おまけ1 おいくつですか?
ここから、どんどん登場人物が壊れていくかもしれません。
ご了承ください。
タシバ村に日常が戻ってきて数日経ったある日。
朝から狩りに出ていたザント、リーザ、トマが帰ってきたので、ナオはグエン宅で一緒にお茶を飲んでいた。
グエンは用事があるとのことで、村のあちこちを回っているらしい。
「ねーねーナオ。ナオって歳いくつ?」
急にリーザが尋ねてきた。
「・・・あれ?言ってなかった?」
「聞いてないよー」
椅子から足をぶらぶらさせながら、リーザに言われる。そういえば、確かに話した覚えがない。
「今年21になりました」
「「「え」」」
「え?」
さらっと答えたナオに対し、3人は固まってこっちを見ている。
「嘘!うそうそ21!?私より3つも上!?」
「僕、同い年くらいかと思ってたよ!」
「私も!」
2人の会話で、リーザは18歳、前に聞いた時にトマは2つ下と言っていたから16歳だとナオは分かった。
21なのに、16だと思われていたのか・・・。
「ナオ、その目の人はみんな若作りなの!?」
「それとも、若返りの薬草とかあるんじゃ・・・」
「あるの!?そうなのナオ!??」
「ちょ、ちょっとリーザ、落ち着いて!トマ君も、そんなのあったらとっくに偉い人が独占してるでしょ」
鼻息荒く迫ってくるリーザを椅子に座らせ、ナオは冷静に言う。
「だって、21って・・・ねえ」
「見えない?」
「「見えない」」
「・・・2人揃って言われると、ショックかも・・・」
(そりゃあ、私はリーザみたいに大人っぽい体つきでもないし、昔からどちらかというと下に見られていたけど・・・)
しょんぼりとしたナオは、ふと、先ほどから黙っているもう1名に顔を向ける。
「そういえば、ザントさんはおいくつ・・・」
がたん。
「おら、部屋の模様替えすんだろ。先行ってっからな」
ザントは椅子から立ち、カップを流しにおいて、さっさと廊下に出て行ってしまった。
「・・・ねえリーザ、ザントさんていくつなの?」
振り向くと、笑いたいのをこらえている顔が2つ、そこにあった。
「わ、私の口からは・・・ぷぷっ、言えないかな・・・?」
「ナ、ナオさん・・・くっ、本人に、聞いて・・・?」
「うん?分かった。2人とも、ゆっくりしていってね」
そう言うと、ナオもカップを流しにおいてからザントを追いかけた。
その背中を見送る姉弟。
「トマさんや」
「なんだいリーザさんや」
「一刻も早くここから撤退した方がいい気がするのは私の気のせいかのう」
「奇遇だねえ。僕も同じことを考えていたのじゃよ」
そういうが早いか2人は、使った4つのカップを洗い、さっさと外に出る。
「あ、グエンさんはどうする?」
「んー、外で捕まえよう。いつ帰ってくるかわかんないし」
「了解!」
姉弟は、外から2階をそっと見上げ、そそくさとグエン宅を後にしたのだった。
階段を上がると、ザントはすでにナオの部屋で待っていた。
「何を動かすんだ?」
「あ、えっと、その棚をベッド脇に持っていこうかと・・・」
聞くが早いか、ザントはさっさと棚を持ち上げ、ナオが指示した方へ持っていく。
以前、自分で何とかできないかと持ち上げたときは、1mm浮かすのがやっとだったのに。
「こんな感じか?」
「あ、そうです!ありがとうございます!」
ほうきで棚が置いてあった床を掃く。
ナオが来る前からずっと同じ場所にあったのだろう。埃が積もっている。
集めて捨てると、ザントが壁に寄りかかってこちらを見ていた。
「何ですか?」
「別に」
「それで、ザントさんはおいくつなんですか?」
「おまっ!なんで今聞くんだ!」
「先程、答えを聞けなかったので」
ナオがザントの目をじっと見ると、ザントは顔を横に向けて視線から逃げる。
