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おまけ4 昔語り 前編

皆様ご想像の通りであるだろう展開かと(笑)

「ねえグエンじいちゃん、なんかおはなししてー!」


ロッキングチェアにゆったり座っていると、いつの間に侵入したのか、小さな手がグエンの膝をぺしぺし叩いている。


「わたし、あのおはなしがいい!めのきれいなおひめさまが、わるいやつからにげて、さいごはかっこいいおうじさまをみつけて、しあわせになるのー!」

「えーまたそれ?たまにはちがうやつがいいー」

「そうだよーべつのにしようよー。ねえグエンじいちゃん、なにかない?」


聞き飽きたというその昔話が、実際にすぐ身近であった話だと知ったら、この子たちは喜ぶだろうか。

当の本人たちから、「恥ずかしいからやめてくれ」と再三言われているのを、昔話風にアレンジして何度も子どもたちに聞かせているのはグエンなのだが。


「そうじゃのう、あまり、幸せなおしまいではないが・・・そろそろ、お前たちにも伝えておくかのう」

「なになに?どんなおはなし?」


一番年上の男の子は、戦いの話が好きだ。

年下の2人は男女の双子だ。女の子の方は、お姫様や王子様が出てくるおとぎ話が好き。

男の子の方は、兄と違って戦いよりは、動物が出てくる話が好きである。

さて、それらを網羅した話ができるだろうか。


「むかーしむかしにいた、黄昏の瞳を持ったお姫様のお話じゃ」


 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 


「二の王子!グエナレンティハルト様!」


ばたばたと、侍従が足音を立ててグエナレンティハルトの私室に入ってきた。


「どうした、騒がしいぞ?」


部屋の主が片眉を上げて不快感を表すと、侍従は「す、すみません!」とすぐに謝罪した。


「それで、用件は?」

「はっ、国王陛下が、今すぐに自分のもとに来るように、と仰せです」

「・・・何だと?」


先程よりもはっきりと怒りを表した二の王子に、侍従が震えあがる。

それに気付き、王子は少し表情を和らげる。


「いや、ご苦労だった。すぐに向かうと伝えてくれ」

「は、はいっ」


来た時と同じように、侍従は慌てて国王のもとに戻っていった。

二の王子は1つため息をつくと、国王陛下が待っているであろう王室へ、速足で向かう。

どうせろくでもない用事だろうが、少しでも遅れると伝えに来た侍従が罰せられかねない。


ここはシューケント王国。

大国に囲まれた小さいこの王国が攻められずに治世をしいてこれたのは、先王までが大変優秀だったからに他ならない。

しかし、現国王のことは、国民の誰もが口をそろえて言うのだ。


「愚王だ」と。


国政は大臣以下にすべて任せ、自分はあちらこちらで気に入った女を王城に迎え入れ、ハーレムを作って楽しんでいるだけ。

おかげで世継ぎはたくさんいる。王子13名、王女15名。

そしてそれぞれ、自分の子どもを次の国王にしようと企む者たちのおかげで、王子たちは常に命の危機にさらされている。

そのため、小さい頃から耐性をつけるために毒を少量ずつ体内に取り入れたり、剣や馬、槍、体術などの訓練をさせられたりと、楽しい幼少時代の思い出は何もない。

それは、第二王子であるグエナレンティハルトにとっても同じだった。


彼はこの名前が嫌いだった。

グエナレンティハルト・フォン・シューケント。

長い上に、それを付けたのが愚王である父だと思うと、ぞっとする。

身分こそ第二王子だが、母である王の愛妾が平民出であるため、自分がこの国を継ぐ子可能性は限りなくゼロに近いと考えている。


むしろその方がありがたい。

国王は自分の欲望のことだけしか考えておらず、国政を握る重臣たちも、自分たちに富と権力を集中させることのみに尽力している。

数多くいる妃たちは自分の子どもに国を継がせるために躍起になり、他の子どもたちを蹴落とすためにあれこれ画策する。

そのしわ寄せはすべて国民にいくのだ。

