第十八話
「え、えと、うん。私はレイラっていうの。多分怪我は無いよ。貴方達こそ、大丈夫?」
強張った表情筋を何とか動かして完璧に微笑んだ私を誰か褒めてほしい。
「私達は大丈夫。レイラちゃん、よろしくね。」
う、
うわぁぁぁぁい!
ヒ、ヒロインだ!ヒロインがいるよ!
かぁぁぁぁわいい!可愛い!何これ何これ!天使か!天使なのか!
いや、この慈愛に満ちた微笑みは女神だ!
「ええ、よろしく。しかし、君のような少女をこのような場所に閉じ込めておくなんて気が知れないな。いや、分からなくはないか。何せ、君の愛らしい姿を自分以外の誰にも見せたくないが故に留めて置きたいとは誰でも思うはずだからね。勿論、私も例外ではない。しかし、こんな配慮の欠片もない薄汚いこの部屋に置くなんて信じられないね。でも大丈夫。私がいる限り、君には指一本触れさせないよ。私のプリンセス。」
今度は、自然に微笑んだ。
「え、え!?レイラちゃん………!?」
「ふふっ。顔を赤くして。可愛いね。」
「か、可愛いって、そんな……。」
「何やってんだお前!!」
「いた!?」
ちょ、何すんのさ生意気少年!
ゲンコツなんて女の子にするべきではないよ!
前世はジャニーズに負けず劣らずのイケメン顔だったけど、今は悪役顔とはいえちゃんと女の子らしい姿なんだぞ!
「ルリをたぶらかすな!」
「失礼だな。私は思った事を正直に言っただけだ!皆言わないだけで同じ事思ってるだろ絶対!それを言っただけでたぶらかすとは何だ!少なくとも君は同じ事思ってるだろ!」
「思ってねぇよ!閉じ込めて置きたいだなんて!」
「じゃあ愛らしいとは思ってるんだろ!」
「うっ。そ、それは……。」
「ふ、二人とも落ち着いて!」
あ、ごめん。思わず熱くなってしまった。
「レイラちゃん、クリス君はそんなこと思ってないよ。私なんてブサイクだから誰も可愛いなんて思ってくれないよ。でしょ?クリス君。」
「え!?ええと、それは……。」
へぇ、この少年クリスっていうんだ。
てゆうか多分この子達誘拐云々とか以前に普通に知り合いとかご近所さんだろ。雰囲気が親しい感じだし。それでクリスがルリの事好きだけど、意地悪してるって感じだな。
でも残念。君は攻略対象じゃない。
「そんなことはないよ。ルリは誰がどう見ても可愛いから。きっとそこのクリスとかいう少年なんかよりずっと君に相応しい(リアル)王子様が現れるよ?なんなら、私も是非立候補…」
「お前は黙ってろ!」
煩いなあ。
「あ、そういえばもう一人いるの?誘拐された人。」
「うん。そうなの。ずっと部屋の隅にうずくまってる。私達よりも大分前からいたみたい。」
「その子は何処にいるの?」
「こっちだよ。」
箱とかいろいろ積み込まれてる所の間に、確かに私達よりもかなり小柄な子供がうずくまってた。
少しずつ、脅かさないように近づいてみる。
「君、大丈夫?私の声聞こえる?」
そう声をかけると、ゆっくり顔を上げてくれた。
「え、獣人?」
「…………………。」
その子は、桜色の髪に、その髪と同じ色の猫のような耳を持っていた。
よくよく見ると長いしっぽも生えている。
男の子………か、な?雰囲気的に。髪がショートボブだからどちらかよく分からない。
たしか、獣人はそれなりの数は存在しているけど、人間が密猟をするせいでなかなか姿を見かけないらしい。見かけたとしても、奴隷等が殆ど。だから、奴隷を禁止しているこの国ではまず見かけることはほぼない。勿論、私も始めて見た。
「君、獣人だね?大丈夫。何もしないよ。私の言葉、わかる?」
「………ん。」
コクリと頷いてくれた。
「君、名前は?」
「………ルク。」
……………………。
か、可愛いな。
可愛いな!めちゃ可愛い!
