第六十五話【ラブレター】
次の日。
今現在、俺は体育館裏へ向かっている。
「はぁ~」
心臓がドクドク言ってやがる。
あ、間違えた。ドクドクじゃなくてバクバク。てそんなことはどっちでもいい。
あー、心拍数絶対やばいわ。
もしかしたら心臓がハートの形になって飛び出して来るかも知れん。
‥‥‥うん、とても緊張しています。
何故かって?
あれは、今朝のことだった‥‥‥。
「あぁ~、よく寝た」
俺はいつも通り目を覚ました。
とても目覚めがよかった。
よし、いつも通り筋肉痛はなくなっている。
昨日はいつも以上に自分を殴ったからなぁ~。
一日では治らないのではないかと不安になったが、大丈夫だったようだ。
さてと、じゃあいつも通り着替えるか。
俺は布団を横に動かしてベッドから降りた。
すると、
「ん? 何だこれ?」
一通の手紙が視界に入って来た。
手紙が部屋の床に置かれているのだ。
落ちている場所からして、ドアの隙間から滑り込ませたのだろう。
これは‥‥‥あれ?
裏闘技場の使者からいつも届けてもらっている、第2位防衛戦の予約の紙じゃない。
ということは。
ま、まさか?
まさかなのか?
俺は早速床に落ちてある、いつものではない紙を手に取って中を確認した。
『レイン=アルトリアくんへ。今日の放課後お話があります。体育館裏へ来てください』
うおぉぉぉ!!
これって‥‥‥あれ?
LOVE LETTER?
愛の手紙?
ラブレター?
ラブ手紙?
愛のレター?
‥‥‥だ、よ、な?
夢? じゃないよな?
夢だったら殺すよ?
誰を殺すかは知らんが。
俺は一度目を擦ってみる。
……うむ。
どうやら現実で間違いないらしい。
ほう。
でもさ、これって男子のいたずらとかじゃないよな?
ここって男子寮だから、女子は入れないはずだし。
‥‥‥その可能性が高いかもしれん。
‥‥‥。
い、いや、女子だ!
そう思っておこう。
こ、れ、は、女子からのラブレターだ。
そして手紙にはあえて気持ちを書かずに、直接伝えるつもりだろう。
何ていい子なんだ。
まさかクラスで浮いている俺を選ぶとは。
よ~し、絶対に放課後は行こう。
何があっても行くぞ。
この街に隕石が墜落しても行く。
ゴキブリが行く手を阻もうが、必ず辿り着いてみせる。
これでもし男子が待っていたら、殺す。
いや~、にしてもラブレターなんて初めてもらったわ。
おら、わくわくすっぞぉ!
朝からテンションが上がって来たわ。
ラブレター=可愛い子。
これはお決まりのパターンだからな。
大抵ブスではない。
つまり今回、ブスは体育館裏にはいない。
そしてこの考えは、何かの前触れではない。
最初に可愛い子がいると言っておいて、ブスがいるパターンではない!
いや、まじで頼むわ。
神様、どうか!
お願いします。
で、今に至る。
少し遅れるように来た為、この角を曲がれば手紙の主がいるはず。俺好みの可愛い子がいるはず。
て、そんなことを考えるのは止めよう。
「すぅぅぅ」
彼女の唇を吸うみたいに、大きく息を吸った。
あ、よく考えたら彼女とかいなかったわ。
そもそも前世ですら経験がないわ。
ファーストキスもまだだったわ。
て、駄目だ。
今日の俺、かなりおかしくなっているかもしれん。
……ん? 何だって!?
おかしいのはいつものことだと?
うるせぇ、この野郎。
……よし、行こう!
俺は自分でも驚くほど早く決断し、角を曲がった。
すると、そこには‥‥‥。
一人の女子の後ろ姿。
とても暗い場所なのにも関わらず、恒星のように輝いている金色のロングヘアー。
俺と同じくらいの小さい身長。
見たら分かる、清楚な子やん。
夏だからか、スカートは短め。
少し遠めから見ても分かる足の綺麗さ。
どことなく漂うお金持ち感。
……や、やばい。
来たぜ!
まじで可愛い子のパターンだ。
いや、喜ぶのはまだ早い。
結構後ろ姿に騙されることがあるからな。
後ろはレベルが高くても、振り向いたら……お〜ん、ってなるのはよくあるパターンだ。
実際この学園にも、そういう女子はたくさん潜んでいる。
だからあまり期待しないでおこう。
その方が、期待外れの時のダメージが小さい。
……。
よし、声をかけるぞ。
第一声は男から。
「あの!」
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