もちろんご褒美はありますよね
「どういうことかご説明いただけますでしょうかご主人様」
優しいエリーというほど怖いものもない。
というか最初から従順な奴隷モードである。
最近忘れがちだが、エリーは俺の奴隷だ。
ご主人である俺に逆らうことはもちろん、危害を加えることも許されない。
度を超えた暴言も同様だ。
そういうことを言おうとすると、自動的に丁寧な口調へと変えられるんだ。
それはつまり、エリーが優しい時はめちゃくちゃブチギレているということだ。
パンドラを起こさないようにしつつ、とても慎重に後ろを振り返る。
そこにはエリーとそしてシャルロットがいた。
部屋の入り口からならともかくどうしてなにもない壁から、と思ったら、壁にダンジョンの入り口が開いていた。
「シェイド、おまえ裏切ったな……!」
俺の非難に対し、シェイドが冷静なまま答える。
「裏切るとはどうしてだ? 奴隷が主人の元へ駆けつけたいという願いを叶えることは、なにも問題ないのではないか」
ちくしょうこれだからモンスターは!
多分本当にそう思ってるんだろうな。
今の状況をなんと呼ぶのかわからないんだろう。
後で教えてやらないとな。
これは修羅場っていうんだぞ。
「ご主人様は大切な仕事があるから1人にして欲しいって事でしたけど」
「あ、ああ。これからが俺たちの将来を左右する大切な時期だからな。少し真剣に考えたかったんだ」
なにしろ帝国に乗り込んで戦争を止めるよう説得しなければならないんだ。
失敗は許されない。
慎重すぎるくらい慎重に計画を練る必要がある。
なのだが。
エリーはにっこりとした笑顔のままだった。
さっきからあの笑顔のままピクリとも表情が変わっていない。
つまり、ずっと同じ感情のままということだ。
「ふうーん。そうですか。これが『俺たちの』『大切な将来』ですか」
そう言いながら見下ろしていたのは、俺にしがみついたまま幸せそうな寝顔を浮かべるパンドラだった。
なにかとんでもない誤解をされている気がする……。
「待ってくれエリー。これはちがうんだ」
「では教えてください。こんな小さな子を部屋に連れ込んで、いったいどんな2人の将来を築くつもりだったのでしょう」
「いや、俺が連れ込んだわけじゃなくて、パンドラの方から1人で来たっていうか……」
「それでノコノコと部屋に入れたってわけね。ロリコン」
うぐ……。否定は出来ない。
「そうですよ御主人様」
シャルロットも参戦してくる。
「ペットは御主人様に構ってもらえないと寂しくて死んでしまうんですわん」
それはウサギだ。
「御主人様は、どうして私を犬のように扱ってくださらないんですか」
「そんな約束はいろんな意味でした記憶がないんだが……」
シャルロットに対してそういう約束はしたことがないし、仮にしたとしても犬のようにはしないだろう。
「やはりパンドラさんのように完璧な犬にならなければダメなのでしょうか?」
「いや、そんなことはないというか……」
「ちょっと黙ってなさい。アンタがいると話が進まないわ」
「でも私にだって御主人様のペットとして愛玩してもらう権利が……」
「おすわり」
「わん!」
シャルロットがベッドを飛び降りて嬉しそうに床に座り込んだ。
すでに完璧に調教されている……。
「言っておくけどね、アタシは本当に怒ってないのよ」
じゃあなんでそんなにニコニコしてるんですか……。
怖すぎる……。
「パンドラはイクスの命を救ったんだもの。少しくらいのご褒美は許されるでしょう」
「だ、だよな! だから……」
「だから、一緒に頑張ったアタシたちにも、当然ご褒美はありますよね?」
にっこり。
笑顔の仮面を貼り付けるエリー。
「……はい、もちろんです……」
その後、どんな「ご褒美」を要求されたのかは、ご想像にお任せすることにしよう。




