第八十二話【夏休み】
およそ一年の時が経った。
俺はもう三年生である。
去年と変わらず、騎士コースのAクラス。
Sクラスになれなかったのは、多分成績のせいなんだろうな。
Aクラスに残れたのは、多分人数が少なすぎてB~Fクラスが存在してないからなんだろうな。
そんなことはさておき、俺は相変わらずのぼっちです。
一向に誰も話しかけて来ん!
いつそういう感じのイベントが来るのだね?
去年の途中までは、友達っぽい関係の女子が二人いたけど、今はゼロ。あの二人はもうどっちでもいい。
リランディさんは急に告白して来たと思ったら、ただ単に婚約者を殺す為のコマとして俺を使おうとしていただけだったし。
ティナさんはなんかよく分からんけど急に関わって来ないでよとか言って来やがったしな。あれはまじで理解が出来なかった。あんな意味の分からん奴……こちらから願い下げだ。
で、ロストたちはあれ以来関わって来ないし。
シャーロットくんはライバル心を燃やして来ているだけだし。
うん、まじで友達がおらん。
もういっそ男子でもいいから話しかけて来てくれよ。欲を言えば平民か町民の可愛い女子。獣人や兎人でも可。
そんなことを考えつつも、教卓に立っているクロード先生の話を聞いていく。
「よ~し、明日から夏休みだ。これは毎年言っていることだが、あまり羽目を外しすぎるなよ? 一ヶ月とちょっとの間学園内の寮で過ごすも良し、実家に帰るもよし。とりあえず俺に面倒くさいことをさせないよう、良い子にしていろ。もし何かしでかしたらこの一年間ずっと全員の宿題を二倍にする。なにせ俺の給料が下がるからな。分かったか? ということで解散!」
クロード先生はそう言い残して資料などを手に持ち、早々にこの教室をあとにした。
おいおい、二倍とかまじかよ。
……なるべく良い子にしよっと。
もし仮に俺のせいでクラス全員の宿題が二倍にでもなったら、嫌われるかもしれん。
あ、そもそも誰も関わって来ないわ。
にしても言ってることが自分勝手すぎだろ。
めっちゃ自己中やん。
立ち去るの早いし。
ほんで生徒に自分の給料のことを話しとるやん。
そこでふと周りを確認してみると他のみんなはそれぞれ、数人で集まって会話をしたり、教室から出て行ったりとさまざまだ。
よ~し、今日はとりあえず資金調達と特訓を兼ねて、冒険者ギルドにでも行こう。そしてぼっちを紛らわそう!
いや、悲しくなんてないし。
女子とかに囲まれて海に行きたいだなんて思ってないし。
うん、思っていないのだけど、……一応そんな感じの雰囲気だけでも想像する為に、このクラスの中で可愛い女子を探してみよう。
おおかた去年のメンツと変わらないけどな。
このクラスに美女っていたっけなぁ~。
そう考え自分の席に座った状態で周りを確認していくと。
……。
目と目が合うぅ~。
うん、多分ティナさんと目が合った。
髪で目元が見えないせいで、本当に合ったのかどうか確証はないが、口元で大体分かる。
ティナさんは俺と目が合ったことに気付くなり、口を歪ませて教室のドアへ向かって歩き出す。
……まじで何なんだ?
たまたま目が合っただけで、あんな不機嫌そうな顔しやがって。
俺の方が嫌だっての!
てか、文句があるなら直接言って来ればいいのに。
あの日以来、ティナさんは本当に俺と関わって来ない。
たまに目が合うが、先程と同様不機嫌そうな表情で去って行く。なら最初から目が合いそうな位置にいなければいいのに。
関わりたくないのなら、その辺まで気を回して欲しい。
なんか不機嫌な顔を見せられると、こちらまで気分を害する。
あー、なんか落ち着かないから、早くギルドのクエストに行こう。
そして依頼されていない魔物もぶっ飛ばしまくってやる。
生き物を殺すのは、結構気持ちがいいのだ。
ということで、一度寮の自室に戻って私服に着替えた後、学園をあとにした。
アラストル街、冒険者ギルド。
ここは簡単に言うと、掲示板に貼ってある依頼を遂行し、クリア報酬をもらう場所である。
他とは場違いな木造りの建物で、ドアの上付近に狼の背中を剣で刺している絵が描かれている。
とてもガラが悪そうな雰囲気が漂っているのだが、実際に入ってみると……うん、ガラが悪い。
その原因のほとんどが、酒を飲んで馬鹿騒ぎしている連中だ。
あいつらがいるだけで一般人が近寄りがたい雰囲気が出るからな。
それに足して、小汚い床や壁。
そりゃー、普通の人は近付けないわ。
そんな感じの場所に、俺はやって来ました。
さてと、早速掲示板を確認しよう。
俺は掲示板の前に移動し、貼られている紙に目を通していく。
……う~ん。
にしても、最近目新しいのがないな。
ゴブリン退治だったり、採集だったり。
正直飽きて来た。
かといって冒険者ランクがCの為、このくらいしか受けることが出来ないのである。
まあいつも通り、適当にゴブリン退治でも受けておいて岩場にいる猿とかオークを倒すか。
そう考え『ゴブリン十体討伐』の紙を取ろうと手を伸ばした、その時。
バタンッ!!
入り口が勢いよく開いた。
「ん?」
何だ?
疑問に思いドアの方を向いてみると、全身に金属の防具を身に着けている男性がいた。
誰だろう? こんな奴今まで見たことが無いぞ。
男性は、真っすぐ受付の女性へと向かう。
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