40 エピローグ
最終話です。
最後までお読みいただきありがとうございます!
アリソンは、「……え?」と小さくつぶやくと、立場が逆転することに抵抗した。
「な、なぜ私が!」と拒否する仕草を見てとった騎士たちが、アリソンの両手首に力づくで腕輪をはめ、こめかみの上にパッドを貼った。
うわあ。この人たちやり慣れている。普段から相当使用していたんだ……。
本当はパッドなんて必要ない。
単に前世のポリグラフを再現するために、それっぽくした装飾のようなもの。ただの私の自己満足。
でも、この人たちは今後もこれを使っていくんだから、こんなところで種明かしはしない方がいいよね。
もっというと、私の魔力の方が質、量共にアリソンのそれを上回っているから、二人が鑑定器に繋がってさえいれば、質問者と回答者を入れ替えることができる。
何も腕輪をされた方が回答者となる決まりはない。
でもまあ。それも言わない方がいいだろう。
ふう。いざ自分がこのセリフを言うのかと思ったら恥ずかしい。
みんなよくこんな陳腐なセリフを大真面目に言っているなぁ。
「アリソン・フォークナー。私の言葉を繰り返しなさい。『私アリソン・フォークナーは聞かれたこと全てにおいて真実を語ることを誓います。この両手の魔力にかけて』」
アリソンはガックリと項垂れたまま観念して繰り返した。
「わ、私、アリソン・フォークナーは聞かれたこと全てにおいて真実を語ることを誓います。この両手の魔力にかけて」
「よろしい。万が一嘘をついたり答えを躊躇った場合は、誓いを破ったと認識し、この鑑定器があなたの魔力を奪います」
じゃあ始めるわよ。
「アリソン。あなたは十分な調査をすることなく、確固たる証拠もないまま、私、キャスリーン・オルデンバーグを糾弾しましたね?」
「……‼︎」
「おや? 回答をためらった場合は――」
「は、はい」
「よろしい。認めるのですね。まあ五年経った今だから、よくよく思い返して、当時の行いを振り返ることができたのかもしれませんね。コホン。あなたがそのような行為に及んだのは、筆頭魔女としての務めを果たそうとしない私、キャスリーン・オルデンバーグをよく思っていなかったことが一因ですね?」
「……‼︎ はい」
「なるほど。まあ、私も反省しています。あの頃は、筆頭魔女の仕事はほとんどあなたに丸投げしていましたからね」
「……え?」
「ああ、ごめんなさい。今のは質問ではありません」
何をやっているんだと宰相が睨みつけてきた。
まあ茶番なんですけどね。
必要なことなので。
「アリソン。あなたは筆頭魔女として国王陛下に忠誠を誓い、魔女たちを正しい信念で導くと約束できますか?」
「はい」
「では、私を糾弾したことは間違いであると認めるものの、それは国益のためだったということですね?」
「はい」
こんなところかな。
アリソンを追い詰めてもいいことはない。
私に嫌疑をかけたことが誤りだったと認めてくれるだけでいいのだ。
「確認ですが、私はもう大罪人ではありませんね?」
「……はい」
「では私がどこで誰と暮らそうと自由ですね?」
「はい」
「以上です。解除します」
国王もポカンとしているけれど、必要十分です。
「陛下。私の疑いは晴れたでしょうか?」
「ん? ああ、そうだな。疑いは晴れた。手配書も回収の上、名誉を回復する」
「ありがとうございます」
「だがそうなると、筆頭魔女は――」
「陛下! あ、申し訳ございません。先程も申し上げましたが、経緯はともあれ、筆頭魔女の継承は正しい方法でなされております。アリソンが当代の筆頭魔女です」
「そなたがそれでよいのならば構わぬが。研究はよいのか? オホン。魔道具の開発はどうする? 研究するのに肩書きは要らぬだろう。研究室ならいくらでも用意してやる。手始めに魔導船の整備をだな――」
あぁそれが陛下の本音ですか。
「陛下。ご覧になっておられましたよね? 私は先ほど鑑定器に魔力を奪われてしまいました。ですので、もう魔道具の開発はできません」
「なっ、なんだと!? なんとかならぬのか! その鑑定器を使って元に戻せぬのか?」
うふふふ。色々とできるけれど内緒です。
「残念ながら不可能です」
「あぁぁ――」
陛下が頭を抱えたのを見て、侍従が、「これにて聴聞会を終了します!」と宣言した。
◇◇◇ ◇◇◇
王宮を出たところで人目を避けて精霊王様の里に戻ると、エイダンとダニエルが駆け寄ってきた。
「疑いは晴れて、手配書も回収してもらえることになったわ」
「そうか。じゃあもう逃げる必要はないんだな」
「ええ!」
「ママン?」
「うふふ。なんでもないわ。それよりも、今後のことだけど、どこに行く?」
「そうだな。俺は三人で暮らせるならどこでもいい」
「じゃあ、思い切って隣国に行きましょうよ。ダニエルに広い世界を見せてやりたいの」
「……いいのか?」
「私は確かにこの国で生まれたけれど、親子の絆はないに等しいし、国に対する愛着もほとんどないから」
「そうか。ダニエル。お前はどうしたい? 元の家に戻りたいか? それとも三人で長い旅をして知らないところに行きたいか?」
ダニエルは目を輝かせて即答した。
「ぼく、たびがしたい! こんどはパパンもいっしょに、さんにんでたびがしたい!」
あらあら。
すっかり旅を好きになったのね。
「決まりだな」
「うふふ。そうね。家族三人で旅に出るなんて、ドワテ村にいた頃は考えたこともなかったわ」
「本当に長旅になるぞ? まさかとは思うが、お前やダニエルが消えたような――」
「心配しないで。魔法は使わないわ。これからの私は、ただのマリラだもの」
「ただのエイダンと、ただのマリラだな」
「うふふ」
「ぼくもただのダニエルになる」
「そうね。それがいいわ。きっと楽しい旅になるわ」
「ああ、そうだな」
「うん!」
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