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40 二度目のクリスマス、いかがですか?

 「メリークリスマス!」


 付き合い始めて2回目のクリスマス。

 やっぱりクリスマスくらいは外で豪華にディナーって、寿也さんが力説したので、頑張って休みを取った。

 今回は、24日の朝から25日の昼までだ。

 お盆に帰れなかった分、正月の帰省もあるから、かなりキツい。

 とはいえ、厳密には、恋人同士としての初めてのクリスマスだから、特別な日ではあるんだよね。

 去年のクリスマスは、まだちゃんと付き合ってなくて、イブの朝に会ってから付き合うって話になったんだ。

 最初から恋人同士として迎えるクリスマスは、初めてってことになる。

 あ~~~、そういや、僕が寿也さんと初めてえっちしたのも、去年のイブだったっけ…。

 一緒に住んでこそいないけど、寿也さんは、かなりの頻度で僕の部屋に泊まっていってる。

 朝起きて、隣に寿也さんがいるのが当たり前みたいになってきてるけど、付き合ってまだ1年しか経ってないんだ。

 なんか、1年って結構あっという間なんだなあ。


 …あれ? そういえば、正式に付き合ったのが去年のイブってことは、交際1周年の記念日でもあるってことじゃないか?

 どうしよう。何か記念のイベントとかプレゼントとか考えなきゃ。

 って、どうせ寿也さんが何か企んでるんだろうなあ。

 でも、それだけじゃつまんないから、僕の方でも何か考えてみようか。

これが、僕の部屋でパーティーなら、料理に凝るとかケーキを焼くとか、僕にできることもあるんだけど、外でデートとなると、何をしていいかわかんないよなあ。



 夏の旅行以来、僕らの認識は、恋人っていうより婚約者って感じになりつつあるけど、僕が卒業するまでだってまだ1年以上ある。

 そもそも、僕らの気持ちとしては、どういう形で結婚するのかってところを飛ばして、この人と結婚したいって点だけで同意してるのが現実だ。

 このまま付き合っていく中で、社会人になった寿也さんと学生のままの僕の関係がどう変わるのか、変わらないのか、僕の卒業後の進路はどうするのかなどなど、現実を考えると、頭の痛い問題が山積みになっている。

 クリスマスに考えるようなことじゃないかもしれないけど、寿也さんの就職が3か月後に迫ってることを考えると、結構まったなしな状況な気がする。


 寿也さんは、この前、無事KAKUYOに内定が決まったので、春からは一流企業の社員だ。

 正直言って、兄貴と同じ会社だとか、兄貴のオマケで入れたとか言われてもピンとこない。

 ともかく、約束どおり、就職祝いには万年筆を贈った。

 兄貴も一緒に就職祝いのパーティーをって寿也さんが言い出して、流れ的に反対できなかったんだけど、寿也さんが誘ったら、僕抜きの方がいいと言ったそうだ。

 僕だって、折角のお祝いの席なのに、兄貴といがみ合って空気を悪くするのは嫌だったから、これ幸いと「2人でお祝いしなよ」と寿也さんを送り出した。

 もちろん、後日、寿也さんと2人でお祝いをやり直したけど。

 寿也さんが言うには、例によって兄貴は照れてるだけだってことなんだけど、兄貴がそんなタマじゃないことは、妹の僕はよく知ってる。


 別に兄貴が嫌いってわけじゃない。

 でも、何かと突っかかってくる兄貴を相手に、どう仲良くしろってのさ。

 兄貴がやりたかったことをやるために就職するのは、応援する。

 もしかしたら、そこには、実家を僕に継がせたいっていう兄貴なりの優しさもあるのかもしれない。

 でも、高校時代からこっち、兄貴が僕に優しかったという記憶はない。

 普通に接してくれれば、僕だって普通にするのに…。

 あ~あ、いつから「お兄ちゃん」じゃなくて「兄貴」って呼ぶようになったんだったかなあ。

 ともかく、姉さんは嫁に行ったし、兄貴は関東で就職した。

 これで、実家(お店)を継ぐのは僕ってことになる。

 母さんは、無理してお店を継がなくてもいいって言ってるけど、僕が継ぎたいんだから。

 でも…、そうすると、寿也さんはどうなる?

