表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
36/65

36話 リュックの中身

 

 ――葵視点


 キッチンに向かう俺。寝る前に話して聞いた内容だと豚の生姜焼きとサラダ、味噌汁を作る予定だったらしい。


 もちろん、産まれてこの方それらのメニューは食べた事はあるが作った事など無い。


「えっと、スマホで豚の生姜焼き……っと」


 検索が終わると……唖然とした。


「ちょっ! なんでこんなに作り方があるんだ? どれよ!? どれを見ればいいわけさ!?」


 あまりの衝撃に自分でも驚くぐらいの声で見えない誰かに突っ込んでいた。


 静かにせねば……鈴宮さんが寝てるのに。


 足音を消しながらベッドの方を覗くと静かな寝息を立てて寝ていた……ふう、危ない危ない。


「……とりあえず一番最初のページでいっか」


 スマホを操作し味付けの項目を見たが中々に複雑であった。それでもなんとか先に進み、焼きの作業に入った所でご飯を炊く為に米を研いだ。


「自分で米炊くなんてほんと何年振りだ? 多分この前鈴宮さんが使ったみたいだから炊飯器は壊れてはないだろうけど……」


 そうこうしている間に香ばしい匂い、もとい、香ばし過ぎる匂いが漂って来た。


「うん? あっ!! 肉っ!?」


 思ったより火の回りが良かったようで片面が真っ黒、とまではいかないが焦げ跡が付いてしまった……。これは、ギリ食べれるか?


 火力調整が難しい……。てか先に肉が出来てしまったらこれ冷えちゃうんじゃ……今から米を炊く訳だし。完全に手順を間違ったな……。


「ええい、作ってしまった物は仕方が無い。次は味噌汁だ! これは焦げる心配は無い。えっと味噌汁、味噌汁っと……」


 相変わらす種類豊富なレシピが出て来るがもう迷うわない。トップページ一択だ。



 味噌汁はまあ、なんとかなった。これが一番上手くいったかも知れない。それにしても時間がかかる……もちろん段取りが悪いだけだろうが、おかげで完全に肉は冷え切った……後でレンジで温めるとしよう……。


「後はサラダか。これは味付けもしなくていいからな。適当に切ればいいだろう」


 野菜を持ちザクザクと包丁を入れていく、少々形が不揃いだが、まあ、食べれるだろう。味に変わりはないし。


「よし、後はキュウリを切ってと。うん!? 味噌汁が泡拭いてる!?」


 キュウリに包丁を入れていると味噌汁の入った鍋が地獄のようにたぎっていた。噴き出た味噌汁がジュウジュウ音を立ている。


「やばっ! いっ!?」


 よそ見をして自分の指に切れ目を入れてしまった。とりあえず火を止め指を見るとまあ、出て来る出て来る俺の血潮が。


「くううぅぅ……とりあえずティッシュ、ティッシュ!」


 マッハで数枚ティッシュを取り指に押し当てた。少々血で染まったがとりあえずセロテープで止めておいた。俺の家に絆創膏などは無いので。


「散々だな……初心者がやるとこうなるのか……鈴宮さん、料理が得意じゃないとは言っていたけど俺からすれば神の領域だよ……」


 とりあえず怪我をしていない右手で野菜を皿へと移し、一応は完成した。米も先程炊けたようだ。結果、白ご飯が一番の贅沢品となってしまった……。


 それに思ったより時間も使ってしまった……コンビニなら一瞬で手に入る物なのに。


 とりあえず料理もどきが完成したので鈴宮さんの様子を見に行ったところ、起き上がってきょろきょろしていた。


 寝起きのようであり、その仕草がとても可愛らしい。というかあまり見ないようにしていたが、パジャマごしなのに胸の主張が凄い。


 すると突然慌て出した。俺のイヤらしい視線が刺さったのかと焦ったがそうでは無い様だ。よし、平常心を取り戻して……。


「あ、目が覚めましたか? ちょうど晩ご飯が出来た所なんですが……」


 自然を装ってすみません、一部始終見ていたんですが。


「わ、私、ずっと寝て!? す、すみません! 折角のお休みをしかも晩ご飯まで!」


 顔色を見ると先ほどまでの青白い顔では無く、愛らしい顔に戻っていた。どうやら少しはマシになったみたいだ。良かった良かった。ただ、晩ご飯の件に関しては謝らねばならない。


