いて巡洋艦以下の小型艦艇も次々と主砲を発射する。


砲弾はオアフ島のワイキキビーチに突き刺さり、爆発する。


支援隊の横を輸送船から降ろされた多数の上陸用舟艇がワイキキビーチに向かって航行している。


支援隊は同士討ちを恐れて砲撃を止める。


ドシャッ!!


舟艇が砂浜に当たった。


「着剣ッ!!」


連隊長らしき男が兵士に合図をする。兵士達は銃剣突撃をするため、銃に着剣をする。


ガゴンッと扉が開いた。


「突撃ィィーーーッ!!」


『ワアァァァァァーーーッ!!』


連隊長が飛び出すと兵士達も連隊長に続けとばかりに飛び出す。


ダダダダダダダダッ!!


生き残っていた機関銃座から突撃してくる兵士達に機関銃弾が襲う。


一人、二人が倒れると全員が砂浜に伏せる。


ブオォォォーーンッ!!


そこへ、第三機動艦隊から発艦した攻撃隊が機関銃座を爆撃する。


ドオォォーーンッ!!


爆風により兵士らしきものが吹き飛ばされる。


それを見た連隊長は兵士達を叱咤した。


「今だッ!!海軍の奴らに手柄を持って行かれるぞッ!!帝國陸軍の底力を見せろォォーーーッ!!」


『ワアァァァァァーーーッ!!』


連隊長に叱咤された兵士達は活気づき、銃剣突撃を開始する。


米兵士達は銃剣突撃を見て、浮足立ち逃げ出していく。


「アメ公は怯んだぞッ!!突き進めーーーッ!!」


兵士達はワイキキビーチを出て、軍港を目指す。


その時、多数の飛行機音がまた聞こえてきた。


「味方機だッ!!」


一人の兵士が空を指差す。


飛行機の正体はミッドウェイ島から飛来し、四発機に改造された零式輸送機二百十機である。


零式輸送機の扉が開くと次々と武装した海軍陸戦隊が空挺降下を始めたのだ。


零式輸送機の性能を簡単に説明すると、武装兵三十五人、最大速度四百二十五キロ、航続距離四千八百キロ、十二.七ミリ機銃×四だ。


空挺降下した七千三百五十人の陸戦隊の銃は陸軍で採用されていた一〇〇式機関短銃が握りしめられている。


一○○式短機関銃は既に歩兵の主力武器となっている。


村田銃の伝統を引き継ぐ三八式歩兵銃は、まさに職人芸ともいえる緻密さで製造されていたが、この軽機関銃は大量生産に向いた簡素な機構が採用された。


さらに、機銃弾は拳銃用の弾丸が使えるようになっていた。


当然、狙撃には向かないが敵に照準をつけている暇のない白兵戦では大きな力を発揮する。


もちろん射撃の腕に自信のない兵士達にも、短機関銃は好評であった。


ちなみに銃剣も付けられている。


米陸軍部隊は空挺部隊の参戦に驚きながらも獅子奮迅をしたが、上空には空母から飛んだ攻撃隊に阻まれ、陸戦隊はハワイ・オアフ島太平洋艦隊司令部を占拠した。


七時間後、陸軍部隊が太平洋艦隊司令部に到着、占領し、日の丸を掲げた。


そして三日後には、ハワイ陸軍防衛司令部にも日の丸が掲げられた。


この時、ハワイ防衛として約十八万の部隊がいたが、約四万が戦死。十一万が捕虜となり、残りの約三万は山岳地帯に逃走してゲリラとして破壊活動が約二ヶ月も続いた。


海軍の被害は零戦二十九機、九九式艦爆三十八機、九七式艦攻三十五機。(大半の搭乗員は落下傘で脱出している)陸軍の被害は戦死者一万三千、負傷者二万六千である。


一応ながらも、日本はハワイを占領した。


御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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