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第7話:その後の話と彼女からのお願い事。

 俺が冴島の前で失言をかまして、しかもそのまま逃げ去るというとんでも失礼なクソムーブをしてしまってから約数週間が経ってしまった。


 あれから何だか気まずくて、お互いあまり話出来ずにいる。


 …まぁ、俺が勝手に気まずくなってるだけだし、元々そんなに話出来てた訳じゃないけど…。


 うわ、自分で言っといて悲しくなってきた…。やめよ…。


「おい瑠伊…って、何百面相してんだよ。帰んぞ」


 悶々とやや後悔の気持ちを抱えながらも、そんな事を考えていると、唐突に背後から声を掛けられた。

びくりと少し驚いてしまうも聞き慣れた声だった為、そのまま釣られる様に振り返る。

と、そこにはやや呆れた様な表情を浮かべる陸斗と、彼と腕を組みにこにこ笑みを浮かべながらこちらを見詰める美沙がいた。


 …相変わらず、ビジュが神がかってるカップルだなぁ…。

お似合い過ぎ…。


「るーくんと一緒に帰るの、久しぶりになっちゃったね」


 あまり話とか出来なくてごめんね、なんて小さく眉を下げながら美沙が言う。

別に、気にしなくて良いのになぁ…。


「三人共クラス離れちゃったし、仕方ないよ。バイトとか部活とかもあるだろうし」


 そう返事をしてあげると、ぱっと表情を明るくし“ありがとう”と優しくお礼を言ってくれる。

…美沙って本当、分かりやすいなぁ。

素直で、良い子…。


 …あれ?部活と言えば、


「陸斗、今日部活は?休み?珍しいね」


 そう問い掛けると、陸斗は“はぁあ…”と小さく溜息をついた。

美沙もその隣でくすくす笑みを零している。

…え、何…?俺、何か変な事聞いた…?え…?


「終業式の日まで練習入ってる訳ねぇだろ…。夏休み中のスケジュールとミーティングだけしてきたけど」


「…あ。そっか」


 そうだった。とんでもなく今更で申し訳ないけど、今日は終業式だったんだ。


 …最近こんなん多いけど、誰に申し訳なくなってるんだろう俺…。

まぁ良いや、気にしないでおこ…。


「相変わらず変なとこ抜けてんなぁお前…。俺鞄取って来るから帰る準備しとけよ」


「はぁい」


 呆れた表情のまま俺にそう言った後、陸斗は教室を出て行った。

それ見届けたのち、言われた通り準備をし始める。


「ねね、るーくん。ちょっとお願いがあるんだけど…」


「んー…?どしたの、美沙」


 小さく口を開いた美沙の言葉に手も止めず、視線も手元に向けたまま短く返事をする。

視線の先に入っていないから、どんな表情を浮かべているのかは分からないけれど、きっとどう言うか考えているのだろう。

少し間が空いた後再び小さく口を開いた。


「あのね、久しぶりに陸くんと放課後デートしたい…から、どうにか二人きりにして欲しいなぁって…」


 …あぁ、成程ね。

…んん、全然良いんだけど、俺にそんな誘導、出来る…かなぁ…。


「良いよ良いよ、俺にどうにか出来るかは分からないけど…」


 準備も終わり、改めて美沙の方へ視線を向け、そう言うと、美沙が嬉しそうに笑みを浮かべながらありがとうを返してくれる。


 …本当に良い子だな、美沙は…。


 そのまま少し雑談を続けていると、がらりと教室の扉が開いた。

どうやら陸斗が戻って来たようだ。


「準備…は終わってんな。早く帰んぞ。美沙、瑠伊」


 そうさも当たり前のように、俺にも声を掛ける陸斗。


 全く…、彼女と二人きりになりたいとかそういう感情は無いんかね、この男。

いつもは独占欲丸出しの嫉妬魔な癖に…。

取り敢えず、どうにか言いくるめ…られるんかな、俺…。


「あー…。俺寄る所あるからやっぱ二人先に帰って良いよ」


「別に用事ねぇし、一緒に寄りゃ良いだろ。いつもそうしてんだし」


 作戦その一、早くも失敗。

んじゃ次は…。


「でも、今回は帰り道の途中とかじゃなくて完全に逆方向だし…」


「それ位、一緒に行ってやるっての。ついでに飯食っていこうぜ」


 作戦その二も、あえなく失敗…。

うわぁどうしよ…。美沙も、凄く不安そうな顔してるし…。


 ごめん、美沙…。やっぱ、俺には無理かも…!