「あ、いや、じ、実はですね。頑張って作ったんですけど、ちょっと失敗しちゃって……ど、どこか食べに行きましょうか!?」


 作ってはみたがあんな物を鈴宮さんに食べさせる訳にはいかない。しかし鈴宮さんが作った料理を見て見たいと言ったので、一応確認してもらう事にした。


「こ、これ、葵先輩が?」


 すみません、食材無駄にして……食への冒涜ですよね……。


「いやあ、料理って難しいですね……全然ダメダメでした。はは、ちょっと勿体ないですがやっぱり晩ご飯は外で――」


「そ、それ!? 怪我したんですか!?」


 目線が包丁で切った左手に注がれてる……しまった、余計な心配を……。


「あ、ちょっと、包丁でぐさっと……大丈夫ですよ、もう血は止まって――」


「ダメです! ちょっと待って下さい! 私、絆創膏持ってますから!」


 うう、鈴宮さんに怒られた……リビングに戻るやなんか凄い勢いでリュックの中身放り出してるけど。


 そのまま鈴宮さんの方に向かったのだが、散乱している衣類の中に見てはいけない物が混ざっていた。ブ、ブラとパンツが……で、でかい……。


 そんな完全に上の空の俺をしり目に鈴宮さんは手の応急処置を剥がし、持っていた少し大きめの絆創膏を貼ろうとしてくれている。


「少しだけ我慢して下さいね……あ、葵先輩! ちょっとじゃないですよこれ! 結構深いですよ!」


 どうやら血は大丈夫な子みたいだ。中には血を見て失神してしまうという子もいるらしいが、傷口をしかっかりと見て的確な場所に絆創膏を貼ってくれた。


 なんと頼りになる存在。そして後輩であろうか。梓なら『ほい、自分で貼って』程度しか言わないだろう。だがそんな事よりも気になる……その横にある下着達が……。そうか、鈴宮さんの柔らかな胸はあれに包まれているのか。


「とりあえずこれで……あんまり動かしちゃだめですよ! 傷口が開いちゃいますから!後、周りに付いた血をふき取りますので」


「あ、は、はい、ありがとうございます……あ、あの……」


 いい加減伝えてあげないとダメだろう。眼福でございました!


 二人の視線が下着に合わさった瞬間であった。


「きゃああっ!!」


「ぎゃああっ!!」


 鈴宮さんの叫び声が上がり、続いて俺も叫んだ。まさかの怪我をしている指を握られたから。その叫び声はまさにハーモニー!


 って痛いです! 怪我してる指握っちゃダメですってば!!


 罰が当たったか……。やはり神様は見てるもんだな……。



 何度も何度も頭を下げて謝ってくる鈴宮さんだけど、大丈夫と伝えておいた。まあ、ちょっとドクドク感じるけどね……。


 とりあえず怪我の処置も終わったので、改めて晩ご飯のお誘いをしたのだが、ここで事件が起こった。俺のシャツの裾を掴んで涙を溜めて上目使いで見て来た。


 こんなシュチエーション、漫画でしか見た事も無い。現実で起こり得る事などほぼ皆無に等しい現象だ。


「私、あの料理が食べたいです……」


 弱々しく語られたその言葉と姿勢に俺は理性を押さえるのに必死だ。もう抱きしめたくて仕方が無い! だが落ち着け! こんな弱ってる子にそんな事をしていい筈がない! それに抱き付くシュチエーションでも無い! 保つんだ心を!