耳とかピコピコしてるし、しっぽもユラユラしてるし、可愛い!
モフモフだ、モフモフだ!触りたい!
「………。」
あ、警戒されてる。
私の考えがばれたか。
って、ルリの後ろに隠れた!なにこのコンビ最高に可愛い、じゃなくて!
き、嫌われた……!?
嘘!そんな、馬鹿な!
嫌だよー。モフモフしたいよ触りたいよー。怖がらせてごめんー。
「大丈夫だから。何もしないから安心して。あ、ルクは怪我してない?」
「……してない。」
ほっ。取り合えずよかった。
どうやら売り物として一応乱暴には扱ってないようだね。
さて、取り合えず此処は何処だろう。気を失っていたからどれくらい時間が経ったのか分からないし。
「ねぇ、此処がどこら辺か分かる?」
「この国ってのは確かだと思うぞ。俺とルリが住んでる村は一応王都の近くだから警備はそれなりに厳しいし、気を失っている子供を連れてそう遠くへは行けない。」
「んー、そうかぁ。てことは、隠れアジト的な所かな。」
取り合えず他国までは行ってないようだからほっとする。遠ければ遠いほど探すののは難しいからね。
「言っておくが、多分助けはこねぇぞ。たかだか数人の平民の子供が誘拐された所で本気で探してもらえないだろうし。騎手には他にも重要な任務があるからな。」
「へぇ、随分しっかりしてるね。クリスっていくつ?」
「馬鹿にすんな。もう七歳の男だぞ?これくらい出来なくてどうする。」
へー。同い年なんだ。すごい。まあそのくらいならウィルの方が数倍賢かったよ。前世プラスの精神年齢の私だけど勝てないからね!
そして多分こいつはルリと、おまけで私もいるから強気なんだろうなぁ。まあ好きな子は守ってあげたいだろうからね。
「まあでも、今は誘拐事件が問題になりつつあるらしいから、探してくれてると思うよ。ま、問題になってなくても捜すだろうけどねあの人は……。」
言うまでもなく、父様の事だ。
「そんな楽観的に考えても解決しねぇぞ。そんなことも分からないのかよ。」
「ちょっと、クリス、言い過ぎだよ。」
「いや、良いよ。実際本当の事だしね。」
ルリがフォローしようとしてくれたから止めたら、何故かクリスに驚かれた。何だよ。ここで反論するとでも思ったのか?
「レイラちゃん、そういえば私の名前……。」
「あ、ごめん。癖で呼び捨てにしてた。嫌だったら止めるけど…」
「う、ううん!嬉しい!ありがとう、レイラちゃん!」
「いえいえ。私の事も是非呼び捨てで呼んで?」
「分かった!レイラ!」
可愛いなぁ………。
よし。可愛いルリのためにも早く見つけてもらわねば。
え、ここは主人公として自分で立ち向かえって?無理無理。
私は魔力が高いとはいえあくまで貴族の平均よりまあまあ上ってレベルだもん。ウィルのようにチートではない。それに、今は一部魔力を封じられてるんだ。
そんな私が大の大人、大勢を相手に出来るか?無理無理。
ここは大人しく助けを待ちます。
………ま、ただ大人しくしてあげるつもりはさらさらないけど。悪いね、誘拐犯さん。残念ながら誘拐した相手が悪かったよ。
よし、ということで、ボソリ。
「《探索》」
この魔法は、闇属性の魔法で、その名の通り自分の周囲を探索できる。
魔法を使う者の実力によって、探索できる範囲は異なるけど、まあ私はそこそこできる。
ほう、どうやらここは何処かの村のようですね。入口は……ああ、一見普通の民家だけど、よく見れば奥にも繋がってる、という感じか。なかなか凝ってるね。
ん、どうやらここら辺までが限界か。
よし、周りは何となく掴めたし、あとは誰かに知らせんと。
父様の事だ。多分もう私を誘拐した犯人には目星を付けてるだろう。あの人もチートだからな、あれでも。
という事は、それなりに近くにはいるはず。ということは、気づいてもらえればいい。
はい、ではまたボソリ。
「《落雷》」
ードーン!