重税に次ぐ重税で、国民は限界だ。

早く誰かクーデターでも起こして、この国の重役を一掃してくれないかと、二の王子は常々思っている。

自分が中心になって起こそうと考えないのは、その後を考えてだ。

王族である自分がクーデターにかかわれば、今の王政を倒した後に担ぎ上げられ、国の中心に据えられるかもしれない。

二の王子は自分が国を動かすことに全く興味がない。

できれば、どこか田舎の小さな村に引っ込んで、畑仕事でもしながらのんびり暮らしたいのだ。

しかし、実際にクーデターが起きれば、自分も命を奪われるかもしれないのだが。




王室を守る衛兵に向かって1つ頷くと、衛兵たちは王室のドアを開ける。


「第二王子グエナレンティハルト、参りました」


すでに第一王子であるシャレンが王の前に立っていた。シャレンはグエナレンティハルトの1つ上で、最近は国政にもかかわるようになったらしいと聞いている。

顔を合わせるのは久しぶりだが。

王座には現シューレント国王ガレストの姿がある。

そしてその横に、もう一つの人影。


(・・・誰だ?)


「おお、よく来たなグエナレンティハルト」

「国王陛下、急ぎの用とのことでしたが・・・」


グエナレンティハルトは決して、国王を父とは呼ばない。

父だと思いたくないという意思の表れなのだが、周りの者は二の王子の身分が低いため、遠慮していると勝手に思っているらしい。


「シャレン、グエナレンティハルト、今日はお前たちに見せたいものがあってのう」


そう言うと、その手に持っている鎖をじゃらりと鳴らした。

鎖がつながっている先は、もう1つの人影・・・王座に近づいて初めて気づいたが、女だ。

その華奢な首が折れてしまうんじゃないかと思うほど立派な首輪が嵌められ、そこからじゃらじゃらと鎖がつながっている。

二の王子は眉を顰めそうになるのをどうにか堪えた。

また、どこからか女を捕まえてきたのか。

しかも、この様子だと、相当抵抗したのだろう。

よく見ると、栗色の短い髪は乱れてぼさぼさ、女が着ているワンピースは薄汚れ、あちこちちぎれている。

服から出ている部分だけでも、痣や擦り傷など、たくさんの怪我が見て取れる。

その顔は俯いていてよく見えないが、絶世の美女という雰囲気ではない。

なぜそこまでしてこの女を、一国の王に献上したのか。


「この女は、ダーレンス侯爵が見つけ、ぜひわしに、と持ってきたものなんだが・・・」


そこまで言うと、息子たちに向かってにやり、と黄ばんで汚い歯を向けて笑う。


「大変貴重なものだ。ほれ女、顔を上げろ。目を見せんか」


王が鎖を引っ張ると、女は苦しげに声を上げたが、なかなか顔を上げない。


「早くせんか!」


イライラした様子で王が鎖をグイッと引っ張ると、女はやっと顔を上げた。

その一瞬、自分が女の目に吸い込まれたかと思った。

両の目は、上が橙、そして徐々に色を変え、下の方は紺色であった。

まるで、夕焼と夕闇が同居している、黄昏の空の色。

女はすぐにまた顔を伏せてしまった。


「今ので見えたかのう?」

「父上、それは、その目は・・・」

「おおシャレン、見えたか。そうじゃこの目じゃ。これが『オッディス』と呼ばれる者たちじゃ」

「『オッディス』・・・?」


グエナレンティハルトも初めて聞いた名だ。


「『オッディス』は、このように特殊な色の目を持つ者たちじゃ。昔はたくさんいたらしいが、狩り過ぎてしまったのか、最近ではめったに見ることができなくてのう。生きている間に出会えるとは、わしは幸運であるな」


ほっほっほと腹を揺らしながら笑う様は、大変醜いと思うが、表情には出さない。


「『オッディス』は滅多におらん。だからこそ、シャレン、グエナレンティハルト、この貴重さが分かるお前たち2人にだけ、見せたというわけじゃ」


つまり、新しいおもちゃを手に入れて見せびらかしたいけれど、まだ聞き分けがよくない幼い王子たちに見せると吹聴して回ったり欲しがったりと面倒だから、分別わきまえている(ように見える)自分たちが呼ばれたのだろう。

