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49話 今度こそおでかけ! 


 ――桃華視点


 窓に打ち付ける雨粒の音が部屋に響く日曜日の朝。先日は人生においての汚点を更新した事件を起こしちゃった。でもそれすらを乗り越えておでかけの約束をしたのだけど……。


「雨ぇ……しかもがっつりぃ……」


 私……雨女なのかも知れない。もしくは天に見放されてるかのどちらかと思う。


「咲矢ぁ……服選んでぇ……」


 隣の部屋をノックしながら声を上げた。しばらくして咲矢が出て来たんだけども、私の気落ちした顔に引いていた。


「朝からテンション駄々下がりだな。服を選ばすと言う事は今日は例の人と会うんだな?」


 コクコク頷いて意思を表示した。待ち合わせの時間は決まっているんだけど何処に行くかまでは決めて無いんだけどね。


「……姉ちゃん、めし食ってないだろ? 顔色悪いぞ? そんな状態で出かけるのか?」


 葵先輩に会う約束した日から水分以外取っていない。だって……太ってる姿見せるのやだもん……だから必死の抵抗を試みている。


「とりあえず朝飯は食べて行きなよ。倒れたら彼氏さんに迷惑かかるぞ?」


「だ、大丈夫だもん……それにまだ彼氏じゃないし……」


 そんな私の態度に眉を寄せたかと思ったら、ズボンのポケットからスマホを取り出し、誰かに電話しだした。


『あ、咲矢です。すみません、朝早くから。ええ、全く言う事を聞いてくれなくて……はい、お願いします』


 そういうとスマホを私に渡して来た。そのまま耳に当てると……。


『こおらぁ!! 桃華! あんた一体何考えてるの!? 咲矢君の言う事聞かないなんて神に背く事と同意だよ!?』


 さ、沙織だった……あ、朝からテンション高いね。


『さ、沙織、おはよ……咲矢は神じゃないよ? 仮にそうだとしたら私も神になっちゃうよ?』


「姉ちゃん達なんの話をしてるんだ?」


 咲矢が不思議そうに私を見てきた。私もそう思う。でも会話の流れがそうなるんだもん。


『桃華、良く聞いてね。またこの前の同じ事になりたいの? 咲矢君から聞いてるよ? 訳の分からないダイエットしてるって』


 う……咲矢ぁ、姉の情報が筒抜けじゃない。


『だ、大丈夫だよ、一日程度しか抜いて無いし。倒れるまでいかないよ』


『違うの! 倒れないまでも顔色の悪い、元気の無い桃華を見たいと思う? 彼氏さんが見たいのは元気いっぱいの桃華なのよ?』


 そ、そっか……そうだよね、元気の無い子と居ても楽しくないだろうし。危ないところだった、また葵先輩に迷惑を掛けちゃうところだった。


『うん、分かった。じゃあ、ちゃんと朝ご飯食べていくね。ありがと、沙織』


『楽しんで来てね、応援してるよ! じゃ、神に変わって~!』


 電話切ろうかしら……まあ、切ったところですぐにかけ直されるだけなのでそのまま素直に咲矢に渡した。


「咲矢、私ご飯食べて来るから、後で服選んでね!」


 通話しながら手を上げる咲矢を置き、朝食を食べる為にダイニングに向かった。




 今日の咲矢が選んでくれたのはデニムコーデだった。


「今日は雨も降ってるし肌寒いからな。それにデニムなら少々濡れても透ける心配はない。かといって姉ちゃんの魅力を隠すのはもったいないから、上着を脱げば肩が見えるトップスを用意してみた。天気の悪い日にスカートは履いている本人も気は使うし、特にフレア系は自ら濡れに行くようなものだから却下して、下は機能性を重視してシンプルに白地のパンツにしてみた」


 この子……将来何になるんだろう……。スタイリストさんにでもなるんだろうか……。


「あと、白のパンツだからな。もちろん下着は白色にな。形や色には気を付けろよ? パンツ

ラインが浮かぶから。まあそれも計算してある、彼氏さんを誘惑出来るぞ?」


「ゆ、誘惑!? その、頑張っては……みる」


 咲矢はまるでハトが豆鉄砲食らったかのような驚いた顔をしていた。


「くはぁ~、姉ちゃんが大人になっていく……嬉しい反面、弟としては寂しいものがあるな。でも、頑張れよ姉ちゃん!」


「うん!」


 今日こそ距離を縮めたい、今日こそは……。




 待ち合わせの30分前にいつもの会社の最寄り駅に到着した。休みの日には朝から盲導犬の募金活動をしている大学生が見えた。もう迷彩服の方は居ないみたい。


「鈴宮さん、おはようございます。は、早いですね」


 声のした方に振り返ると葵先輩が改札横の切符売り場の方から歩いて来た。スタイリッシュなパンツに長袖のシャツ。シンプルだけどとても似合っている。


 かっこいい……。


「あ、ああの! おはようござます!」


 慌てて頭を下げて挨拶をした。まさかこんなすぐに会えると思って無かったよぉ。


「はは、会社じゃないんでそんなかしこまらなくてもいいんですよ。生憎の雨ですが、今日は羽を伸ばすとしましょうね」


 そ、そうは言われましても……いろいろやらかしていますし、緊張しますよぉ……。


「じゃあ少し早いですけど、行きましょうか!」


 え? 何処に行くか決めてくれてたんですか? わ、私正直ノープランだったんで……。


「あ、あの……何処に行くんですか?」


 そんな私の質問に葵先輩は笑顔で答えてくれた。


「ひ・み・つです。今日は楽しみましょうね!」


 そ、そんな!? わ、私まだ心の準備が!? お、お楽しみですか!? あわわ、だ、大丈夫! この前使わなかったアレもちゃんと持って来てるし……で、でもこんな日中から……ま、まだ午前中ですよ!?


