第三十三話【アラストル学園・入学式】
アルトリア学園の説明会から二日後‥‥‥。
今日はとうとう入学式の日である。
今現在体育館の中で、たくさんの在校生に囲まれながらも席に座って教師たちの話を聞いている最中である。
うん、長い。
特に校長先生の話が長すぎる。
眠たくてしょうがない。
睡魔との戦いは、正直ブラックさんとの戦闘より苦戦しているなう。
よし、寝たらまずいだろうし色々と考え事をして眠気を誤魔化そう!
まず学園の制服は、入学式の後それぞれの教室で購入して明日から着用すること。
これで少しはまともな服装が出来るな。
ふぁぁ。
そして寮生活が始まる。
寮生活かぁ~。
これで宿屋代を払わなくて済むな。
‥‥‥、眠たい。
えーっと、寮はS~Cクラスの生徒は体育館の横に建っていて、それぞれ一人部屋があるが、D~Fクラスの生徒は二人部屋。
男子は女子寮に、女子は男子寮に入ることを禁じる。
‥‥‥ふぁぁぁ。
やばいあくびが止まらない。
そして校長先生の口も止まらない。
てか俺二人部屋かよ!
普通に嫌なんだけど‥‥‥。
だってパートナーに傷だらけの肉体を見られるだろうし、寝る前の特訓ものびのびと出来なくなる。
となるとわざわざ外に出ないといけないな。
‥‥‥。
あと期末ごとにある試験で赤点を取った場合、放課後に補習を受ける規則がある。
嫌だな~。
それと年に一度自由参加の武闘大会があり、上位三名には成績をプレゼント。
うん、俺が出たら目立ちそうだから止めておこう。
もし仮に単位が出そうになくなって卒業が厳しくなったりしたら出た方がいいだろうけど。
‥‥‥ふぁぁぁ。
一年生の時は魔術希望者と騎士希望者は同じ授業を受けるが、二年生になる時点で魔術コースと騎士コースのどちらかに分かれる。
分かれた時の人数によってそれぞれのクラスの人数が変わる。
今Fクラスは百人だが、場合によっては魔術コース八十人、騎士コース二十人になったりもするということだ。
教師たちの話し声が子守歌のように聞こえる。
‥‥‥。
俺は眠りについた。
それからどれくらいの時間が経っただろうか。
突然肩を触られたような感覚がした。
目を開けてみると‥‥‥正面に教師がいる。
あれ? この体格がよくて強面な人見たことあるぞ。
‥‥‥て、あっ!!
入学試験の時居眠りしていた俺を起こしてくれた人だ。
「───おい、さっさと起きろ!」
やばい! のんびりしている場合じゃない。
「す、すみません!!」
俺は急いでその場に立ち上がり、辺りを見渡した。
すると入り口の前に学生たち百人ほどの列がある。
強面教師はその列を指さして口を開く。
「みんな待ってるぞ? 早く並べ」
「はい!」
勢いよく返事をして強面教師が立っている方とは反対に走り出し、入り口で固まっている列の一番後ろに合流する。
そして強面教師がその列の先頭に立ち、進み始めた。
あら? この先生が先頭で歩いているということは‥‥‥俺たちFクラスの担任ってこの人!?
今も随分お怒りのようだし、いつか殺されそうなんだけど。
やがてFクラスと書かれている教室へ到着すると、前の黒板には席順の紙が大きく貼られている。
生徒たちはそれぞれ手早く紙を確認し、その席へと向かって行く。
俺も紙に目を通すと、自分の名前を探していった。
えーっと‥‥‥あ、あった。
て、俺一番後ろの端っこじゃん。
やった、気分的に楽だぜ!
俺は長い机の間にある階段を上り、自分の席へと移動した。
この教室の机は五人が一緒に使うようなもので、かなり長い。
下の教卓にいる強面男性教師は、険しい顔で立っている。
おそらく全員が座るのを待ってるのだろう。
いや、顔が怖すぎる。
めっちゃ便意を我慢している時の顔やん。
漏らす前にちゃんとトイレへ行ってね?
その歳で漏らしたら流石に笑うからな?
やがて全員が席に着くと、男性教師は話を始める。
「よし、全員席に着いたな。じゃあ最初に自己紹介をさせてもらう。俺の名前はクロード=マグナ、男だ」
うん、男なのは見て分かる。
そんなムキムキで強面な女性がいてたまるか。
「貴族出の元Aランク冒険者で、得意魔法は身体強化だ。担当科目は武術訓練」
うん、見た目でそんな気はしていた。
「因みに副担任のリーフ先生は別の仕事をしているから今はいない。それと、はっきり言っておくが‥‥‥お前らは落ちこぼれだ」
入学初日に何かきつい言葉が聞こえて来たぁ!
