第二十九話【初クエスト】
俺は掲示板からゴブリン討伐の紙を剥がして受付に持っていくと、クエストを受諾してもらった。
そしてギルドをあとにし、アラストル学園のある方向へと歩いていく。
やがて正門の外へ出ると、俺はゴブリン探しを始めた。
にしても広いな。
目の前には緑色の草原が広がっていて、真ん中に土の道路がある。
この街に来る時は馬車の中から真っ暗でよく見えなかったけど、ここら辺めっちゃスライムが多いやん。
スライムは、住んでいた森の中で何度も見たことあるが、そこまで戦ったことはない。
別に眼中になかったからな。
ということで今回も無視。
手ごたえの無いやつを相手にする気はない。
俺はゴブリンを探して平原の道路を歩いていく。
少し行った所で、全身に茶色の毛を生やしている犬みたいなウルフが俺に飛び掛かって来たのだが、無視。
現在俺の太ももを牙で噛んでやがる。
新しい黒色の服装も購入したことだし、もうこのズボンは帰ったら捨てればいいや。
‥‥‥。
俺はじゃりっという砂の音を立てつつも歩き続ける。
‥‥‥。
おい、ウルフくんや。
いつまでついて来るつもりかね?
ずっと太ももを噛んどるやん。
いい加減噛み千切れないことに気が付かないのかね?
まあ、いいけどさ。
その後、俺はしばらく歩いた所で、緑色のゴブリンらしき姿を発見した。
よし、行くぜ!
俺はゆっくりと近付いて、顎をパンチで打ち抜き絶命させる。
ゴブリンは口から黒っぽい血を吐き出しつつも、地面に倒れた。
えーっと、どこかの部位をギルドに提出するって話だったから、この両耳でも取っておくか。
俺はゴブリンの両耳を手で千切り、別のゴブリン目指して歩き出す。
その後‥‥‥。
無事にゴブリン五体分の耳十個を集め終えた為、街の正門を通る。
‥‥‥とその前に、このウルフくんを逃がさないとな。
この子、まじで俺に気があるんじゃね? って勘違いするくらいしつこい。
いつまで太ももを噛んどんねん。
俺はウルフの口を優しく開けると、ゆっくり地面へ下ろし逃がしてあげた。
今まで重りになってくれてありがとう。
また会おうぜ? ウルフくんよ。
ということで俺はアラストル街の中へ入り、学園のまだ向こうにある冒険者ギルドへと戻った。
そして受付の女性にゴブリンの耳を渡し、代わりに報酬金をもらう。
これにてクエスト完了だ。
意外とすぐに終わったな。
でも、一つ問題なのが、この冒険者ギルドって街の正門からかなり遠くね?
クエストは外に出るのがほとんどなんだから、正門の近くに建て直せよ。
Cランク冒険者の俺が掛け合ったところで、絶対に聞き入れてもらえないだろうけどさ。
俺は冒険者ギルドをあとにすると、大通りに出た。
さてと、太陽の位置からしてもう午後だな。
昼食がまだだし、とりあえず何かを買いに行くか。
ということで、学園に着く前辺りにある大通りの屋台があった場所へと移動すると、焼きたての鳥の丸焼きとオークこんがり肉とジュースと巨大なパンと野菜たっぷりシチューを購入し、近くにあった机に座ってそれらを食べていく。
「おぉ~!」
どれもうめぇ。
こりゃー元気が出るわ。
特にこのオークこんがり肉とやら、外はカリカリで、中がめちゃくちゃジューシーやん。
鳥の丸焼きも脂っこくなくて丁度いい。
すれ違う人が驚いたような表情で見て来るが、これくらい食べて当然だろ。
でないと強くなれんぞ?
てかそろそろ特訓も頑張らないと、食べるばかりしてたら太りそうだ。
よく考えたらこの街に着いて以来、そこまで自分を追い込んでいない。
夜寝る前に自分を殴るのが一番ハードってくらいかな。
夜の試合まではまだ時間があるし、今日はちょっと頑張るか。
やがてすべての料理を食べ終わると、近くにあったゴミ箱に入れ物を捨て、正門の外へと向かった。
俺はとりあえずこの草原にある道路を走ることにする。
街周辺の地形とか知っておきたいしな。
もしかしたら人目が少なくて特訓に最適な場所が見つかるかもしれない。
一応今気になっているのは、冒険者ギルドの掲示板で見たオークや猿が生息しているという岩場。
なんか人の少ないイメージがある。
だが、どこにあるのかが分からん。
馬車でこの街に来ている時‥‥‥それっぽいのはなかったよな?