「きゃっ。」
「わっ!」
「雷?」
あ、皆驚かせた。ごめ。
探索して分かったけど、今ここは晴天。
私が魔法を使った事により、急に暗雲が現れ雷が落ちた事だろう。どう考えても不自然。
天候を変える魔法はかなり高度だが、さっきやったように一部だけならできなくもない。
分かる人には、使われた魔力により誰が使ったのかも分かるらしい。
父様やウィルなら、きっと分かってくれる。
ははっ。あの二人なら、絶対分かるね。試したことはないけど、私が使った魔法ならすぐ分かるだろう。確信がある。
何故かって?
奴らがチートだからさ!
『レイラを返せぇぇぇぇええええ!』
え!?もう来たの!?早!?
「な、何!?」
「凄い騒ぎになってるな……。」
「さあ皆。もう大丈夫だよ。」
チート二人が乗り込んで来たからね。
「おい!てめぇら!」
「何ですか?モブさん。」
「も、モブ……?と、とにかく場所移動するぞ!とっととついて来い!」
誰がついて行くかよ。馬鹿なモブだな。
って、皆震えてる。ああ、普通七歳の子供なら怖いよね。ルクにいたっては五歳くらいだろうしなぁ。そりゃモブとはいえコワモテの男だもんな。
「おらっ!なにトロトロしてんだよ!」
「っ痛っ……!」
なっ!モブがルクの髪を掴んだ!
「………な。」
「あ?」
「たかだかモブの分際でルクに触るなぁぁぁ!」
おのれモフモフの天使になんて事を!許すまじ!
「《闇雷》」
黒の電撃がモブを襲う。
ルクにはシールドを張ったから無事だ。
「ぐおおお!おのれぇぇ!」
「この魔法は直接攻撃できるのと同時に、精神にも攻撃できる。闇属性の特徴だね。精々トラウマとして私の記憶を魂に刻み込みなよ。モフモフに害をなそうとしたその罪、重いよ?」
私のモフモフへの情熱を思い知れ。
「……レイラ、ありがと。」
「!ど、どういたしまして!」
る、ルクにお礼を言われた!
か、かあいい!
「お前、なんて魔法を使ってんだよ!」
「ん?」
「こんな強力な魔法を使えるって、お前貴族か?」
「さあ、どうだろうね?平民でも魔力が高い人もいるよ?それも、結構近くにね。」
「っ……!」
「な、お前、」
「さぁて!私達にお迎えが来てるよ?他にも誘拐された人達がいるかも知れないけど、取り合えずそっちにいこう。」
道は探索で分かってるしね。
さあ、私に続けー!
★★★★★★★★★★
さて、歩き続けて約五分。
「貴様らぁぁぁああ!私の娘を返せぇぇえ!」
剣を振り回す、何時もの悪役顔を三割増した顔の青年。
「《劫火》《絶対零度》さぁて、次は誰が消し炭になりたい?あ、それとも氷柱に串刺し?それとも氷付け?なりたくないならさっさと僕の主人(玩具)を返してね?《火炎玉》《氷花》ハ、アッハハハハハ!ハッハハハ!アハハハハハハハハッ!」
高度な魔法をいくつも乱射し、狂ったように笑う半分エルフの美少年
「ボクの契約者を返せ!さもないとこのブレスの餌食だよ!」
黒いブレスを発射する黒の鱗に空色の瞳の、チビドラゴン
「さぁて、孫を返してもらおうかのぉ。」
おそらくこの中で一番まともそうだがとてつもなく大きい剣を片手で振り回す屈強な老人。
そこは、カオスと化していた。
「な、何だよ!こいつら!化け物かよ!」
モブの皆様、ご愁傷様です。
「うーん。沸いて来るのぅ。オーディンのブレスでも使うか?」
ちょ、祖父様!?そんなことしたらモブの皆様どころか建物もろとも吹っ飛ぶよ!