 寿也さんは、こっちで就職した。

 僕が卒業して実家に帰ったら、遠距離恋愛になる。

 それだけならいいけど、結婚しても別居しなきゃならないの?


 僕が選べる選択肢は、大きく分けて

1 僕が実家を継ぎ、寿也さんには仕事を辞めてもらって婿に来てもらう

2 僕が実家を継ぎ、寿也さんはこっちで単身赴任する

3 実家を継ぐのは諦めて、こっちで寿也さんに嫁入りする

4 結婚しないで、ずっと遠距離恋愛する

5 別れる

の5つだ。

 4と5は論外だから、実質三択ってことになる。

 もちろん、KAKUYOは全国規模で転勤があるだろうから、寿也さんがたまたま実家の近くに勤めることもあるだろうけど、それはどうせ一時的なものだ。

 詰まるところ、僕が寿也さんと結婚するには、どちらかが仕事を辞めなきゃならない可能性が高いってことだ。

 そして、僕は、いつもここで問題を棚上げしてる。先のことを考えて暗くなってもしょうがない、と。

 考えなきゃならないのも、もうじき時間切れになるのもわかってるんだけど、そのせいでかけがえのない今を楽しめないなら、本末転倒だって。

 実際、クリスマスのことを考えてワクワクしてた気持ちは、どっか行っちゃった。

 せっかくのクリスマス、2人の記念日なんだから、楽しまなきゃいけない。

 そういうことで、また問題を先送りしよう。

 寿也さんが就職してからの2人の変化を踏まえて考えるって手もあるんだから。



 というわけで、クリスマスだ。

 なんというか、寿也さんも気合いが入ってて、デートは駅前での待ち合わせからだ。

 最近は、出掛けるって言っても、2人して僕の部屋から出発ってことが多かったから、寿也さんの気合いの入りようがわかる。

 去年は水族館だったけど、今年はどうするのかな。

 あんまり色気のない僕らの付き合い方からすると、世間一般のデートコースからは外れていそうな気がするけど。

 あと、クリスマスプレゼントは用意しないようにって言われてたけど、なんか企んでるんだよね。



 「遊園地!?」

 「そ。珍しいだろ」


 確かに珍しい。っていうか、20歳過ぎて遊園地に来るとは思わなかった。

 ディズニーとかUSJとかならわかるけど、普通の? 遊園地だ。

 まあ、すっごく意外だったけど、それなりに楽しめた。

 寿也さんの狙いは、夜のイルミネーションだったみたいで、観覧車から見た夜景は、とても綺麗だった。

 当然というか、観覧車の中でキスもした。寿也さん曰く、「様式美というか、お約束というか」だそうだ。



 それから、指輪作りに行った。

 銀細工で、ペアリングを作らせてくれる工房があって、そこでお互いにリングを作った。

 デザインは、センスに自信がないから、サンプルから選んだけど。

 これをお互いにプレゼントし合うわけだね。

 それで、プレゼント用意するなって話になるのか。

 まあ、婚約って言っても口約束だし、お互いまだ学生だし、これくらいがちょうどいいのかな。



 夜は、普通にホテルでディナーの後、そのままお泊まり。


 当然というか、お風呂でバスバブルで遊びながらゆっくりいちゃいちゃした後で、えっちした。

 で、今は並んで寝ているところなんだけど。


 「そういうわけで、婚約指輪っていうわけにはいかないけど、とりあえずの予約ってことで。

  右手でいいから、薬指にはめててくれ」

 

 「うん、わかった。

  4月からは、寿也さん社会人だもんね。忙しくて会えないこともあるだろうけど、ちゃんとこれ着けてるから」


 そう、4月からは、寿也さんは社会人。そして、僕も4年になる。

 僕らは、あと1年の間に、結論を出さなきゃいけない。

 本当は、内定もらって万年筆を買う話が入るはずだったのですが、リアルクリスマスにこの話を持って来たくて、端折ってしまいました。

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