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第一回:変態学概論

第一回はエッチな表現はほとんど無くてごめんね。

挿絵(By みてみん)


ある最高学府の、400人は入ろうかと言う程に広い講義室の壇上に

4人の男女が登壇していた。


濃淡二種類の紫のツートーンカラーをツインテールに結わいて

猫耳ヘッドセットを付けたゴスロリ服の女の子。

暗部深夜子くらべ みやこ。157cm。


長いウェーブの銀髪、身体にピッタリ張り付く服を着た長身の女性。

リリアーヌ・フェデランチェス。188cm。


脂ぎった額で光を反射しながら青髭が逞しい男性。

青日下濃蔵あおひげ こいぞう。175cm。


オレンジ色の全身タイツに身を包み、顔には狐面を嵌めている。

とても巨漢で手はカンチョーのポーズをしている男性。

村古木助平むらこき すけべえ。203cm。


スクリーンに映し出されているのは『変態学講座』の文字。

そして今まさに記念すべき第一回の講義『変態学概論』が始まる。


「えー、それでは僭越ながら司会進行を務めさせて頂きます、

 暗部深夜子と申します。皆さま、よろしくお願いします。」


ゴスロリ服の女の子がそう言うと、講義室内のボルテージが昂った。


「う”おぉぉぉぉ、待ってましたーーー!!!!」


「サッサと始めちゃってーーーー!!!!

 講義は90分しか無いのよー!!」


「あ、ヤベ、さっき尻に入れた浣腸が漏れそう。」


それぞれに好き放題に野次やら檄やら白濁液やらを飛ばしている。


熱気で講義室内が臭くなって来た頃、暗部がまた話し始めた。


「それでは、変態学講座第一回、変態学概論を始めます。」


講義室内がシン・・・と静まり返った。


「まず、『変態とは何か?』についてをお話します。

 私達が考える変態とは、直接生殖には関係ない事に対して

 異常に性的興奮を覚える事と定義しています。」


そこへ、青髭が逞しい”青日下”がしゃしゃり出て来た。


「ハイハイハイハイ、そんなカタい事ばっかりじゃ皆飽きちゃうだろー。

 カタくするのは乳首だけで十分だゾ?なんつって(笑)」


「え、いや、”ばっかり”って、まだ最初の”触り”を言っただけですよ?」


「”触り”だぁ?

 だったらホラ、俺のコレ、触れるかぁ~?」


そう言いながら青髭は、ポケットから電動シェーバーを取り出した。

相当な量のヒゲを剃っていたらしく、ボロボロと黒い粉が落ちる。


「いや、コレはさすがに無理ですよ。

 と言うか、剃ったヒゲはちゃんと毎回捨てて下さいよ。」


すると青日下は激昂し、シェーバーの中身をブチ撒けてしまった。


「オラァ!!

 俺様のヒゲでスッテンコロリン、バナナみたいに滑りやがれ!」


メチャクチャな男である。

こうして怒っている間も尻を掻きむしっている。

掻いた指を自ら嗅いで『おえっ』となっている。


そこへ、銀髪で長身の女性、リリアーヌが割って入る。


「青日下、その辺りで止めないか。

 さもなくばお前のそのしょうもない”モノ”切り落とすぞ。」


「ヒィッ」と情けなく声を上げて、青日下は黙ってしまった。


そこへオレンジ色の全身タイツの巨漢、村古木が促すように言う。


「さ、さ、さ、さぁ、それじゃあ、続きを言うんだな。」


「・・・それじゃあ、続けますね。

 ありゃ、えっとどこまで言ったっけかな?」


暗部は目の前で起こった衝撃的な事件に講義の進行を忘れていた。

するとそこへ青日下がまた口を挟んだ。


「グェッヘッヘッへ。深夜子ちゃん、今日もニーハイだねぇ。

 それ、結構蒸れて臭くなってるんじゃないか?

 おじさんが嗅いであげようかぁ~?」


しかしそれをリリアーヌが阻止する。


「だ・か・ら、止めろと言っているのがわからんのか?

 尻にヘリウムガスを7本ほど注入するぞ。」


また「ヒィッ」と情けない悲鳴を上げて青日下が後ろへ下がる。

それをキッカケにして暗部は講義内容を思い出す。


「あ、そうだった!

