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ネジを2、3本ぶっ飛ばしてようやく対等

 俺の手に現れた漆黒の魔剣を前にして、帝王が動きを止めた。


「その剣はどこから。それにその力……」


「本気を見たいんだろ。だったら望み通り見せてやるよ!」


 俺は魔剣を握りしめ、スキルを発動する。


「<飛剣>!」


 先ほどまでとは比べ物にならない威力の斬撃が飛んでいく。

 帝王の一人が防御姿勢を取ったが、直撃を受けるとそのまま吹き飛んだ。


「凄まじい威力だな」


 残った帝王の1人が感情を感じさせない声でつぶやく。


「それが貴様の奥の手か」


「できれば使いたくなかったんだがな」


 魔剣は強すぎるから加減が難しい。


 しかし。

 帝王の数はまだ10人も残っている。

 余力を残して勝てる相手でもないだろう。


 ……というか、ついさっきまでは5人だったはずなんだけどな。


 10人の帝王が一斉に剣を振り上げる。


「「「「「<飛剣>」」」」」


 無数の斬撃が一斉に襲い掛かる!


 全てを受け切ることは不可能だ。

 とっさに飛んでかわすと、城の奥へと逃げ込んだ。


「これをかわすか」


 逃げた道の先に十数名の兵士が見えた。

 物音を聞きつけて駆けつけてきたのだろうか。

 まあこれだけ暴れてれば警備兵が来るのも当然か。

 そう思った直後、その姿が変化して全員が帝王の姿になった。


「お前何人いるんだよ!」


「「「これならどうだ?」」」


 正面だけでなく後ろからも帝王の声が響き渡る。

 同じ声があちこちから聞こえるという状況は怖すぎるな。

 絶望感が半端ない。


「ひひっ、ご主人珍しくピンチだナ」


 パンドラが魔剣のまま面白そうに笑う。

 ぜんぜん笑い事じゃないんだが。


「ピンチというか、決め手にかけるというか……」


「何をよそ見している」


 無数の帝王たちが一斉に剣を振る。


「「「「「<飛剣>」」」」」

「「「「「<真空斬>」」」」」

「「「「「<一閃>」」」」」


 前後左右から無数のスキルが襲いかかってきた!

 とてもじゃないが避け切れる数じゃない。


 一種類ならともかく、複数の別々のスキルを同時に対処するのは並大抵のことではない。

 俺は覚悟を決めて魔剣を握る手に力を込めた。


「パンドラ、頼むぞ」


「任せておケ!」


 パンドラを真横に振るう。

 漆黒の剣が幾つもの小さな刃に形を変え、襲い掛かる斬撃のすべてを一度で叩き落とした。


「オイラもなかなかやるだろウ」


「パンドラが強いことは前から十分に知ってるけどな」


「ご主人は人を褒めるのが上手いよナ。オイラはヒトじゃないけどナ!」


「なるほど。今の攻撃も防ぐか」


「そっちこそ倍々に増えていくとかヤバすぎるだろう」


「やはり貴様は生かしておくわけにはいかぬ」


 帝王は戦いながら分裂体を増やしている。

 一人二人倒したところで意味がない。

 俺は集まる帝王たちを無視して、さらに城の奥へと駆け出した。

 目指す場所まではもうすぐだ。



 暗殺者のキラは、戦いの中で増やせる分裂体の数は3体が限界だといっていた。


 もっともそれは、鍛え抜かれた暗殺術を駆使するからだろう。

 鍛え抜かれた熟練の技を同時に行うことは難しい。

 帝王は簡単な動作を繰り返すだけだから人数も増やせるのだろう。


 とはいえそれでも限界はあるはず。

 だからこそ、一気に何十人と増やすのではなく、少しずつ数を増やしていっているのだろう。


 どこかで限界は来るはずだ。

 その時こそが、俺が待っているチャンスでもある。


 俺は戦いながらさりげなく周囲を観察する。

 いつのまにかシェイドとリードの姿がなくなっている。

 おそらくは同じことを考えたんだろう。


 本当に優秀な奴隷だな。

 まだ何も言ってないのに。


 シェイドは作戦の用意に向かったのだろう。

 この作戦はシェイドが要だからな。

 彼の用意が出来なければなにも始まらない。


 リードには伝言を頼んである。

 シェイドのダンジョンを通って目的の場所に向かったはずだ。


「何を企んでいる」


 帝王が追いながら問いかけてくる。

 その途中にも分裂体がどこからともなく現れ、背後から剣を繰り出してきた。

 いちいち倒していたらきりがない。

 適当にあしらい、目的の場所を目指す。


 やがて城の中庭に戻ってきた。

 城の中央に位置する広い場所だ。


 草木が生える、城の中とは思えない光景に、無数の帝王が集結する。


「わざわざ城の中に入るとはな。ここでなにをするつもりだ」


「なんの話だかな」


 そりゃまあバレて当然だよな。

 もっとも、この作戦のいいところは、バレたところで関係ないという点だ。

 成功さえすれば問答無用でこっちの勝利に持ち込める。


 問題があるとするのならば、エリーの一言がきっかけという点だ。

「面倒だからこうすればいいじゃない」とかいってとある方法を提案してきたんだ。

 それを聞いただけで胃が痛くなってきた。

 あのエリーがまともな作戦を考えるわけがないからな。


 実際かなりまともじゃない。

 最初、その話を聞いたときはこいつ酒でも飲んでるのかなと思った。

 あのエリーが、酔っ払ってさらにめちゃくちゃになることでようやく出てくるレベルの話だと思ったんだ。

 けど残念ながらエリーは素面だった。


 だけど、まともな方法じゃ帝王相手に効果はないのも確かだ。

 ネジを2、3本ぶっ飛ばしてようやく帝王と対等になる。


 俺を取り囲む帝王の動きが止まった。


「外でなにやら騒ぎが起こったようだな」

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