 それにまだ告白もしてないんですよ? 厳密に言えば既にしたんですけど……そ、そこは順を追ってですね――


「ん? どうしました? さ、行きましょ!」


 葵先輩には2枚の切符が握られており、一枚を渡された。どうやら電車で移動するみたい……。


 なんだろう……完全に舞い上がっちゃってた……。こめ銃の最後のシーンの影響かな……。




 電車に揺られ着いた先はマーケットプレイスであり、専門店などが軒を連ねる複合施設だった。話には良く出るけど来るのは初めて……だって一人で来る場所じゃないもん。


「ここなら雨でも屋内ですから大丈夫ですよ。それにここの食べ物横丁、結構美味いらしいですよ? 後で食べ歩きしましょう!」


 館内図を受け取ると確かにいろんな飲食店が立ち並ぶエリアがあった。魅惑が満載だぁ……。また太っちゃうよぉ……。


 葵先輩の後を追うように館内に入るとみんな考える事は同じなのか、大勢の人で賑わっていた。かなり混雑しているみたい。


「鈴宮さん? 結構混んでますのではぐれないようにしないといけませんね。そ、その、良かったら手、繋ぎませんか? あ、嫌だったらいいんです! 最悪紐で結んでおけば!」


 なんか混乱している葵先輩が……さ、流石に紐で結ぶのはちょっと。でもどっちが結ばれるのかな……わ、私かな……な、なんかちょっと変な気分になっちゃいそう……確かに私は犬派ですけど。


「わ、私、犬派ですけど手を繋ぎたいです!」


「え? 犬派? あ、そ、そうなんですか? じゃ、じゃあ」


 どうやら混乱しているのは私の方だったみたい……何を口走っているんだろう……。


 温もりが手を覆った……嬉しい……でも、今日の葵先輩、なんか積極的。も、もしかしてこれはチャンスなんじゃ!? うん、きっといい風が吹いてるに違いないよ!


 にまにましながら混雑した道を進んだ。なんだろう……今までこんな人が多い事に感謝した事ないよ。ありがとう、悪天候さん!


 手を繋ぎながら行き交う人やすれ違う人を見てるとカップルさんが結構多い。わ、私達もそう見えてるのかな? でも、私と葵先輩は身長差が大きいからちょっと恋人っぽく無いかも……。なんか兄妹みたいに見えるんじゃないかな……。


 少し悲しい……もっと、もっと恋人に見える様になりたいな……。


「鈴宮さん、疲れちゃいましたか!? 少し休憩してから回りましょう。えっと座る場所は――」


「葵先輩……私、子供っぽいですよね、課長さんや梓先輩みたいに綺麗じゃないし……」


 私、おチビちゃんだし、顔も幼いし……。


「何を言ってるんですか! こんな可愛い女性居ませんよ! あっ……」


 ……え? 一瞬気が遠くなりました。え? え?


 なんか周りからこそこそと言われてる……『リア充爆発しろ』、『尊いな』え、えっと。良く分からない……リア充? こめ銃じゃなくて? ま、まあそれはそれで意味は分からないんだけど……。


「す、鈴宮さん! ちょっとこの場から離れましょう!」


 手を繋いだまま足早にその場から離れた……そ、それよりも、か、可愛いって言われた……。



「ああ……俺は……」


 比較的空いている休憩場補を見つけて腰を下ろし、葵先輩は下を向きてブツブツ言っている。ず、頭痛ですかね……鎮痛剤飲みますか?


 一応訪ねておいたけどどうやら大丈夫みたいだった。少し心配ですぅ……。


「じゃ、じゃあそろそろお昼がてら食べ歩きしに行きましょうか……」


「あ、あの……葵先輩も、か、かっこいいです……よ」


「おうふっ……」


 先程の可愛いのお礼に私からも伝えたんだけど、折角立ち上がったのにまた座り込んでしまった。だ、大丈夫かな……。


 


「おいひぃですぅ~!」


「はは、口にソース付いてますよ?」


 慌てて口元をポケットティッシュでふき取って見て見るとソースが付いていた。うう、恥ずかしい……。でもとっても美味しい~!


 食べ歩きのエリアはたこ焼きやコロッケ、たい焼きや唐揚げなどお祭りの屋台の店舗版のようなものであり、目移りしてしまうラインナップ……全部食べたい……。


「……鈴宮さんって食べてる時、ほんと幸せそうな顔しますね! なんかずっと見てたくなりますよ」


「んっ!? そ、そうですか?」


 でもそれって食いしん坊なだけじゃ……。1日ばかり絶食してたものでして。


「た、確かに食べる事は好きなんですが……お肉も付いちゃうんですよぉ……」


「そ、そうですか……」


 目線が……胸ぇ!?


 思わず顔を赤くして来ているジャケットで胸を少し隠した……うう、えっちですぅ……。


「あ、いや! その! す、すみません! そんなつもりじゃ! あ、あまりに魅力的だったのでつい……って俺!? 何言ってるんだ! 鈴宮さん、俺をぶん殴って下さい! もう脳震盪起こして立てなくして下さい! その後、気の済むまで踏みつけてくれていいですから!」


「む、無理ですよぉ……」


 大好きな人にそんな事出来る訳無いじゃ無いですか! というより人にそんな事しちゃダメですよ! でも、魅力的って……えへ、私この胸になって今一番良かったと思いました!


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