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変態学講座  作者: みぎゃー


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20/20

第二十回:変態学一期・終

挿絵(By みてみん)

変態学講師達。



突然、変態学の3人の講師の元に国の機関がやって来た。

そして『変態学を国家公認の学問に』と告げて来たのである。

3人はキョトンとした。


一年ほど前のある日、講義室にやって来た国家権力の集団。

変態学を国の学問として認めるかどうかの審査の結果、

やはり国家が推薦するにはまだ足りぬ、という判断だった。

しかし今回はそれが、国の側から公認学問にすると言っている。

一体、どういう事だろうか。


すると国家権力の集団の中に懐かしい顔があった。


暗部深夜子だ。


彼女を見つけるなり、リリアーヌが声をかける。


「お、久しぶりだな、暗部・・・。」


暗部はリリアーヌを見て、目に涙が溜まり今にも溢れそうだ。


「リリアーヌさん・・・ただいま。」


「おかえり。

 待っていたぞ、暗部。」


暗部はリリアーヌにギュッと抱き着き、村古木と青日下はそれを

尊いと言いながらズボンの上から股間を上下に触っていた。


「私、国家の中枢機関に就職したんです。

 言ってなかったですけど、親が上級国家公務員なんです。

 正直コネで入った部分はありますけどね。」


驚きながら、青日下が質問した。


「そうだったのか・・・。

 それはそうと、コレは一体どういう事なんだ?」


「もう、察しが悪いですね、青日下さんは。

 私が推薦したんですよ。それも約一年かけて口説き落としました。」


何と変態学の国家公認化の裏側には暗部の力が働いていた。


「これからの多様性の時代に平和の象徴として必要な学問だと、

何度も何度も何度も何度もプレゼンしたんです。

先日、ついにようやく政府が重い腰を上げました。


「え、じゃあ俺達は国家が公認した学問を教えるという事になるのか?」


「ですから、そう言ってるじゃないですか。

 これからは国家からも予算が付きますし、教科書には検閲が必要だし、

 委員会が作られて、あらゆる面で変態学は大きく生まれ変わりますよ。」


暗部深夜子。彼女は一旦変態学講座の講師を辞したが、

それは決して永遠の別れを示すものでは無かった。

裏で政府に働き掛けて、遂には承認が下りたのだ。

村古木が言った。


「深夜子ちゃん、すげー、凄過ぎるでしょ。

 変態学を取り巻くあらゆる噂や憶測、偏見。

 そうしたものから解き放たれてやっと真の意味での

 自由を得られるのかも知れないよねぇ。」


リリアーヌが少し口元を緩めて言う。


「でかしたぞ、暗部。これはお前にしか出来ない事だ。

 本当に礼を言うぞ。平和の為には変態学が必要だ。」


青日下は少し不満そうに頬を膨らましながら言った。


「っもう、深夜子ちゃんがいなくなってから俺、

 毎晩深夜子ちゃんでヌいてたんだからね?」


もう良い年齢の青日下からのとんでも無い告白に、

リリアーヌからの強烈な回し蹴りがヒットした。


「アハハ、リリアーヌさん、まだキック力は健在ですね。」


暗部が笑い、村古木も笑った。

また、変態学講師達に活気が戻った。


「さぁ、それはそれとして!