となると、この道沿いにはないのかもしれん。
よし道なりに歩くのは中止だ。
一旦左側方向に走って行ってみよう。
たとえ道がなくてもこの街の城壁は大きいから目立つ。
つまりめちゃくちゃ遠くへ行かない限り、迷う心配はない。
ということで俺は草原の上を走り出した。
しばらくして‥‥‥。
どこからともなくやって来る風によってなびいている植物がたくさんある中、少し向こうに茶色の場所が見えて来た。
明らかに色が違うしあそこだろう。
いつもより重たい足取りでその岩場であろう場所へ向かう。
ん?
どうして重たいかって?
そりゃーウルフが一体ずつ両足に噛みついてやがるからな。
おい、君たち。いつまでついて来るつもりかね?
やがて岩場へ到着すると、そこには誰もいなかった。
やっぱりA級レベルの猿が生息しているから、立ち入ろうという人は少ないのかな。
なんにせよ好都合だ。
これで存分に特訓が出来るぜ。
俺が何の躊躇もせずに岩へ足を踏み入れると、両足に引っ付いていたウルフくんたちが突然顎の力を緩め、急いで草原へと逃げて行く。
ん? オークとか猿が怖いのかね?
俺には近付いて来るのに、その俺よりも弱い魔物からは逃げるのかね?
俺は走り去っていくウルフ二体を見たあとで、振り返り再び岩場へ視線を戻した。
その時!
目の前に豚のような顔をして二本足で立っている俺の身長よりも大きい魔物がいた。
体全身に青色の毛が生えていて、片手には石の槍を装備してやがる。
そう、こいつがオークだ。
何度も森の中で倒したことがある為、別に怖くも何ともない。
「おし、一丁やるか!」
俺はそう呟いて、その場に寝転がった。
肩に下げている鞄は穴が空いたりしたら嫌なので、背中の下に敷いておく。
余裕ぶった表情で寝ている俺の姿が癇に障ったのか、オークは大きい足で俺の腹を踏みつけて来る。
あー、うん。
重みがあっていい感じ。
次に、相手は槍を胸に向かって突いて来やがった。
俺は急いで胸に力を入れると、それを食い止める。
オークの石の槍は先っぽだけ刺さった。
対した痛みじゃないけど、びっくりして心臓に悪いから止めてほしいわ。
ということで胸に当たっている槍を掴んで奪い取ると、背中の下に敷いた。
これで大丈夫!
オークは石の棒を取られたことにイラついたらしく「ブフォォォ!!」と声を上げながら、寝転んでいる俺を何度も殴って来る。
顔、太もも、服、腹、腕。
この子、均等にダメージを与えてくれるから優秀だな。
これなら寝ていても大丈夫だろう。
一応金的をされないように足を組んで股間を隠しつつ浅めの眠りについた。
知らないうちに石の槍を持った新しいオークが来たら嫌なので、ある程度は周りの音にも耳を傾けておく。
それからどれくらいの時間が経っただろうか。
目を開けると、先程まで俺を攻撃していたオークの姿がなかった。
多分倒せないと判断して諦めたか、俺を死んだと勘違いしたのであろう。
さて、そろそろ帰るか。
俺は立ち上がると背中に敷いていた鞄を持ち上げ、落とさないように肩へ下げる。
「‥‥‥そういえばこの槍、使えそうだな」
鞄と同じように背中の下へ敷いていた石の槍を見て、ふとそんなことを思った。
鉄の剣とまではいかないけど、木刀よりかは使えそうだ。
今晩の戦いで早速試してみよう。
どうせ無料だし壊れても大丈夫!
ということで無理矢理鞄に詰め込み、アラストル街を目指して草原の上を歩き出す。
この石の槍‥‥‥結構長いな。
鞄からはみ出しとるやん。
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