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最終回 あれから……そしてこれから……


 ――桃華視点


 一生の思い出となったキャンプも終わり、再びお仕事を頑張って毎日新しい事を覚える日常。そんな日がいくつも過ぎ、夏もピークを越え、時折涼しい風が吹くようになってきた。


 今日は休日で葵先輩の家に伺う予定。そして、今日が最後になる。葵先輩の家に伺うのは……。


 今までの思い出が頭の中を駆け巡る。基本、私の勘違いばかりですれ違ってたのがほとんどだけど。



 エントランスに着き、部屋の番号を押すと葵先輩の声と共に自動ドアが開いた。この行為も今日でおしまい……。


 エレベータに乗り、葵先輩の自宅の前まで歩き、インターホンを鳴らす。するとすぐに葵先輩がドアを開けてくれた。

 

 ずっと会社に居るのに会えない時間がとても寂しかった。空白の時間は胸が締め付けられ、中々眠れない。私は葵先輩に依存し過ぎてしまっている。ずっと、ずっと抱きしめていて欲しい、キスをして欲しい……そんな事しか考えられなくなっていた。


 だから私はこの選択肢を取った……。もう嫌だった……。



「いらっしゃい、どうぞ上がって下さい。あ、こういうのも、もう無しですね。それに言葉も不適切でした」


 葵先輩は少し申し訳なさそうな顔をして言った。そう、私はもうお客さん扱いはされない。







「おかえり! 桃華!」


「はい! ただいま! 葵!」


 今日から二人暮らしするの! もう嬉しくて嬉しくて堪らない! どれだけ今日と言う日を楽しみにしてきたか……この前に行ったキャンプ以来ですぅ!


 葵先輩はキャンプの後、しばらくして私の両親に挨拶しに来てくれた、特にお父さんと意気投合しちゃってた。沙織と咲矢も喜んでくれた。

 

 その時、沙織を見た時の葵の驚きようったら無かった。けどちょっとえっちな目で見てたから拗ねちゃったけど。その辺りがお父さんと意気投合したきっかけかも知れない。


 そして葵は言ってくれた『結婚を前提としてお付き合いさせて下さい』と。私はその場で涙が止まらなかった。そんな姿を見てお母さんが提案してきたの。『もう一緒に住んだら?』と。そして今に至ってる。



「それにしても鈴宮さんと挨拶に行っていきなり同棲を進められるとは……まあ、俺としては嬉しいんですけどね」


 私は葵をジト目で睨んだ。頬も膨らまして。


「えっ!? あ、言葉か! 俺は嬉しいよ、桃華。ってどうも会社の感じが抜けなくて……」


「もう、早く慣れてよね!」

 

 根っからのお仕事人間だからなぁ……葵は。でも実は私も普通に喋ったり、葵って呼ぶのまだドキドキしてるんだけどね。


「すみませ――ああ、ごめんごめん。家の中のものは遠慮なく使ってくれて――あっ!?」


 なんですか、その明らかに『やばい、忘れてた!』みたいな顔は。そこに何かあるんですか? テレビラックの中に。も、もしかして昔の彼女の持ち物とか!? ぼ、没収ですよ! そんな物!


「そこに何かあるんだね!? 調べさせてもらうよ!」


「やめてっ! お願い、桃華!」


 必死の形相で止める葵を制してラックの扉を開けると何か複数落ちて来た……DVD? あっ!? こ、これって!


 ひとつ手に持ち確認するとやっぱり裸のお姉さんのやつだった。


「……葵?」


「ち、違う! こ、これは桃華が最初に来た時以来使って――いや! 直しっ放しになってただけで!」


 使う? 何に使うんだろう。DVDの見る以外の使い道は……鳥さん除け? 


 付き合ってそんなに経って無いけど私はまだ葵と愛し合う仲にはなっていない。もちろんキスはしてくれるし、優しくしてくれるんだけどそこから先はまだない。

 

 正直不安しかない。でも私はこの人なら全てを捧げてもいいと思ってる。でもそれはあくまで私の言い分。受け取り手である葵がどうかまでは分からない。


 胸だけは確かにDVDのお姉さんよりも大きいと思う。でも……。


「私より美人だし、スタイルも良いし、胸も大きいね……葵は私じゃそういう気持ちにならないのかな……」


 口に出して聞いてみた。一切何も無いというのも不安になっていた。


 そんな俯く私には葵はため息を一つ吐いて後ろから抱きしめてくれ、言葉を続けた。


「桃華は小柄で可愛くて、思いやりがあって俺の中では何を置いても一番って言いましたよね? そして魅力的とも。そんな女性がずっと横に居るんです。俺だって男ですからね? 今日は……覚悟してもらいますよ?」


 言葉とは裏腹にそのまま優しく抱きかかえられ、ゆっくりと歩いて……あ、葵!? そこはベ、ベッド!? 