まったく面倒くさい。

しかしあの女の目には強い光を感じる気が・・・。

隣のシャレンを見ると、彼もまた、何か考え事をしているようだった。


「それにしても、醜いのう。もう少しマシななりにしておけ」

「はっ」


控えていた使用人たちが女を連れていく。

おそらく、侍女たちのところに連れて行ったのだろう。

王の訪れに備え、体を磨き上げるために。

グエナレンティハルトは席を辞す。

普通、王子ともなれば護衛をつけるのだろうが、生憎そこまで信頼のおける者がこの国にいないため、グエナレンティハルトは1人で行動している。

以前付けた護衛の者に、危うく暗殺されそうになったこともある。

先程の王室のやり取りを思い出し、国王の新たな愚行に気分が悪くなり、まっすぐ部屋に帰るのをやめて書庫に向かう。


(『オッディス』・・・)


国一番の蔵書数だ。何らかの書物があるのではないかと思ったが、時間をかけて探しても出てきたことは少しだけ。


『オッディス』は一部族であったこと。

『オッディス』族は美しい虹彩を有するが、あとは他の人と何ら変わりないこと。

王族や貴族がその虹彩を手に入れようとして狩り尽くされ、絶滅に瀕していること。


(狩り尽くされって、獣じゃあるまいし)


国王も言っていたが、おかしいではないか。同じ人間を『狩る』などとは。

余計に国王への怒りと侮蔑の気持ちが高まったところで、書庫を出ることにした。

思ったより、時間が経ってしまったらしい。

外はもう、日が暮れようとしている。

私室へ向かう途中、中途半端に開かれたドアから聞きたくもない男の声が聞こえた。


「お前の瞳は不思議よのう。夕焼と夜の闇を混在させたような色をしておる。だからほれ、この黄昏の時間に抱くのが、一番とは思わんか?」


おぞましい内容に、グエナレンティハルトは鳥肌が立った。

確かこの部屋は、使われていなかったはずだが、国王によって今日、閨に指定されたということか。

こんなところに一秒でもいたくないと、足早に立ち去ろうとした時、王に問いをぶつける声が聞こえた。


「国王様は、ご存じないのですか?」

「何をじゃ?」

「オッディスの女を抱くことについて・・・」

「だから、何のことを言うておる?」


雰囲気が一転して変わったことに驚き、グエナレンティハルトは足を止めた。

女は何を言っているのだろうか。


「ご存じないのでしたら、構いません。どうぞ抱いてくださいまし」

「嫌な言い方をするのう。気になって仕方ないではないか。言うてみい」

「では、申し上げます。・・・オッディス以外の男性が、オッディスの女を抱くと、男性の・・・その・・・」

「なんじゃ、申せ」

「あの・・・男性の・・・象徴とも言える、あそこが、腐ります」


ためらいながら言う女の言葉の最後に、グエナレンティハルトは驚いて固まってしまった。

それは、国王も同じだったらしい。


「は・・・?あそこ、とは、アソコ、か?」

「はい。文献等には残されないようになっておりますが、民族性を守るために、特殊な呪いが掛けられているのでございます」

「そ、それは本当か・・・?」

「そう、言い伝えられております。私自身、男性とまぐわったことがないため、この目で確かめたことはないのですが・・・国王様、御身でお確かめになってはいかがですか?もしかしたらただの与太話かもしれませんし」


