第九十六話【遭遇】
俺の勝利。
特に苦戦するほどでもなかったな。
正直、もっと死闘を繰り広げないと勝てない相手が来るのではないかと思っていたが、予想が外れたぜ。
そう、何故だか今回は雑魚ばかりだった。
赤いスライム。
赤いゴブリン。
赤いオーク。
赤いコモルドラゴン。
一般常識で考えると、後半二つは結構強い部類だけどさ。
最初の二匹は何?
明らかに実力のある冒険者たちが集まれば倒せるような相手じゃん。
仮に犯人がいたとして……というか、確実にいるはず。
まあその犯人はどういう意図でこんなことをしているんだ?
普通に考えると、世界征服とかだろうけど。
もしそうなら、単純にもっと強い魔物を使えばいいだけの話だ。
例えばドラゴンとか。災害級の魔物とか。
最初に赤い魔物が現れてから、かなりの年月が経っているのにも関わらず、進歩が無さすぎる。
……いや、まてよ。
となると、そもそも魔物を赤くしている犯人がいないという線も考えられるぞ。
あくまで推測だが、このコモルドラゴンを含めた魔物は、かなりの低確率で赤い奴が生まれる。
なお、図書館で調べた限り、過去に赤い魔物が見つかったという事例はなかった為、赤い魔物が生まれるようになったのはここ数年前からである。
つまりドラゴンの赤ん坊も低確率で赤くなるのだが、そもそもこの世界にそこまで数が多くない為、まだ赤い奴が生まれていない。
対して、ゴブリンやスライムなどは世界中どこにでもいる為、生まれた際に赤くなる確率はそれなりに高い。とは言っても数年に一度のレベルだが。
……うむ。
今俺が作った理論だけど……あながち間違いではないような気がする。
辻褄が合わないこともないし。
でも、犯人がいるという線も捨てられないんだよなぁ~。
お~ん。
考えれば考えるほど分からなくなって来た。
よーし、止めだ。
腹と背中から大量の血が流れて来ているこの状況で、色々と分からないことを考えるのは止めよう。
正直百パーセント答えが出ないのは、わかりきっているし。
俺はリュックから包帯などの治療セットを取り出し、自分で止血を行っていく。
方法は単純で、五分間程度傷口を圧迫するだけ。
やがて出血量が少なくなって来たと思ったら、包帯をバランスよく巻く。
やけどをしている部分も綺麗に包帯で巻いておいた。
もう何度もやっているから慣れたもんだぜ。
そしてボロボロの服をコモルドラゴンの近くに放り捨て、リュックから新しいフード付きの黒服を取り出す。
と、その時。
コモルドラゴンの頭と胴体からそれぞれ黒色の煙が出て来た。
うん、知ってる。
さてと、あまり長居して誰かに見つかるのも嫌だし急ごう。
俺はフード付きの服を着ると、元来た方向に向かって歩き出す。
とりあえずシーロス街へ戻る為にな!
しばらくして。
にしても俺って結構奥まで来ていたんだな。
全然入り口に戻れないじゃん。
多少明るくなって来ていることから、もうすぐだとは思うけど。
何にせよ、この靴はもう捨てて新しいのを買おう。
びしょびしょで気持ち悪いわ。
靴下まで濡れていやがる。
シーロス街に戻ればあるだろう。
で、ついで服も大量に購入しておくか。
この俺のことだから、すぐにぼろぼろになる。
だからたくさん買っておいて損はない。
そんなことを考えつつも、若干湿り気のある地面を歩いていると、
「この洞窟に来るのは久しぶりね」
「そうなのか?」
「ええ。冒険者になって四年目の時にクエストで来たんだけど、その時と全然変わらないわ」
正面から複数の足音と声が聞こえて来た。
おいおい。まじかよ。
冒険者たちか?
ここ、一方通行で狭いぜ?
つまり絶対に会うことになるぜ?
……やばいな。
「にしてもさ~。本当にこの中に例の赤い魔物はいるんだろうな?」
「さぁな。ただ聞いた話だと数日間の間はここに住み着いていたらしいし、午前中に寝ている可能性はあるだろうな」
すみません。俺がお先に倒しました。
……よし、何も知らないふりをしよう。
俺はたまたまここへ探検に来たCランク冒険者。
奥まで行ったが特に何もなかった。
こういう設定で大丈夫だろう。
……あ、見えて来た。
一応顔を隠す為、フードを深く被る。
向こうの人数は、十人程度か?
昨日と若干メンバーが違う。
青い閃光さんと、あの……歯に引っ付くやつ……そう、カールさんはいるな。
おそらくS級などの実力者を連れて来たのだろう。
「!? ───誰っ!?」
向こうの誰かが大きめの声でそう言った。綺麗な女性ボイス。
なんか聞き覚えがあるぞ?
多分青い閃光のレイナさんだろう。
流石Sランクだけあって気付くのが早い。
ほんでちょっとだけ圧がある。
俺は口元を綻ばせながら、
「あ、怪しいものではありません」
と、怪しい奴が言うセリフを言ってみた。すると向こうは、
「嘘をつきなさい」
お~ん?
別に俺は怪しい奴じゃないぞ?
「いえ、本当です。ただのCランク冒険者ですけど」
俺がそう言い終わったところで、お互いの顔が見える位置に到着した。
向こうは全員立ち止まり、俺を睨んで来る。
怖いわ。やめて頂戴。
読んでくださりありがとうございます。




