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「凌、それをやってどんな目にあったか忘れたの?それで出てきたリカッサに殺されかけたじゃない…」
それは、要の腹部の傷痕のことだろう。あの巨大な、一生消えないであろう傷痕。
「分かってる。でも、それだけのリスクを負わなきゃ、彼らの―天狗たちの物語は救えない。それは分かる?」
優しく、子供を諭すような口調に思わず雪ちゃんの言葉が詰まる。顔を俯け、反論すべき言葉を探すが見当たらない。
「…強大と言うのなら、微力ながらも援護する。こっちの方もこっちで守る。それならば、負担になるまい」
「それは助かる。それじゃ、不惑の方は準備良い?」
「今更聞くなって。当然平気だっつーの」
天狗の二人と、俺の了承を受け、残る一人の了承を待つのみ。自然と、視線が集まる。
「…約束して。今度は、私が凌を守る」
決意の瞳。それにニコリと笑みを浮かべる要。…全く、自然過ぎて妬く気にもならねえな。
「大丈夫。今回は一人じゃない。皆がいる。それに、雪がボクを守るって言うなら、ボクも雪を守る。これなら、絶対に平気でしょ?」
「…馬鹿。わけ分かんない屁理屈言っちゃって」
「屁理屈も通せば理屈だよ?」
瞳に浮かんだ涙を拭い、同じように笑んで見せる。
ともかくこれで全員の了承が出た。
「それじゃ、最後の修正を掛ける前に一つ。ここで出てくるリカッサは桁違いに強い。下手すれば死ぬかもしれない。覚悟はいい?」
全員からの力強い首肯。それに頷き、視線を風花の方へ。
「風花ちゃん。最後―新しく紡ぐ物語は思い付いた?」
「うん。こうなったらいいなってのは、ずっと考えてたアイディアがあるの」
深く深く深呼吸。いざ言おうとした瞬間、一足先に地響きが辺り一帯を揺らした。同時に砂が巻き上がる。
「きゃあ!」
その中からよく聞いたことのあるような声が聞こえた。それにいち早く反応したのは、俺と要だった。
「おい、冗談きつくないか?」
「冗談であってほしいのが、ボクの正直な感想かな」
確実性を銃に求めると、先ほど同様に短銃が長銃へと形状を変えた。地面に片膝を着け、ブレを減少させる状態を取る。
「まさか…一般人?」
「恐らくね。しかも、最悪なことに、ボクと不惑の勘が当たると最悪かも」
やがてのどかな雰囲気の中に、ぶち壊しのリカッサと、それに襲われる一般人が現れた。
「やっぱり…。今回迷い込んだのって、よりによってか!」
苦虫を噛み潰したような表情を浮かべながらも突進していく要。俺の方もサポートするべく、引き金に手を当ててその人物に叫ぶ。
「漆羽ぁ!とにかくしゃがめ!」
返答を聞く前にあらん限りの弾を撃つ。すると被弾したリカッサがこっちを向いた。その瞬間には雪ちゃんがリカッサの眼前に迫っていて。
「一般人に手は出させない…!」
顎を蹴り上げ、一瞬怯んだ隙にフックを一撃決め、止めに斜めに蹴り捨てて下で待機していた要の元へと吹き飛ばす。
「薙げ、獣走剣!」
何を思ったか、自分の大剣を大きく振りかぶると、それを全力で投げ―
「投げたぁ!?」
行動に思わず目を剥く。が、その威力にも驚かされた。投げたのだから一定距離を斬る程度が精々だと思った。だが、予想に反して投擲された剣は突き進む。やがて全体を切り裂いたところで要が指を鳴らすと、通ってきた道を戻るように手元へと戻っていった。
「よし、終わりっと」
「なんつー大胆不敵な攻撃方法…」
思わず溜息の前に拍手が出てきてしまいそうだ。それを堪えてしゃがみこんでいる遭難者―漆羽美咲に声をかける。
「おーい、生きてるか?」
目の前で手を振ってみるが応答が無い。さて、どうしたものか。
「……漆羽美咲、起立!」
「ふぇ!?はいっ!」
「呼吸はしてるか!」
「はい!しておりますです!」
「よしオッケー。呼吸をしてると言う事は取りあえずは生きてるっぽいぞ」
「確かめ方が変…」
雪ちゃんに溜息を吐かれたがいた仕方ない。何か強烈なもので気付けするのが一番手っ取り早い。
「は、はれ?不惑に…要くん?こんなとこで何してるの?」
「残念ながらそれは俺たちのセリフでな。取りあえず、状況は理解してなくていいからこの二人に守られててくれ」
風花と疾風の二人に任せておけば安全は確保してくれるであろう。二人もうなずいてくれたし。
「そうなると、僕らの勝利条件がまた増えたね」
「だな。ゲーム感覚過ぎてヤバいけどな。代金は自分の命じゃ文句も言えねえって」
苦笑いをそのままに返答する。さて、と呟いて要が風花の方を向く。
「じゃあ、今度こそ今回のラストだよ。とは言っても、最後にもう一回正史として残すためにもう一回語ってもらうんだけどね」
「うん、分かった」
今一度気持ちを正すべく深呼吸を繰り返す。そして力強く最後の一節を紡ぎだす。