どうなさいます?と可愛らしい声で尋ねられると、国王はすぐに寝台から降りたようだ。


「そ、そんなこと、国王であるわしで試すものではない!ああ気分が悪い!メアリのところへ行く!」


そう叫び、国王は最近気に入っている何人目か分からない、自分とそう年が変わらない側室のところへ向かった。

二の王子は王が行ってしまうのを廊下の陰から見送る。


「バッカじゃないの?」


先程とは打って変わった女の声が部屋から聞こえてきた。


「何よ腐るって。そんなにアソコが大事なわけ?頭ん中腐った愚王のアソコなんか、いっそ腐ってしまえばいいのに」


愉快愉快、と笑いながら、女は寝台の上で大の字になって寝転がっている。


「そんな力あるなら、先祖がとっとと使ってるわよバカたれが。そんなことも分からないなんて、本当に愚王ね」


どこか投げやりにそう呟く。

グエナレンティハルトが部屋に入ろうかどうしようかとドアの陰で考えあぐねていると、女が先にそのことに気付いた。


「誰!?」


ドアが開いたと気付いた時には、グエンは背後から首を絞められ、何か尖ったものを押し当てられていた。


「・・・あんた、名前が長い方の王子ね。聞いてたわけ?」


女にしては強い力だ。おそらく抵抗する前に、首を掻き切られるだろう。


「ちょうどいい。ここから脱出するわ。あんた、案内しなさい。断るなら、今ここで殺す」


尖ったものを押し付ける力が強くなる。


「分かった。分かったから、ちょっと待て」

「何」

「その格好でうろつくのはまずい。それに、その怪我・・・放っておくと化膿するぞ」


国王の訪れを待っていたのだ。ろくな格好はしていないだろうとあたりをつけて言うと、女も自分の服を見て納得したらしい。


「どうする気?」

「とりあえず、俺の部屋に行く。廊下にはほとんど使用人はいないはずだ。ついてこい」


王が気に入らない使用人を片っ端から首にしたり手打ちにしたり手籠めにしたりした結果、この城の使用人は極端に少ない。

王子であるグエナレンティハルトですら、風呂や着替えなどは自分で行う。もともと、人にやらせるのは好きではなかったので、その方が自分には合っている。

道中、誰にも会わないように気をつけながら、女と自室に入る。

もちろん、首には何かを突き付けられたままだ。

ドアを閉めてから、ようやくほっと息をついた。


「簡単な薬はあるから、手当てを先にしよう。服はそこにある物を適当に来てくれ。男物しかないが、今よりはマシだろう」


指差しながら説明するグエナレンティハルトに、女は固い声で尋ねる。


「何を考えている?親切にして油断させる気?」


そう思うのも無理はないだろう。

彼女は無理やり連れてこられたのだ。

自分が何もしないと言ったところで、信用できないはずだ。


「何も考えてなんかない。これ以上、あのどうしようもない男に泣かされる女を増やしたくないだけだ。・・・それに、あなたの目は、とても綺麗だったから」


一瞬しか見えなかったあの目。

その美しさに、魅了されてしまったのだ。

それを守りたいと思った、ただそれだけ。


「・・・信用できない」

「それなら、手でも縛っておけばいい」


本気の声音を感じ取ったのだろう。女はようやく、首につきつけていた小さなナイフを離した。


「変な真似したら殺す」

「分かった。とにかく手当てしよう」


女の方を振り返り、グエナレンティハルトは叫びそうになった。

国王の趣味なのだろうか。女が着ていたものは到底、服とは呼べないものだった。

上質な布なのだろう、手触りのいい極薄の夜着からは、柔らかそうな胸、しなやかな腰など女の体の線がはっきり浮かび上がっている。

17歳、しかも今まで女性とほとんどかかわってこなかった二の王子には刺激的すぎる姿だ。

慌てて後ろを向くと、女が「何よ」と不審そうに言う。


「・・・すまないが・・・先に着替えてもらえないだろうか」


そう絞り出すと、女の方が笑い出した。


「あんな男の息子にしちゃ、可愛いのねーあんた」




グエナレンティハルトの服を適当に着込んだ女を座らせ、傷に消毒薬をつけ、包帯を巻く。

手慣れたその動作に、女の方が驚いたようだ。


「王子サマなのに、こんなこともできるの?」

「よく傷を作っていたからな。大したことないときは、自分で手当てしていた」


使用人も少ないし、と心の中で付け加える。

城勤めの医師もいたのだが、ずいぶん前に首になっている。

確か、その当時のお気に入りの側室の診察をした際に医師が側室の裸を見たからだったか。

くだらない。

女は物珍しそうに手当てする手元を見ている。

あの、美しい目で。


「そういえば」


女の目をちらちら見てしまっている自分に気付き、話題を変えることで視線を逸らす。


「首輪は取ってもらえたのか?」


初めて見たときには、重厚な首輪をつけられていたはずだ。


「あーあれ。従順なふりしてたら取ってもらえたわ」

「従順?目を見せまいとしてなかったか?」


王室でのやり取りを思い出し、二の王子が疑問をぶつける。


「あー・・・一応、オッディスの目は、家族にしか見せないものだから」


女の声が少し沈んだのに気付き、二の王子の心には申し訳なさが沸きあがって来る。

「だから・・・『これからわたくしを愛してくださる国王様にだけお見せしたかったんです・・・国王様の息子とはいえ、他の男に見せるなんて・・・』ってウルウルして言ったら、あっさり騙されたわよあのバカ」