 忙しくなりますよ。教科書の作成には村古木さん、

 全国への周知営業活動は青日下さん、マスコミの対応は

 リリアーヌさんが対応して頂けますか?」


「それはもちろん構わんが、暗部、お前は何をするんだ?」


「私は全世界の変態達をスカウトして、変態学の講師にします。

 各分野のプロのエキスパートから直接話を聞いた方が、

 よりリアルな変態性の良さがわかるじゃないですか。」


暗部は国家組織の中に潜り込んでいた風船フェチの男を紹介した。


「あ、ども、風(ふう) 船太郎(せんたろう)です。」


そのままだな・・・と言う変態学講師達のツッコみもそこそこに、

暗部は続けた。


「こういう、その道のプロ達が色んな変態性の現実を話す、

 そんな場を変態学の授業風景にしたいんです。

 私達がやっていたようなやり方じゃなく、生きた変態を伝えたい。」


「あー、暗部・・・いや、お前は正しいよ、うん、間違ってない。

 だけど何て言うかお前、そんなに熱意があったのか?変態に。」


「私、小さい頃は体が弱くて、病気がちだったんです。

 そして名医でも取り切らない悪性腫瘍が出来ちゃって、

 生死の境を彷徨っていたんですよね。

 そんな時、悪性腫瘍フェチの医者が現れて、是非取らせてくれ、と。

 それで命を救われてから、変態フェチもアリだなって思いました。」


「なるほど、変態フェチ野郎に命を救われたのか。

 それは確かに心象が良いな。」


「えぇ、ですから全ての変態達はもっと、

 自分の可能性を信じて欲しいんです。

 単に変わった趣向のおかしな人、で終わって欲しくないんです。」


「なるほどな。素晴らしいビジョンだ。」


「そして実は次の国会の審議を通るであろう、あるシステムがあるんです。

 それが、その人の変態性を表示してくれるデジタル名札、

 『変態性自己紹介バッジ』です。既にある市で先行導入しましたが、

 街の人達からは「いらん事しやがって」「外出し難い」や、

 「シンプルにデザインがダサい、無理。」等と大好評です。


村古木は暗部の話を聞きながら、絶対大好評じゃねぇじゃん、と

心の中でツッコみを入れていた。


こうして変態学は国を挙げての一大プロジェクトとなった。


各地には変態養成所が開かれ、日夜よりマニアックな性癖を得ようと

多くの人々が修行をした。


~3年後~


更に髪が薄くなり、しかし青ヒゲは濃くなった青日下が言う。


「もうすっかりこの国も変態大国だな。

 俺の全国営業の甲斐もあって、皆こぞってレアな変態になろうと

 切磋琢磨してるぜ。先日の『人間を一生水の中で育てるフェチ』は

 さすがに度を越していて凄かったぜ、HaHaHa☆」


今ではトレードマークの狐面を外して単なるクソデブに成り下がった

村古木が言った。


「変態学の教科書・テキスト・参考書。全て増刷が追い付かず、

 全国の古本屋は元値以上で買い取ってるみたいだよ。

 まぁそもそもデジタル版を買えるのにね、実物の紙の本フェチが

 思いの他まだ多いって事かな?」


更に3年前よりも若返ったかのように美しくなったリリアーヌが続ける。


「やっと私の念願の『学問も収めつつ美人講師』として、

 マスコミに取り上げられたぞ。インタビューへの受け答えも

 大変わかり易く、その上ドMにはたまらない眼差しと引っ張りだこだ。」


3人の報告を聞いて、暗部が微笑みながら言う。


「皆さん、本当に良い方向へ活動の幅が広がりましたね。

 私の方は既に世界中でスカウトした変態講師の数がついに

 10万人を突破しました。世界中から変態が集う国、日本。

 逆に他国では変態が足りず、非日常を味わうなら日本、

 となってしまい、観光客が凄い事になっているみたいですね。」


それぞれの活動が相乗効果を生み出し、今や日本は名実ともに

『変態の国』となった。


暗部が最後に変態学の最大の功労者として国の行事で語った言葉がある。


「これまで変態は人から避けられ、忌み嫌われ、端に寄せられていました。

 ただ好きなだけなのに、理解が出来ないからと気持ち悪がられて。

 だけど『好き』と言う気持ちに制限なんて無いはずです。

 たとえそれがどれだけ理解不能な『体積5倍のうんちを出すフェチ』

 みたいなものだとしても、それは個人の自由です。

 私達はもっと互いに寛容で無ければなりません。

 そしてそれと共に何より、自分に正直であって下さい。

 何故なら誰しも、他人を値踏みして良いはずが無いからです。

 本当の自分の好きで生きる為に、せめてあなた自身はあなたの事を

 信じて好きでいて下さい。それが変態学の究極の真理です。」


これから先もきっとずっと、変態が世界平和をもたらす。

そんな世界に向けて今、この物語の中の世界も、そしてあなたが住む

この現実の世界も動き始めているのかも知れない。

自分を恥じるな、信頼しろ。これこそが変態学、強いては人生の

最も大切な教えなのかも知れない。


~おしまい~

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