第14.5話 ガルダ視点:千年前
文書館を出て、三人は王都の通りを歩いた。
レンが前を歩いている。エリカがその隣。ガルダは少し後ろを歩いた。
「この帳面には、封印の制御方法を書いた。千年後に必要になる」
最後の三冊の、二冊目の一文を繰り返した。声に出さずに。
* * *
ガルダは十五年、この仕事をしていた。
大消失以前の記録を追う調査員。「千年前に何があったか」を調べることが仕事だった。
同僚には「意味があるのか」と言われたことがある。千年前の記録を集めて、何になるのかと。
「記録は残る」とガルダは思っていた。意味があるかどうかは、残ってから分かる。
それが今日、答えを見た。
千年前の記録が、目の前の少年を動かしている。
* * *
「これを読んでいるなら、お前は俺だ」という一行を、ガルダは三度読んだ。
前世の自分への手紙として書かれたもの。千年後の転生者に向けて。
書いた人間が死んで、千年経って、転生した人間が実際に読んでいる。
「計算通りだ」とガルダは思った。ルドという解体師が計算したわけではない。カーラという人物が設計した通りに、事が進んでいる。
それが現実として目の前にある。
記録研究者として、これほど確かな答えを見たことはなかった。
* * *
宿に戻って、ガルダは手帳を開いた。
「レン。前世の名前はルド。大狩猟時代の解体師。367冊の記録帳を書いた。カーラに選ばれた」
書いてから、止まった。
「選ばれた」と書いたが、正確ではないかもしれない。カーラはルドを選んだが、ルドは知らなかった。知らずに書き続けた。
「知らずに続けた」
それがどれほど難しいことか。誰かに見られているわけでもなく、礼を言われるわけでもなく、ただ書き続ける。二十年以上。
ガルダは十五年、記録を追ってきた。ルドの十五年と比べることはできないが——意味が分からなくても続けた感覚は、少し分かる。
「この仕事に意味があると、今日分かった」と手帳に書いた。
翌日、レンに何が必要かを考え始めた。
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