「・・・好きな人の年齢も教えてもらえないんだ・・・」
ぽつりと寂しそうに言うと、ザントが動揺したのが分かる。
「・・・」
「・・・」
ナオがザントの横顔を見つめながら辛抱強く待っていると、ようやく重い口が開いた。
「・・・19」
「・・・え」
2人の間に、沈黙が下りる。
「えぇっ!嘘ですよね!?19!?本当に19!!?」
「うるせぇ連呼すんじゃねぇ!」
「まさかの年下です・・・25前後かと思ってたのに・・・」
「そんな老けてんのか俺」
「いえ、私が21なのでそのくらいかなって」
「・・・お前と比べれば大抵のやつらは年上になっちまうぞ」
「どういう意味ですか!」
怒って向かってきたナオの頭をザントは片手でがしっと止め、「そのまんまの意味だよ」と少し笑って言った。
ぺいっと横に向きを変えられ、ナオは危うく転びそうになったが、何とか踏みとどまった。
改めて、ザントの全身をじっくり見る。
「ザントさんが19歳ですか・・・」
「うっせぇ。生意気な顔してんじゃねぇよ」
「な、生意気って・・・。私の方が年上なんですからね!年上を敬ってくださいよ!」
「年上ねぇ・・・」
ナオは腰に手を当て、えへんと胸を張って言う。
「そうです年上です。私の方がお姉さんなんですから、頼ってくださいね?」
ナオは一人っ子だったので、兄弟がうらやましかった。
下の子のお世話を焼いてみたくて仕方がない時期があったのだが、目のせいで、村の他の子たちとの接触を避けていたため、その欲求を満たすことができずに今に至る。
この村に来てからも、周りの人に頼ってばかりだ。
たまには、頼りにされたい、必要にされたいと思っているため、今日は必要以上にお姉さんぶってみた。
・・・のだが。
「・・・ザントさん、この体勢は何でしょう・・・?」
いつの間にか、ナオはベッドに押し倒され、上からザントが覆いかぶさっている。
気のせいだろうか、既視感を感じる。
ザントがナオの顔を見ながら、まじめくさった顔で聞いてきた。
「年上なんだろ?」
「え、ええ」
「年上は、どんな時も冷静だよな?」
「ま、まあ、長く生きてる分、いろんな経験してますからね。少しのことには動じないというか・・・」
「そんでもって、年下のちょっとしたイタズラくらいは余裕で受け流せるよな?」
にやあ、と笑ったザントを見て、ナオは血の気がさあっと引くのを感じたが、時はすでに遅かった。
「あ、ちょ、や、ザントさ、あっ・・・・・・」
「おーい、グエンさん、こっちこっちー」
帰宅途中のグエンに声をかけてきたのはリーザだった。
隣には、弟のトマもいる。
「なんじゃ?」
「あー、えっとー、今、帰らない方がいいと思う」
「うん、たぶん、その方がいいと思う」
2人の微妙にぼかした言い方に、グエンは察する。
「・・・まだ明るい気がするんじゃがのう」
「うん、まだ明るいんだけどね・・・」
「仕方ないんじゃない?あの作戦の前はそんな余裕もなかったんだから」
一緒に狩りに出たリーザとトマには分かる。
ザントは今日、がむしゃらに狩っていた。3人分を1人で狩り尽くしそうな勢いだったのだ。
2人には、欲求不満を狩りで発散させているようにしか見えなかった。
「・・・わしの家なのに」
「グエンさん、あの2人、さっさと追い出した方がいいんじゃない?」
「それか、グエンさんが新しい家建てちゃう?」
くすんと落ち込むグエンに、姉弟は両側からああだこうだ言いながら、とりあえず自分たちの家にグエンを連れていく。
「そういえばグエンさん、ナオの歳知ってる?21歳だって」
「・・・数え間違えておるのかのう?」
この日からしばらく、タシバ村の話題はナオの年齢で持ちきりだったということである。
おまけ編は、毎日投稿できないかもしれません・・・。
なるべくがんばります!




