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完敗




バンッ!!!!!!

「ぅおーい。起きたかぁダス、ト……」

「げ、モップ頭!!」


一通り支度を済ませ、いざ王の間に行こうとした時だった。

アイツだ。

相も変わらず紫暗の髪はゆるいウェーブがかかっていて揺れている。

タレ目が大きく見開き、こちらを凝視している姿はまるで彫刻のごとく綺麗だった。


「な、何よ。」

「別に。」


…………ポプリには悪いけど、やっばこのかっこ似合わないのかも。王様が気に入ってくれなきゃ気分が変わって殺されるかもしれないのに。………それ困る!!


「………ってモップって俺のことかゴミ溜めが。」

「今頃!?…アンタ以外に誰がいるっていうのよ!!よくも私を~~っ」

「あぁっ急に動いたら駄目です!!傷が痛みますでしょう!?ゼルディ様も淑女の部屋に断りもなしに入るとは!!心配して来たなら静かに入室なさいませ!!」

「心配?誰が。ウケるんですけど。そんな暇じゃないのよ俺は。」

「じゃぁ来んな。」

「そんな言葉遣いして良いのかぁ?まだ殺処分の件は保留なんだぜ?」

「ぇ、」

「ばーか嘘だっつーのバーカ。」

「ふ、ふふふざけないでよモップ!!ワカメ!!茄子のヘタ!!」

「…茄子って何かは分からんが馬鹿にしてんのは伝わった表へ出ろ。」



ヒヤリとした。止めてよそういう冗談。


…揺らいじゃうじゃんか。




「これからこの部屋出んのよばーかばーか!!」

「餓鬼。」

「あああんただってさっき言ったじゃない!って痛い!!足痛いっ!!」

「お、落ち着いて下さい、お召し物が汚れます。」



地団駄を踏んだらピキッと電気が走ったみたいに痛かった。あぁ、早く治って。私の治癒力頑張って!!

そんな私を横目に肩をすぼませヤレヤレと手をあげるモップ頭。

ムカつく。本当ムカつく。


「…まぁ冗談はさておき、俺は迎えに来ただけなんだけど。」

「迎え?」


訝しげに見やれば、先程の馬鹿にした態度はどこへやら。恭しくお辞儀をしてみせてくれている。

なんだ、呪いか?呪いをかけているのか?


見据えていると、伏せていた瞳とぶつかる。

好戦的な、射ぬくような鋭い眼差しに嫌でもドキリとする。


「騎士団第一部隊スペード、隊長のゼルディ=ライトニング。本日より不本意ながらもあなた様の護衛の命を預かり受けました。」

「は?」

「王の間まで案内せよとの命令を受けたため、この通り、参上した次第であります。」

「ちょ、」

「文句がおありなら我が主君に。」


失礼な単語が含まれていた気がしたが、そんなことより、主君って、王様ってことじゃないか。

………無理だ、完敗だ、なんも言えないわ!!!!



「ブッ…くくっ。百面相だな。」

「うぅっ!!」


嘘だと言ってくれ。何だって護衛なんか私に付けるのよ……逃げるとでも思われてるのかな。

逃げ場所なんかないのに。


膨れて睨み付けても、なんのダメージも与えられない。現に私の護衛だとほざいた輩はまだ恭しく振る舞っている。

馬鹿にしてる。


「さぁ行きましょうか。少しは小綺麗になったが貧乳が隠せていないダスト様?」

「……ここに矢があったらアンタに真っ先に当てるわ。」

「弓の心得もおありなのか、我がダスト様は。感服致しましたよ?その小刻みな揺れは弓をいる前の準備体操ですか?あぁだから先程から傷ついた足で地面を蹴り、痛みに耐えながら震えていたのですね。」


違うわ、怒りでうち震えているんだっ!!!!


「っんもうっ!!ばーかばーか、……っバーカ!!!!」

「アハハハハハ!!馬鹿はお前だよ。」

「…ふぬぅっ!!」

「………ゼルディ様、我が君をこれ以上いじめないでください。」

「楽しくてつい。」


「全然楽しくなーーーいっ!!!!!!!!!!」





男に口で負けた。

ぐぅの音も出ないとはこの事だ。







……ただ、



コイツとのやり取りの間だけは、変なことを考えずにすんだのが少しだけ癪だった。






読んでくださってありがとうございます\(^^)/

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