 そう心の中で少し諦めモードに入っていると、突然がらりと再び教室の扉が音を立て開かれた。


「すんません。陸先輩、ここに居るって聞いたんすけど…」


 …あ!!!


「そう!!今日は藍原と約束があったんだった!!ね、藍原!!」


「は?いや、あの」


「ね!!」


「…っす。」


 丁度良いところに!!





















「…まぁ、事情は分かりましたけど…。次からは絶対こんな事付き合わないっすからね。面倒くさい…」


「分かってます…。巻き込んじゃって本当にごめんね。ここ奢るから、許して…」


「え、良いんすか。ラッキー」


 場所は変わり、とある喫茶店。

向かいの席には嬉々としてメロンソーダを飲みながら、更に追加注文をしようとしている後輩_藍原。


 …足りるんかな、俺の財布…。


「先輩は何か頼まないんすか?」


「…取り敢えず、アイスコーヒーで」


「了解っす。すんませーん…」


 店員さんに声を掛け、注文する藍原をよそに、そ…っと俺は財布の中身を確認するのだった。


















「…あ。そう言えば例の推し先輩、何か進展とかありました?」


「んぇ、冴島と?」


 暫く藍原と他愛も無い会話を続けていると、ふとそう話題を振られる。


「ん~…、別にいつも通り…だけど…。相変わらず可愛いし尊い。あれは天使通り越して女神だと思う」


「…はぁ、そすか…」


(…まだ、無自覚なんかよ。こんのクソ鈍感先輩が…)


「それより聞いてよ藍原!!今日授業中に、冴島がくぁあ…って猫ちゃんみたいに欠伸しててさ~…!!」


「はいはい…。ちゃんと聞きますからゆっくり話してくれないっすか…」


 呆れた様にそうぼやく藍原。

でも聞いてくれるの、やっぱ優しいよね…。

モテそう…、なんて思ったり。


「それでさ、その後先生にバレない様にぐーって伸びしててさ、ほんっとうに可愛かったぁ…」


「…ふぅん。猫ちゃんみたいなんですね、その人」


 その藍原の言葉に、なぜか少し嬉しくなる。

そうなんだよ!!猫ちゃんみたいなんだよ冴島…!!


「藍原もそう思う…!?俺もずっとそう思っててさぁ…!!気紛れで、ちょっとつんつんしてて、素直じゃない時もあるし…。本当に猫ちゃんみたいなんだよね、冴島…。可愛すぎ…。てか尊い…」


「…そんなべた褒めする位大好きな癖に、なぁんでずっと避けてるんすかねぇ、このヘタレ先輩は」


「ぇっ…」


 な、何で藍原がその事を…!?


 心の中でそうやや困惑していると、藍原は小さく溜息をついた。

…なんか俺、溜息つかれるの多くない?


「…まぁ、元々はこんな感じだったし…。話せてたのが最早奇跡みたいなもんだし…。大丈夫大丈夫」


 そう言うと、藍原は先程よりも怪訝な表情を浮かべ見詰め…いや、軽く睨み付けてくる。

えぇ…俺何かまずい事言ったぁ…?


「…まぁ、先輩がそれで良いんなら…。あ、でも陸先輩、ちょっと気にしてたっぽいんで。話した方が良いかもっす」


「あー…。了解」


 陸斗に心配掛けちゃってたかぁ…。ちょっと申し訳ないなぁ…。

藍原の言う通り、少し話しとこ…。


「…兎に角、先輩はその推し先輩の事大好きなんすね。それだけは伝わってきます」


「冴島ね!!そりゃ、可愛いからね。なんたって!!」


「あー…、はいはい。そっすね」


(…大好きは否定しないのな)


 俺は、まさかこの会話を人に聞かれているなんて、


「…かなの事?今、好きって…」


思っても、みなかった。


「…?どーした、はじめ」


「…や、何でもねーべ…」

瑠伊裙の惚気を書くのが1番楽しかったりする,

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