「あ、味は保証出来ませんよ? というより確実に不味いですよ?」


「いいんです! 私はこれが食べたいです!」


 あ、そこに来てフィニッシュブローですか……。もう、俺の心は完全に鈴宮さんの虜になりました……。




 ご希望通り、俺の作った料理を食べる事にしたのだが……これがまた不味い!


「葵先輩、とっても美味しいです!」


 この子の味覚は大丈夫なのだろうか、カッチカチの豚肉に塩っ辛い味噌汁、歯ごたえ抜群の野菜達。俺が作ったとはいえ拷問の一種と思っているんですが?


「ええ~、そうですかぁ? 俺はめっちゃ不味く感じるんですけど……」


 くっ! 肉が固い! そして炭の味がする! こんな料理に価値など全くない。だが、鈴宮さんは全部綺麗に食べてくれ、とても可愛らしい笑顔を俺にくれた。


 ……惚れた。




 晩ご飯も食べ終わり、鈴宮さんが洗い物をしてくれている。俺の手を気遣ってくれて。それにパジャマ姿にエプロンを装着して……もう萌える場所がてんこ盛り過ぎてどうすればいいのか分からない。


 一通りの用事が終わり、リビングに腰を下ろしているのだが、まずはお風呂に入ってもらおうと思う。その間に俺は晩酌をさせていただこう、この胸の高鳴りを誤魔化す為に。



 ビールをふた缶ほど開けたところで鈴宮さんがお風呂から出て来た。湯上り姿も拝めるとは……それにすっぴんだ。でも普段とあんまり変わらないな。何もしてなくてこの可愛さとは……。


 まだ寝るには早いし、今日は鈴宮さんにはのんびりしてもらいたいので、引き続きこの街についていろいろ話して見る事にした。こういう時は濃い人達と知り合いなのは活きるな。


 それに鈴宮さんには口直しがてら沢山のお菓子を用意して夜を過ごす事にした。お菓子を頬張るその笑顔は清音と変わらず女子高生そのものであった。


 ちゃんと二十歳だよね? あまりのあどけなさにちょっと心配になっちゃったよ?




 気が付けばいい時間になっていたので、少々酔いの回った足取りでお風呂に入る事にした。


「湯舟は……使ってないな。鈴宮さんのエキスは抽出出来なかったか」


 おっと、いかんいかん。酔いのせいで少々気が大きくなっているというか、ふざけた事を考えるようになってしまっているようだ。自粛せねば。


 ささっと入浴を済ませてしまい、タオルを首にかけ、いつも通りリビングの方に向かった。いつも通りに。


「あ、葵先輩!? あの、あの!?」


 顔を手で隠して取り乱している女の子が居た。だけど完全に指の隙間から可愛らしいおめめが覗いてますよ? なにかいけない事でもした――


「え? あっ!? す、すみません!」


 分かった! 上、裸だからか! それにしてもこれだけで取り乱してしまう鈴宮さんが可愛らしくて仕方が無い。なんて純情な子なんだ……ディープホワイトだ。


 さて、そんなくだらない事考えて無いで早く服を着よ……。



 鈴宮さんにベッドを譲り俺はソファーで休む事にした。流石に体調の宜しくない子を差し置いて俺がベッドでまったりする訳にはいかない。


 ……一緒に寝る? と喉の手前まで出かけたのを飲み込むのに必死だったけど。


 しばらくすると鈴宮さんの方から規則正しい寝息が聞こえて来た。どうやら寝たらしい。日中も結構寝てたけど、気疲れしちゃったかな?


 それにしても良く寝る子だ。ほんと、寝る子は育つだな……まあ場所はあえて言うまい。


 さて、俺も寝るとしよう……こんな可愛い子が無補備に自分のベッドに寝ているというの事態の前に、何もしない俺の精神力は神の領域だと自負している。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