第七十話【恋の妨害】
カフェデートから数日の時が経った。
今日はいつにもまして暑い。
太陽さんがまるで人がゴミだと言わんばかりに照っている。
中火で炒めたフライパンのように熱されている地面。
今現在学園内にある食堂で昼食中なのだが、外とあまり温度が変わらない。
太陽の光が直接当たらないだけまだまし。
たまに校内とか外で、氷魔法を使用して体を冷やしている上級生を見かけることがあるけど、まじで羨ましいわ。
俺も魔法使いてぇよ。
もし魔法を使えるようにしてくれたら、報酬は弾むぜ?
永遠の命と魔力どちらか一つ選べと言われたら、迷わず魔力。
うん、即答。
まあそんなことは置いといて、今……とても気まずいなう。
「ねぇ、私のスープいる?」
隣でそう言ったのは、リディさん。
彼女は、野菜と汁を乗せたスプーンを俺に近付けて来る。
「いや、自分のがあるから大丈夫」
「ふ~ん」
こんな状況でリディさんのをもらえる訳がない。
ん?
どういう状況かって?
「そういえばレインくん。このあとって何の授業だっけ?」
正面にいる、同じクラスで平民友達のティナさんがそう尋ねて来た。
「えーっと、確か教室で作法系の授業だったと思う」
「そっか。ありがとう」
ティナさんはお礼を言って、小麦パンを自身の口に運ぶ。
そう。
女子二人に囲まれているのである。
横にリディさんと、前にティナさん。
しかも女子二人はお互い喋らない。
どちらも俺に話しかけて来やがる。
なんか微妙な空気だな‥‥‥。
周りの視線もうざいし。
何故こうなっているのかと言うと、元々リディさんと二人でこの席に座って会話をしながら昼ご飯を食べていたら、満席だからここに座りたいと言って来たのがティナさんだ。
そしてティナさんは、リディさんを構わずに俺に話しかけて来た。
その時点で俺とリディさんの会話は止まったのである。
すると、何故か対抗するように今度はリディさんが、彼女っぽいふるまいをしようと行動を始めた。
それに対してティナさんは、若干気まずそうにしつつも、何故か俺に続けて話題を振って来やがる。
正直言ってこんな空気になったの‥‥‥ティナさんのせい‥‥‥だよな?
「あのさ、今日の放課後どこに行く?」
リディさんが何故かティナさんの方をチラ見して、そう問いかけて来た。
「う~ん。たまには高級な服屋さんとかに行ってみる?」
「あっ! いいじゃん」
‥‥‥。
俺はパンを口に運ぶ。
お腹が空いているのもあるが、とりあえずこの空気から逃げる為だ。
「レインくん。相変わらずよく食べるね」
明るい声でそう聞いて来たのは、ティナさん。
おいおい。
ここでまだ来るんかい。
「まあね。体を動かしてたらお腹が空くから」
ティナさん……昨日までは、リディさんがいたら気まずそうに引いていたのに‥‥‥。
急にどうしたのだろう。
やっぱりこの子‥‥‥俺のことが好きなのか?
う~ん。
まじで分からん。
てか、リディさんも良い顔してないわ。
ここは男の俺が、ちゃんとティナさんに邪魔だってことを伝えた方がよろしいのかな?
ごめん、リディさんがあまり嬉しくなさそうだから、あまり近付かないでもらえる?
みたいな感じか……。
言いづらいわ!
また今度にしよう。
次の日。
今、ティナさんと並んで運動場へ向かっている。
これからクロード先生による武術の訓練があるのだ。
「最近暑いね」
歩いている俺の隣から、そんな声が聞こえて来た。
聞きなれた声だ。
そう、ティナさんである。
「そうだな。少しは曇ってくれればいいんだけど」
おい、雲よ。もう少し働いてくれ。
でないと汗の放出量がやばいんだよ。
現に体育を始める前から、もう体操服が濡れている。
「……そういえばさ、リーフさんとどこまで進んだの?」
笑いを含んだ口調で俺に探りを入れつつも、前髪の間の汗を手で拭うティナさん。
一瞬目が見えたような気がしたが、髪の陰に隠れて詳しくは分からなかった。
いや、そんなことはどうでもいい。
俺にはやらなければならないことがある。
最近そのことが、頭の五割ほどを占めてやがるのだ。
リディさんの近くにいるところではあまり関わって欲しくない、という言葉なのだが‥‥‥やはり言いづらいな。
「特に‥‥‥」
考え事をしながら適当に頷いてみると、自分でも驚くくらい冷めた返事をしてしまった。
そんな俺に対し、ティナさんは目を細める。
‥‥‥前髪で見えないけど。
「付き合っててそれはないでしょ?」
「いや、本当に。キスとかもまだ」
これは事実だ。
すると、ティナさんの口元が少し綻んだような気がした。
まさか、嬉しいのか?
だとしたら、やっぱり俺のことが好きということ結論になるが。
でも俺は、人から奪おうという魂胆に同意は出来ないな。
他人から何かを奪う行為はあまり好きではない。
魔物の命を多く奪っておいて言うセリフではないかもしれんが。
「‥‥‥そっか」
ティナさんは下を向いて、小さく頷いた。
……よし、今だ。
言うぞ。
リディさんの為にも、邪魔だってことをはっきり伝えなきゃ。
俺はそう決意し、口を開く。
「あ、あのさ‥‥‥」
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