第四十五話【レインVSアンナ・弐】
「両者見合って……始め!!」
審判のそんな言葉と同時に、俺は思いっきり地面を蹴って走り出した。
いいスタートだった。
だが、途中で足を止める。
「‥‥‥っ、氷盾!」
アンナさんの声が聞こえたのと同時に、彼女の目の前に大きな水色の壁が出て来たからだ。
おいおい、無詠唱かよ。
やばいやつやん。
俺は水色の壁を避けるように横ステップをし、再び相手の元へと向かう。
「炎槍!」
アンナさんはまた無詠唱で魔法を放って来た。
‥‥‥これってあれじゃん。
赤髪のロストくんがよく俺に撃ってくれていたやつ。
て、一緒なのか!?
炎の槍は一本だけど、大きさやスピードが全然違うんだが。
俺はとっさに鉄の剣を振って、それを切り裂く。
すると炎が真っ二つになり、俺の両腕に直撃した。
「ふふっ」
相手の笑い声が聞こえる。
うん、大体こうなると予想はついていた。
炎を剣で斬ったところで、物体ではないので消えるはずがない。
‥‥‥はい、くらってみたかったからです。
どんな痛みなのかなぁ~って。
結果、心が女で見た目ががっつり男のブラックさんの方が強い。
彼に片足を掴まれて振り回された時は、ちょっとやばいと思ったわ。
だが、アンナさんのこの魔法は弱い。
つまり、彼女は力を隠しているのだろう。
あの程度の魔法攻撃力で第10位選手になれるとは思えん。
「雷! 炎球!」
言葉と共に、色んな魔法がこちらへ向かって来る。
無詠唱って便利だな。
俺はわざと体で魔法を受けながら走っていき、やがて近くまで接近したので、剣の腹で相手の腹を強めに殴った。
「きゃっ!」
それにより、アンナさんは横に吹っ飛んで壁にぶつかり、砂の上にお尻をつけた。
あれ‥‥‥弱くね?
もしかしてこの人……無詠唱だけが取り柄?
ちゃんと奥の手があるよね?
とか思っていた矢先、彼女の雰囲気が変わった。
「今‥‥‥どうして斬らなかったの?」
「はい?」
「まさか手加減してくれたの? ‥‥‥子供の分際で」
なんか怖いな。
言葉が尖っているのだが‥‥‥。
この人、キレてる?
「刃で斬ってたらあなたは死んでましたよ?」
俺は人を殺そうとは思わん。
すると相手は、杖を使って立ち上がりながら俺を睨んで来た。
「甘いわね。そんなんじゃこの世界では生きていけないわよ?」
「大丈夫です。正直言ってあなたにも余裕で勝てそうなんで」
「そっか。‥‥‥じゃあこれは耐えられる? 雑魚が───」
アンナさんは尖っている言葉を放った後、何やら詠唱を始めた。
今まで無詠唱で魔法を撃っていた人がわざわざ詠唱をしているということは、それなりに強いのが来ると考えられる。
となると一応警戒しておいた方がいいな。
俺はあえて近付かずに、剣を両手で構えて後ろへと下がっていく。
間近で受けるのは結構びっくりするから心臓に悪い。
と、その時。
アンナさんが何を言っているのかは分からないけど、杖の先端にものすごい力が集まり出した。
赤い球が作られている。
とても綺麗な球体だ。
‥‥‥て、おい。どんどん大きくなって来ているぞ。
「やばいかもしれん」
今更近付いて斬りつけようにも、あれがいつ発射されるか分からんしな。
てかさ、遠くにいてもあれだけ大きかったら躱せなくね?
それにあんなのくらったら、今着ている服は確実に破れるだろうな。
そして体が持つかどうかも分からん。
「───私に勝てるというのならくらってみなさい。地獄炎球!!」
どうやら詠唱が終わったらしい。
巨大な炎の球は、ものすごいスピードでこちらに飛んで来る。
俺は急いで反対側を向きしゃがむと、両手で後頭部を覆った。
髪が焼けてなくなるのは嫌だからな。
最悪身体なら、火傷を負ってもいい。
と、そこで!
「うっ!! ‥‥‥ゴボッ」
背中にものすごい衝撃を感じ、思わず口から血を吐き出してしまった。
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