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ひとりぼっち




「つ、疲れた。」


部屋に戻って第一声がこれだった。

なんとか、ガクガクの足を踏ん張らせてベットに座る。ふとドアの方を見れば、私が迷わないようにと付いてきたゼルディが何かを考えているようだった。



「……?」

「お疲れ様でございます。シエル様。」

「あっ、ただいまポプリ…ってなんで名前、えっポプリってエスパー?」

「フフフ、キャロル様から魔法の伝令があったのです。他のものたちも、もう知っているでしょう。」

「へぇ~…やっぱ凄いんだね、キャロルって。王様もなんか凄い神々しかった。本当すっごい緊張した~。」

「そのわりには言葉遣いが壊滅的だったぞ。俺はお前が不敬罪になるかと思ってヒヤヒヤしたわ。キャロル本人だけならともかく、王の目の前で、しかも元帥に悪い印象与えるんじゃねぇよ。ったく、無礼にもほどがあんだろ。お前、高校とか言う場所で何を学んできたんだ。」


私を哀れに見ながら、ゼルが一気に捲し立てる。

…おっしゃる通りです。興奮して忘れてたけど、相当私無礼だったと思う。元帥さんの嫌悪に満ちたお顔が今でも忘れられないよ…。


「うぅ…だってテンパったんだもん。…あ、アンタのこと言ったんじゃないのよ?」

「お前まだ天パ呼ばわりかっ!!ゼルディ卿と呼べ。」

「いひゃいいひゃい!?ひょっひょ、ひっはんはいへほ!!!!」

「おーおーのびるのびる。」

「こへはあるひに対ふるたひどかっ!!」

「言っておくが、ここでの地位は俺の方が上だ。護衛の仕事、つまりは戦闘以外でお前に礼を尽くす義理はないんだよ。」


パチンと引っ張っていた両頬から手を離すゼルは不適な笑みを浮かべている。


「このぉっ!!アンタの邪悪な魂を浄化してやるっ!!」

「あっそ。俺は少しここを離れるから、もう寝てろ。」

「何よその顔ムカつくっ!!ゼルなんて天パで十分よーっ!!」

「お、やっと名前言えたなぁ、良くできまちた~。」

「ばっ馬鹿にして!!ちょ、話を聞きなさいよ!!」

「ハイハイ、聞いた聞いた。じゃ、寝んねしなさい。」


その言葉と同時にドアを閉められ、反論もできなかった。また負けた。寝んねしなさいだと?子供扱いして!!




「………くそぅ。」

「フフ、ゼルディ様とはうまくやれそうですね。」

「どこが!?ポプリちゃんと見てた!?」

「えぇ、ちゃんと。…さっ、それよりドレスを脱ぎましょう。お手伝い致します。」


近づくポプリに、私の体が拒否反応。着るときのあの情景がよみがえる。

阻止せねば。脱ぐだけなら自分でできる気がするっ!!


「ポポポプリ、そう!!ポプリには何か飲み物を、持ってきてもらいたいなぁとか思ってさっ!!」

「ですが、」

「自分でできるからっね?」

「………分かりました。では、紅茶をお持ち致しますね。」

「うん!!わざわざごめんね、ありがとう。」





静かにポプリが部屋から出る。



誰もいなくなった。


この部屋には私だけになったわけだ。




剥ぎ取るようにドレスを脱ぎ捨て、スカートをふくらませるための訳の分からない針金みたいな骨組みを投げる。


洗面所はどこだ。


見当たら無い。



もぅ、いいや。めんどくさいや。





ボフンッとベットにそのまま身を沈める。


「、ふぅ…ほんと、なんでこんなことに。運無いなぁ。」




「異世界で石浄化せよ、だなんてウケる。わー本当にウケる~。」





「浄化の力…ほんとにあるのかなぁ。」




次々に出てくる独り言が、いやに響いてしまう。


美しい照明に手をかざせば、赤々と血が巡っているのが見えて、今なら魔法出せるかもだなんてアホなことを考える。

ドラ●スレイブとか、もしかしたら、か●はめ波とか出せたりして。



「…………やるしかないよね。」




もうクヨクヨしていても仕方がない。

やるしかないのだ。

王様も、浄化し終えたら還してくれるって言ったし。

キャロルも記憶のこと調べてくれるって言ったし。



…他人任せなのがすっごく嫌だけど。

魔法とか、そういう類いのものはこの世界の人に任せた方が得策だ。



「……シエル、かぁ…。なんでこうしっくりくるのかな。」



私の本名って横文字?

それにしては私すっごく日本人の顔なんだけど。

っていうか全然思い出せない。お母さんとかお父さんどうしてるのかな。もしかしたら私、兄弟とかいたりして。皆心配してるかな。


あぁもう、考えちゃう!!!!



こういうときは弓道に限るのだが、いかんせんこの場所には弓矢も的も無い。あぁ、部活行っとけば良かった。何してたのよ私は。


あの日のことを思い出そうとすると頭が痛くなる。



不安だ。






その気持ちを無かったことにしようと目を瞑れば、背中にあの騎士の温もりを感じた気がした。






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