俺が落ちこぼれだと!?
模擬戦で大量の魔法をすべて耐えきったこの俺が‥‥‥落ちこぼれだと!?
全国から強者が集まっている裏闘技場で38位の俺が‥‥‥落ちこぼれだと!?
ふはは、言ってくれるじゃねぇか。
そんなことを考えていると、突然前の方の席に座っている青髪の男子が立ち上がった。
「あの、落ちこぼれってどういうことですか?」
「そのまんまだ。お前たち百人は基礎的な知識、実技、魔力、またはそのどれもが劣っている。あくまでギリギリ合格出来ただけという話だ」
まあ、俺は知識がめちゃくちゃ劣っているし、魔力に関してはからっきしだ。
となるとFクラスになったのも分かる。
そんな強面男性ことクロード先生の言葉に、青髪くんは納得していない様子。
「でも、その言い方はないと思います」
「悔しかったらこれから努力して頑張れ。二年生へ上がる時にそれぞれの成績によってSクラスにもなれるし、Fのままだったりもする。今のお前たちはこれ以上下がることなんてない、つまり努力した分だけ上位のクラスになれるんだぜ? 燃えるだろ」
「あ、‥‥‥はい」
青髪くんは納得したようで、大人しく席に座った。
クロード先生‥‥‥いい感じに言い包めやがったぞ。
その後、この教室で学園生活に必要なものを購入し、先生の話を聞いたあとでそれぞれ自由行動となった。
因みにこの世界にはやはり印刷技術がないらしく、教科書と言うものが存在していない。
まあこれだけの人数分を手書きで作るなんて出来ないだろうしな。
で、その代わりにノートを何冊も購入した。
おそらく黒板に書かれている授業内容の重要な部分をそのノートに書いていくのだろう。
そして原則として、夕暮れまでには学園内に戻らないといけないらしい。
それ以降、学園外へ出かけるのは基本的に禁止。
色々と面倒くさそうだ。
とまあ自由行動になった訳だけど‥‥‥確か夕暮れの鐘が鳴る前までには学園の敷地内に戻っておかないといけないんだよな?
じゃあ時間はまだたっぷりある訳なのだが‥‥‥、何をしようか。
ふと座っている席から教室全体を見渡してみると、数人の生徒が立って会話をしていたり、教室の外へ出て行ったりしている。
まあとりあえず、寮の部屋に行って貴重品以外の荷物を置いておくか。
そう考え、購入したものを手に持ち席から立ち上がったその時、
「なぁ、そこの貧乏ちびくん。ちょっといい?」
そんな声が聞こえて来た。
よく見ると目の前には三人の少年が立っている。
俺が端っこの席なのをいいことに進路を塞いでやがる。
こんなの机を飛び越えれば逃げられるんだけど、一応話くらいは聞いてやるか。
‥‥‥て、こいつら確か入学試験の模擬戦前、準備室で絡んで来たやつらじゃん。
中央にリーダーらしき赤髪の子と、左右に金髪と緑髪。
この三人もFクラスだったんだ。
俺は肩に鞄をかけ、手に購入したものを持った状態で尋ねる。
「どうしたの?」
「その荷物を寮に置き終わってからでいいから、ちょっと体育館裏へ来てくれない?」
ほう、面白いことを言うじゃねぇか。
このパターンからしてボコされる感じ?
‥‥‥うわぁお、楽しみ。
てかこの子たち、結構優しいじゃん。
普通いじめるなら荷物ごと汚したりして来るだろ。
なのにも関わらずわざわざ部屋へ置きに行ってもいいとは。
「うん、いいよ」
俺が爽やかに返事をすると、三人は「ふんっ」と鼻を鳴らして机の間の階段を下りていく。
何が気に食わないのかね?
俺もそれに続いて下に降り、Fクラスの教室をあとにした。
そして体育館の横にあるFクラスの寮へ移動し、自分の部屋に入る。
うわっ。
部屋の中は教室や体育館などに比べてかなり汚い。
ほんでめっちゃ狭いやん。
二階建てベッド一つと、机が二つあるだけなのに、まともに運動出来る面積すらない。
因みに二人部屋のペアはまだ来ていないらしい。
女子と一緒だったらいいなとか思ってたけど、まさか男子寮と女子寮が分かれているとはな。
何てことだ!!
そんなことを考えながらも机の引き出しに荷物をしまい、鞄だけを持って部屋の外に出る。
そしてクラスメイト全員に渡された鍵を使って部屋のドアを閉めると、歩き出した。
そう、体育館裏を目指して!
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