13
短いです。
バランス悪くてすみません・・・。
夜の森の中を、3つの人影が走り抜けていく。
1つは、闇に溶けそうな黒。
その黒を追いかけるように、男が2人、草をかき分けながら走っていく。
「おい、お前はそっちから回り込め!」
「こっちですか!?」
「聞いた話じゃ、この先は崖だ!逃がすなよ!」
「はい!」
指示を出してから、男は前を行く黒い影を追いかける。
意外とすばしっこい。
この数か月間に慣れたのだろうか、迷いなく森の中を走っていく。
(簡単に捕まえられると思ったが、そうもいかないか)
しかし、こちらは男が2人。
追い詰めれば、勝ったも同然だ。
近くの村でオッディスの女について情報収集をしていたら、かなり年輩の男が声をかけていた。
そいつは「隣の村から来たのだが、うちの村に怪しい女がいる」と言った。
ただ、女の情報を流したのが自分だとばれたくないから、適当な理由をつけて女を村から追い出すのでその時に捕まえてほしいと言われた。
追い出すのは今夜。
年輩の男の案内で、村の近くに隠れ、女が出てくるのを待つ。
村から出て、しばらくは気付かれずに尾行していたが、草を踏みしめる音で気が付いたのだろう。
突然、女が走り出した。
女は、闇に紛れるために黒い布をまとったようだが、あいにくと今夜は満月だ。
真っ黒な布が、木々や草の緑から浮かび上がって見える。
追いかけるのは、簡単だった。
木々が多い場所に入り、黒い影を見失う。
慌てるが、がさがさという音で方向を定める。
「逃がすかっ!」
命令を下した主は、それでなくても一旦は手に入りそうだったものがなかなか手元に来ずに相当ご立腹らしい。
これ以上長引けば、自分たちの首も危うい。
音を頼りに走り続けると、開けた場所に出た。
5m先には崖、そしてその崖のすぐ前に、黒い影が立っていた。
「来ないで!」
影が、凛とした声を発する。
思わず、足を止めた。
横の森から、仲間の男も出てきた。
「落ち着きな、お嬢さん。そんな端に立ってたんじゃ、危ない。とりあえずこっちに来な」
足を踏み出そうとすると、「一歩でも近寄ったら崖から落ちます」と言われた。
「あなたたちは、命令を聞いているだけだと、分かってはいるんですが・・・」
そう前置きをしてから、黒い影は、話し始める。
「狩りをするのは、生活のため。それは分かります。生き物はみな、いろいろなものから命をもらって生きている。では、私たちを狩るのは何のためですか?綺麗だから欲しい?珍しいから欲しい?私たちは人間です。宝石や工芸品のように、物じゃない。生きているんです。それなのに、ただの身勝手な私利私欲のために、今までに何人が命を落としてきたか・・・」
黒い影が、フードを取る。
両の目が、男たちを見つめる。
月明かりに輝く、水色と深緑。
「もう、こんなこと、終わりにしましょう。私は、誰の物にもなりません」
そう言い置いて、黒い影はゆっくりと後ろに倒れた。
実際は数秒もかからなかったであろうその動きが、男たちの目にはスローモーションに映る。
完全に影が消えたとき、男は本来の目的を思い出した。
「お、おい!」
長身の男がもう1人に声をかける。
2人は慌てて崖の下を覗きこが、すでに遅かった。
黒い布が一瞬ひらりと舞うのが見えたが、あっという間に月明かりの届かないところまで落ちていった。
この崖は、誰も下に降りたことがない、底なしの崖だそうだ。
石ころ一つ落としても、いつまでも何の音もしないらしい。
地の底までつながっているのだろうか。
自分を守るため、崖から身を投じた少女。
これでよかったのだろうか。
男は自問したが、その答えは返ってこない。
「・・・帰るぞ。シャマール様に報告だ」
もう1人を連れ、男はその場を後にした。




