41 親に相談、いかがですか?
「ねえ、母さん、春に来た寿也さんなんだけどね、その、結婚、したいなあって」
正月、実家に帰ってきた僕は、母さんに相談することにした。
ことが結婚となると、しかも僕が跡を継ごうと思った場合、寿也さんを婿養子にってことになるから、僕が勝手に決められない。まだ先のこととはいえ、母さんや父さんに話をしておかないわけにはいかないから。
「それは、明星だけの気持ち? それとも、もうプロポーズされたの?」
「プロポーズ、されたって言えばされたんだけど、今のところ、お互いに結婚したいと思ってるって確認した段階、かな。
ただ、寿也さんは長男じゃないから、婿養子になる手もあるんだ。
まあ、就職もKAKUYOから内定もらったし、これからどうしていくかって流動的なんだけどさ。
多分、あっちのご両親の許可とか取らなきゃいけないし、寿也さんは母さんに会ったけど父さんには会ってないし、僕も向こうの両親に会ったことないから、これからどうなるかわからないしね。
もし、向こうがOKだったら、婿養子ってあり?」
まず、母さんにそこを確認しておかないと、話を進められないからね。もし、父さんが「跡継ぎは星也だ!」って言っちゃったら、全部ひっくり返るし。
「向こうの親御さんがそれでいいって仰るなら、婿養子にもらうことは問題ないと思うわよ。
父さんには、成人式で明星が彼氏を連れてきたって話はしてあるけど、この家を誰が継ぐっていうのは、特に気にしてなかったわ。
父さんもね、星也が外に出たいならそれで構わないって言ってるし、明星の好きにしていいって言うんじゃないかしら。
あとね、誰も継がなくても、最終的に3人のうちの誰かがお墓の面倒だけ見てくれれば、お店の方は、雇われ店長を置いておくってことでもいいのよ」
「そっか。
でも、それって店長に任せっぱなしってこと? 大丈夫なの?」
「いずれは困るかもしれないけど、少なくとも10年20年は大丈夫でしょ。
それくらいなら、私達が睨みきかせられるし。
なんならね、あなた達が名目だけ継いで、こっちに戻ってこれるまでそうやって待ってるって手もあるのよ」
「う~ん。僕としては、実際に店を切り盛りしたいから継ぎたいんだけどね」
名目だけ継いでも、お店を継いだことにはならないからなあ。
「そんなこと言って、白さんはあっちでお勤めなんでしょ? こっちに支店でもあってそこに転勤できるわけ?」
「支店はあるみたいだけど、そんな簡単に転勤はできないだろうし、ずっとこっちにいて転勤しないってのも無理だと思う」
「じゃあ、どうするの。単身赴任してもらうの?」
「できれば、それも避けたいけど、そうするといい方法が見付からないんだよね」
そう、それが悩みの種だ。
いつも、ここで堂々巡りを始める。
「結婚したからって、最初からここにいる必要なんかないだろうが」
「兄貴!? いつからいたの!?」
「さっきからいたぞ。
そんなこた、どうでもいい。
婿養子に取った上で、しばらくは寿也と一緒に動いて、子供が生まれるあたりでこっち来りゃいいだろう。夫婦2人で子供の面倒みるとか大変だし、実家に入るにゃちょうどいいタイミングだろ」
「そんなことできるわけないだろ! なんのための婿養子だよ」
「べつにいいわよ、それでも」
「え?」
「だから、いいわよ。最初から同居なんかしなくても」
「え? え? なんで?」
婿養子で同居しない? そんなことってあるの?
「家を継ぐったって、最終的にお墓と仏壇守ってくれればいいわけだし。
第一、私も父さんもまだまだ現役だし、明星が今帰ってきたって、店を任せたりしないわよ」
前提が…崩れた? 僕、帰ってきても店を任せてもらえないの?
「と言うかさ、お前、22でいきなり店長になるとか思ってたわけ? 甘いんじゃないか?」
兄貴から、追い打ちが。言われてみれば、そうかもしれない。
僕、家を継ぐために帰ってきたら、居場所なかったりした?
「えっと、その場合、僕ってどうなるの?」
「そりゃお前、店員Aからスタートなんじゃないか」
「そうねぇ。単なるではないでしょうけど、店員やってもらうことになるんじゃない? そりゃあ、仕入れ関係とか手伝ってもらうだろうけど、店長にはならないんじゃないの」
「もし、僕が嫁に行ったら?」
「そしたら、お前は寿也についてどこにでも行っちまえ」
「兄貴には聞いてないよ」
「そんときゃ、最終的に俺が父さん達を引き取ってやるよ」
「だから、兄貴には聞いてないって!」
「明星、星也に突っかからないで。星也の言うとおりよ。
あなたが無理に私達を背負う必要なんかないから。
あなたが一番大事に思うものを追い掛けなさい。
それは、お店なの? 白さんなの?」
僕が、一番大事に思うもの? 実家のお店を継ぐことじゃないの?
「言っとくけどな、寿也以外にお前に惚れてくれるような物好きはいないからな。
逃がしたら、一生後悔するぞ」
「だから、兄貴には聞いてないって!
寿也さんと別れる気なんかないってば!」
「じゃあ、寿也を優先に考えろ。
うち継ぐことに固執してっと、寿也を逃がしちまうぞ」
「寿也さんは、そんな人じゃないよ!!」
怒りにまかせて自分の部屋に戻って、少し冷静になった僕は、さっきの話を反芻してみた。
実家を継ぐにしても、すぐじゃなくて構わないって。
子供が生まれる頃にこっちにってことは、3~4年後くらい? でも、それって結局、いずれは単身赴任してもらうってことになっちゃうよね。
問題の先送りでしか、ないと思うんだけど。
あけましておめでとうございます。
今年最初の更新になります。
予告どおり、来週日曜は更新をお休みします。