 先ほどの青日下さんのように、直接生殖には関係の無い事、

 例えば匂いとか、そういったものに異常に執着して興奮する、

 これを”変態”と言います。」


すると青日下は目を吊り上げて大きな声で言った。


「何だとぉ!?

 俺が変態だって言いたいのか!?」


暗部はビクッとなり、おそるおそる言った。


「あの・・・多分そう・・・だと思います・・・ごめんなさい。」


すると青日下は目を見開き、更に大きな声で言った。


「その通りだ!俺は変態だ!!だからここにいる!!」


するとそこへ、リリアーヌから何かを投げつけられた。


見るとそれは・・・スズメバチだった。


「ぐっぴぇえぇぇぇ~!!!!????」


青日下はあまりの衝撃に情けない声をあげ、気絶してしまった。

リリアーヌが聴衆に向かって語る。


「ちなみにこうした他者をいたぶる事に快感を感じるのも変態だ。

 まぁこんな回りくどい事しなくても、私の身長なら単にアイツを

 体重をかけて蹴りつけるだけでも良かったんだがな。」


早速のぐちゃぐちゃな展開に暗部は愛想笑いを浮かべるしか無かった。


「あ、アハ、アハ・・・。

 (ハァ、どうしてこうなっちゃったんだろう・・・。)」


彼女は本当は室内でゴシックに関する本や記事を読むのが好きな

大人しいサブカル女子だった。

しかしそれがどうしてこうなってしまったのか。 


~3年前~


ニュース映像が流れている。

そこには石化する事が性的興奮に繋がるという変態が取り上げられていた。

だが間違って速乾性の材料を使ってしまい、石化が止められないのだ。

暗部はそれを見ながらため息を吐いた。


「ハァ、どうして世の中こうも変態ばかりなのかしら。

 あんな事して興奮するとか、理解出来ないわ。」


そこへ、今よりも数本だけ額に毛が多い青日下が現れた。


「変態を理解したいのかい?

 それならウチのゼミに来て変態学を学ばないか?

 高校生だからって関係ないさ。

 14~82歳までなら全然カモンだぜ!」


「え、何なのその中途半端な区切り方は・・・。」


ここで暗部はついウッカリ、入ゼミ届に拇印を押してしまう。

と言うより、青日下が勝手に指に朱肉を塗り押させたのだ。

これにより法的拘束力が出来てしまい、変態学ゼミ生となってしまう。

卒ゼミの条件は変態学に対して国からの助成金が下りるようになる事。

暗部はとんでも無い契約を強引に交わされてしまったのだった。


~現在~


「(あの時あんなヒドい条件の契約さえ交わさなければ今頃私は

  静かな部屋でゴシックな生活を夢見る女の子でいられたのに。)」


しかしこうなってしまったものはもう仕方がない。

彼女は自らの運命を呪いながらも新たな野望を持っていた。


「もうこうなったら世界中を変態だらけにしてやるんだから。

 変態が変態とは言えないくらいにノーマルな存在になれば

 そもそも変態と言うジャンル自体が意味を成さなくなる。

 その時まで私は絶対に負けないんだから!」


その時、壇上から大きな音が聞こえて来た。


「ぷ、ぷうぅぅぅ~~~~~。」


どうやら村古木が『おならフェチ』の例を出そうとして、

実際に放屁をしてしまったようだ。


講義室から逃げ出す聴衆。

続けてリリアーヌと村古木自身も逃げ出した。


暗部があまりの匂いに吐きそうになり気を失いかけたその時だった。


「ホラ、俺の手を取れ!!

 納豆でネバネバだけど、お前を安全な所まで引っ張って行くぞ!」


それは何故か講義中にも関わらず納豆を素手で食べている青日下だった。

普通ならヒーローのように映るのだろう。

しかしこんな状況下でもその救いの手は全く嬉しくなかった。


「あの、別に自分で逃げられますから。」


そう言いながら暗部は出口まで息を止めて走って行った。


最後に残された青日下は講義室中の屁を肺いっぱいに吸い込みながら

「コレはコレで良い!」と一人で悶絶していた。


こうして記念すべき変態学第一回の講義は放屁により台無しにされた。

次回からは各論として世の中のあらゆる変態についてを深堀りします。

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