からからと笑う女の、声色の変わりように驚く。


「首輪だって、『こんなものがあっては、わたくし・・・国王様へ十分ご奉仕できませんわ・・・』って言ったら簡単に外してくれたわ。何させるつもりだったのかねーあのくそオヤジは」


女は頭の回転がよく、肝が据わっているらしい。

あの状況で、すでに逃げることを考えていたのだろう。

目に強い光を感じたのは、グエナレンティハルトの気のせいではなかったらしい。


「目を、隠すものがいるか?俺にも見せない方がいいだろうし、逃げるなら余計に隠した方が・・・」


そう言いながら、何かいいものがないかと探していると、女が笑う気配があった。


「ありがと。あんた、いいやつだね」

「・・・別に」


女の素直な笑顔が直視できずに、目を逸らす。

それを勘違いしたのだろう、女がグエンの顔の前に急に現れた。


「うわっ」

「気にしなくていいよ。一度見られたんだから、今更隠したって仕方ないし。今更、『未来のだんな様にしか見せません』って言う気もないし。でもそうだよねー、逃げる時どうしよう。目が見えないと困るし、目を見られても困るし」

「今までは、どうやって暮らしてたんだ?」

「前髪で隠してたの。ここに来る前に目が見える長さまで切られちゃったけどね。額にやけどの跡があるって言っておけば、前髪が必要以上に長くても不審に思われなかったし。念のため、火傷作っといたから」

「・・・は?」

「ほら、強風とかで前髪が流れちゃうときあるでしょ。そういう時は、目をぎゅっとつぶっておけば、みんな額の火傷跡を見るから」


そう言いながら、女は前髪を片手で上げた。額には、大きな火傷の跡が痛ましく残っている。


「自分で焼いたのか?」

「うん。保険よ、保険。オッディスが生き抜くのは大変なのよー。後は、護身術代わりに戦い方を習ったりとか」


どうりで身のこなしが素早いわけだ。油断していたとはいえ、一応鍛えているグエナレンティハルトを出し抜いたのだから。


「これから、どうするつもりだ」

「逃げる。人が多いところじゃなきゃ、どこでもいいわ。森なら1人でも暮らせる自信があるし。とりあえず、追っ手が来ない場所まで連れて行ってもらおうかな」

「分かった」


自分の行動の何がよかったのかよく分からないが、女は自分を信用したらしい。

もう、ナイフを突きつけようとはしなかった。


「あんた、名前なんだっけ?」

「グエナレンティハルト・フォン・シューケント」

「なっが!長すぎじゃないそれ?グエンでいいや。いいよね?グエン」

「・・・別にいい。あなたは?」

「イリア」

「・・・可愛い名前だな」


そう言ってから、グエンははっとした。

思ったまま言ったまでだが、まるで口説き文句のようではないか。

しかし、女--イリアは別の意味にとったらしい。


「名前負けしてるって思ってるんでしょ。家族もそう言ってた。だから、みんな私のことは、『イル』って呼んでる。『イル』でいいよ、グエン」


あははと笑いながら、軽い調子でイリアは言う。


「名前負けなんて思ってない・・・イリア」


そっぽを向きつつ、名を呼んだ小さな声は、本人には届いていたらしい。

イリアは小さく笑って、「ありがと」と言った。

グエナレンティハルト、グエナレンティハルト・・・って長すぎじゃー!!!←自分でつけたんじゃん


打ち間違えがあるかもしれません。自信があります(笑)


後編はもう少し時間をいただきます。

思ったより内容が膨らんでしまい・・・(汗)

お待ちください。

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