 優しくベッドに寝かされ、その上に葵が迫って来た。し、心臓が爆発しそうですぅ!!


「うぇ!? ま、まだ朝だよ!? あ、明るいし、そ、その!?」


 葵はそのまま重なり……沢山、愛してくれた。



 私は、大人の階段を登りきった。大好き……葵。

 




 一夜明けて朝になった。私は早起きして朝ご飯を作っている。もちろん、二人分を。


「うおっ! やばい! 遅刻するっ!?」


「大丈夫だよ、朝ご飯食べる時間は十分にあるよ」


 時刻は6時40分、徒歩五分の会社なのにこの時間で遅刻の心配をしちゃう辺りが葵らしい。


「あ、すみません、朝ごはん用意してもらって……いただきます!」


 昨日は一日中愛してもらった。最初はその、あれだったけど、いっぱい葵を感じる事が出来た。私、大人になっちゃった……。と、とっても恥ずかしかったけど、それ以上に幸せだった。


「じゃあ、今日から一緒に会社に行こ! でもまだ会社じゃないから敬語はダメだよ!」


「き、厳しいな。間違えちゃいそうだよ……」


 二人揃ってスーツに着替え玄関に立つと葵が合鍵を渡してくれた。


「これ、渡しておきますね!」


 鍵を受け取り、戸締りをしている葵を見て咄嗟に思いついた事を行動に起こした。


「よし、うん? どうしましたか?」


「えへへ……葵? 鍵見せて?」


 首をかしげつつも葵は鍵を見せてくれた。アザラシちゃんの付いた鍵を。


「ほら! ハートになったよ!」


 今までスマホカバーに付けていたアザラシちゃんを鍵に付け替え、葵の鍵と合わした。可愛らしいアザラシちゃんが合わさりハートの形を作っていた。


「はは、そういえばこれが鈴宮さんからもらった始めてのプレゼントですもんね。もう擦り切れるまで付けておきますよ」


「うふ、私もですぅ! 渡す時、凄く緊張したんですからね!」

 

 そんな昔話をしつつ二人揃って家を出て管理さんに挨拶をした。結局彼女じゃない時から勘違いされたままほんとに彼女になっちゃた。まあ、結果オーライという事で許して欲しい。


「ねえ、葵先輩、今日はあの道から会社行きたいんですけど……」


「ああ、裏道ですね。いいですよ?」


 私と葵が初めて言葉を交わした場所に立ち止まり少し目を閉じた……葵が助けてくれた場所。ここから始まったんだね……。


「ちょっと懐かしいですね。でもこの道は夜は暗いから使っちゃダメですよ! 俺は桃華に何かあったら――」


「もう、混ざってますよ? 敬語と普段使いが」


 ちょっと照れ臭そうにしている。ふふ、葵ってばそういうところは抜けてるんだから。


「さあ、今日もお仕事頑張りましょ!」


「そうですね、今日もビシビシしごきますよ!」


「……昨日いっぱいしごかれたよぉ」


 私の言葉に顔を真っ赤にしてる。ふふ、私も恥ずかしいけどこんな純情な葵が愛しくて堪らない。最高の彼氏、そして旦那様だよ! きゃはっ! 旦那様って響きがいいなぁ……。


「ちょっと、桃華!? 会社で絶対そんな事言っちゃダメですからね!? 課長と変わらないじゃないですか!」


「……むむ、課長さんと比較するんだ、ふ~んそうなんだ」


「いや、そういう意味じゃなくて! んっ!?」


 必死になっているところだけど言葉の途中でキスしちゃった! 裏道だし人が居ないからちょっと大胆になっちゃった。


「さあ、行きましょ~、葵先輩っ!」


「もう……鈴宮さんってば」


 眼鏡を上げる仕草を取った後、頭をポンポンと優しく叩かれた……そういうの嬉しいですぅ。ふにゃあ~ってなりますぅ。


 朝の澄んだ空気に大好きな葵先輩と並び出社! さて! 今日も元気いっぱい、幸せいっぱいでお仕事開始です!


完結いたしました!


いやあ、無事? 二人をくっつけれてよかったです!

今回は趣向を変えて両視点での物語進行を試してみました! しかしちょっとくどくなりすぎたかなと少々反省……。


葵と桃華はきっとこれからも思い込みの激しさですれ違うでしょうが、きっとアザラシちゃんのキーホルダーが仲を取り持ってくれるでしょう!


最後に、ここまで読み進めて頂き、お礼申し上げます!


感想や評価どしどしお待ちしております!


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