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真夜中の雫と、解けない魔法

第3話では、和樹の母親という嵐のような存在が登場し、二人の関係をさらにかき乱します。そして、夜の静寂の中で交わされる、夢か現実か曖昧なほどに甘く切ないやり取り。和樹と山城、それぞれの心の揺れ動きに注目してください。

玄関のドアが開くや否や、和樹の母が弾丸のように飛び込んできた。そして、リビングに山城がいるのを見るなり、目を輝かせて彼女の正面に陣取った。

和樹は溜息をつきながら、母の前にも料理を並べる。

「ねえねえ、お名前は?」

「……灰宮、山城です」

「山城ちゃんね! それで……あなた、和樹の彼女さん?」

和樹は顔を真っ赤にし、「何バカなこと言ってるんだ!」と声を荒らげたが、山城は否定も肯定もせず、ただ静かに俯いていた。母はそんな彼女の頬をぷにっとつねり、「ま、いいわ。食べましょ!」と笑って食事を始めた。

気づけば時間は夜遅く、山城の帰る列車はもうなかった。母の強い勧めで山城は和樹の部屋に泊まることになり、和樹はリビングのソファで眠ることになった。

真夜中。

喉の渇きを覚えた山城は、物音を立てないよう静かに部屋を出た。ソファで眠る和樹の寝顔を横目にキッチンへ向かうが、不運にも手に取ろうとしたマグカップが床に落ち、高い音を立てた。

「……ん、どうした?」

半分眠ったような声で、和樹が起き上がる。彼はふらふらとした足取りで山城に歩み寄った。

「水、飲みに来ただけだから……」

山城が答えると、和樹は熱っぽい、けれど至極穏やかな声で問いかけた。

「……なんで、さっき否定しなかったんだ? 母さんに彼女かって聞かれたとき」

山城が黙り込むと、和樹はそっと彼女の顎を指先で持ち上げた。そのまま彼女を壁際に追い込み、吸い込まれるように唇を重ねた。

山城の目が見開かれる。至近距離で、彼女の耳にいくつも並んだピアスの穴が街灯の光に反射した。

最初は驚いて抵抗しようとした彼女だったが、次第に力が抜け、和樹の体温を受け入れる。和樹は唇を離すと、今度は彼女を壊れ物を扱うように抱きしめ、ふわりと持ち上げた。

「……ねえ、お母さんに見られたら、私たちおしまいよ?」

山城の囁きで、和樹はハッと我に返ったように彼女を降ろした。彼女は和樹をソファへ促して寝かしつけたが、和樹は眠りにつきながらも、離すまいとするように彼女の手をぎゅっと握りしめた。

山城はその手を優しくほどき、火照る顔を冷ますように水を飲むと、眠れない夜の続きへと戻っていった。

翌朝。

「……変な夢を見たな」

和樹は伸びをしながら呟き、二人のために朝食の準備を始めた。

朝食中、山城は昨夜のことを思い出しては頬を染めていたが、和樹はケロッとした顔で普段通りに接している。やがて母が「また遊びに来てね!」と山城の連絡先を強引に交換して去っていった。

ドアが閉まり、二人きりになった瞬間。

山城は和樹の襟元をぐいっと掴み、彼を鋭い視線で射抜いた。

「……和樹。昨夜のアレ、何だったの」

和樹は一瞬きょとんとした後、彼女のあまりの剣幕に冷や汗を流した。

和樹にとっては「夢」のように曖昧な出来事でも、山城にとっては鮮明な「現実」でした。二人の認識のズレが、静かな部屋に緊張感を生み出します。

不器用な二人の距離は、この一件で縮まるのか、それともこじれてしまうのか。

次回、和樹の弁明(?)と山城の逆襲が始まります。

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