「良いですねぇ!こいつらウザいですし、ちょうど良い!」
「ボクが大きくなって、オーディンと一緒にしたら二倍だよ!」
「「名案だ!!」
私達まで殺す気かぁぁぁあああ!
「こ、怖いよぅ……。」
「あ、安心しろ。ルリは俺が守る!」
クリス、多分守ることはおろか逃げる事すら不可能だよ。この面子。
「レイラ、この人間達と、ドラゴン、危険。」
「うん。知ってる。」
あいつらヤベエよ。
どうしよ、入っていく勇気がでない。
「な、何でこんな所に売り物がいるんだ!?」
「わ、わからねぇが、人質に出来るぞ!」
あ、クリスとルリが見つかった。
私とルクはちょうど死角。
「おいてめぇら!大人しくしねぇとこいつらの命はねぇぞ!」
「きゃっ!?」
「っクソ!!」
うわ、台詞ベタだね。
でもよかった。さすがに子供の人質がいるならあいつらも止まるはず……。
「何それ。面倒だからそいつらも一緒に消し炭にしよ。」
「「「「お前は鬼か!?」」」」
ウィルさん!?この中には君のヒロインがいるんだよ!?
「さて、《劫……」
「ストォォォップ!」
何マジでやろうとしてんだ!?
「ウィル!人質の無事は第一なんだよ!何人質もろとも消し炭にしようとしてんのさ!?」
「……ラ、レイラ、レイラ!」
ーギュウ!
ちょ、ウィル!?
何故抱き着く!?
「無事?怪我は?何もされてない?あぁ、本当によかった……。」
……あー、うん。
「ごめん。心配かけた。」
「本当だよ!また、また無くなるかと、思って、…怖かった。すごく怖かった。」
「ごめん、ごめんね。」
「大切だって、分からせてくれたのに、また大切だって、思えたのに、なくさないって、決めたのに……!」
「うん。分かった。分かったから。」
ウィルは少し震えていた。
よーしよしよし。大丈夫大丈夫。
ウィルの銀色の髪を撫でる。
うわっ。サラッサラだよなんと羨ましい……!
「ん……。」
ウィルは私の手にスリスリしてきた。
あ、猫みたい。ウィルも可愛いところあるんだなぁ。
「レイラー!」
「ぐぇっ。と、父様!?」
ぎゅうぎゅうするなぁ!おっさんにされても嬉しくない!
「レイラ!よかったよぉ!」
「ソラ。」
ソラもぱたぱたと飛んできた。
うん。ソラは許す。
「レイラ。すまんのぉ。すぐ助けに来れなくて。」
「いえ。私もさっき目が覚めたばかりなので気にしないで下さい。」
祖父様がよしよししてくれる。
んー。落ち着く。
『レイラ、大丈夫か?』
「え、オーディン!?」
頭の中に直接流れ込んでくるぞ!?何これ!?
『竜石を持った者は、竜に認められるとその竜と念話できるのだぞ。』
初耳なんですが!?
『まあとにかく無事で良かった。今からそちらに行く。』
………え?
そちらって………。え?
『その建物の中だが?』
私達潰れるわぁぁぁ!
「てかみんなそろそろ離れて。」
「……嫌。」
「断る。」
「嫌だー!」
「ほっほっ。」
「だぁかぁらぁ、離れろー!」
その後皆を引っぺがすのに大分苦労した。
確認はしましたが、かなり誤字脱字がある自信があります。
見つけましたら、ご報告お願いします。




