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同じように苦笑いして説明を始める。
「えっと…クライムからどのくらいまで聞いた?」
「確か…同一世界がいくつも同時に存在して、その中に異常な奴らがいるってとこ…かな。そこであの場所に飛ばされたし」
「なるほど、なら大分省けるかもね。
取りあえず、そう言う事なんだよ。困ったことに、何かの拍子にそういう齟齬因子が生まれちゃって、こういうことになってるんだ。で、このリカッサって奴らはどの世界にどのタイミングで現れるかは完全に不特定。それでいて強さだって千差万別。ボク、一回殺されかけたからね」
スッとワイシャツの下の部分を捲り上げる。するとそこには、大きく火傷したような跡がまざまざしく残されていた。
「これで済んでよかったけどね。…齟齬因子とは言っても、存在を消すわけだからね。生命体としては、命の危機が近付けば、その生命は爆発的な力を発現させる」
そう付け加えるクライムに微笑を浮かべ、要は真顔になった。
「困ったことにこれは『適合者』にしか出来ないんだ。不惑、こんなこと頼みたくはないけど、手伝ってくれない?ボクらは今、人手不足なんだ。」
「……他を当たれよ。そんな面倒、俺は御免蒙るね」
「…もう少し考えてみてくれない?このままだと、いずれこの世界は侵食される」
念を押すように聞いてきた要を無視してベッドに転がって背中を向ける。
「やーなこった。…言ってんだろ、面倒事は他所でやれよ。他人巻き込むんじゃねえよ」
冷たく言い放つ。すると諦めたように要が立ち上がった。
「…まあいいや。不惑は一度決めると、梃子でも動かないからね。仕方が無いか。クライム、行こう」
「…待て、要」
帰ろうとしたところに静止の声でドアノブに手をかけた状態のまま要は止まった。見ないだろうと思いつつも一度起き上がってその背中に告げる。
「…三日でいいから時間を寄こせ。協力するかはまだ考えさせろ」
「分かった。結論は前倒しで言っても構わないからね」
そう言って今度こそ出ていく要を見送り、室内には俺とクライムのみが残される。
「お前も帰れ。俺は昼寝の時間を削って話聴いたんだ。こっちの要求も多少くらいは飲んでくれ」
その言葉に渋々と言った様子で姿を消すクライム。消えたのを見送り、俺はたっぷり空気を吸い込み、溜息として吐き出した。
「世界の危機かなんかは知らねえよ。俺には関係ないしな」
だが、仮に参加するとしても自分を心配する人間など、この世には存在しない。あの世になら少なくとも二人ほどいる。紛れもない自分の両親だ。十年前に通っている幼稚園に車で迎えに来る途中、他所見運転の車と衝突して死んだらしい。それ以上のことは知らないし、知る気も起きない。
「…何で俺は生きてんだろうな」
ベッドに仰向けに転がり安っぽい天井を見上げる。両親はどうやら相当出来た人だったようで、銀行には多額の貯金があった。二人とも用心深くそれぞれ生命保険に入っていたのかは知らないが、それを少しずつ切り崩して生活しているのが現状だ。
「―『絶望しそうな時はそこに飛び込め。もしかしたらそこに希望があるかもしれない』…か」
死んだ母親のよく言っていた言葉。口を酸っぱくするように毎日言ってたことだけは知ってる。子供に何を言ってるやらとも思うが、今では結構支えになっている。
「…『逃げるなとは言わない。けれど、何とか出来るようになったら立ち向かえ』とかもあったな」
こっちは父親の口癖。二人とも顔なんて出て来ないが、言葉だけはよく覚えている。
「…腹決めて行けってことか?」
何となく思い出した言葉にどこか呆れながら、俺は少し遅めの昼寝をすることにした。




